こんにちは、制作部の山川です。
みなさんには一度『脱線!スパニッシュ・フライ』の演目紹介のブログでご挨拶させていただいていますね。
贅沢にも私は2演目担当させていただいており、今回ご紹介させていただきたいのが、
演出家ミロ・ラウ率いるインターナショナル・インスティテュート・オブ・ポリティカル・マーダー(IIPM)の
『Hate Radio』です。
この作品はルワンダ大虐殺をテーマとしており、
惨事の一翼を担ったとされるラジオ局のスタジオを舞台にしているものです。
現在戦犯として収監されている実際のラジオ局関係者や専門家へのインタビュー、
現場検証等を徹底的に行ったこの舞台は、演劇でありながら歴史を再現するドキュメンタリーともなっており、
観客のみなさんはまさに舞台を通して「歴史の目撃者」となるのです。
この『Hate Radio』はヨーロッパの様々な劇場、ルワンダのキガリ・メモリアル・センターで上演、
世界各国で「議論」を巻き起こしています。
静岡での公演のあと、7月にはフランスのアヴィニョン演劇祭にも招聘されている作品です。
事件から20年近く経った今、舞台上で再現される当時の出来事。
あの日、ラジオ局では何が起こっていたのか。
あらためて虐殺の真相とメディアの在り方に一石を投じる本作品は、演劇祭最終週に上演されます。
舞台だからこそ再現される真実をあなたも観てみませんか?
貴重な来日公演、ぜひお見逃しなく!
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『Hate Radio』
日時:6月29日(土)・30日(日) 13時30分開演
会場:静岡芸術劇場
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………と、
山川さんが作品のことをしっかりと説明してくれたところで
同じく制作部で『Hate Radio』担当の中野三希子が引き継いで、もう少し紹介させていただきます。
ルワンダ虐殺、というと、映画『ホテル・ルワンダ』を思い起こす方も多いかもしれません。
映画の冒頭、カー・ラジオが流れていたのを覚えてらっしゃる方はいらっしゃるでしょうか。
まさにあのラジオ放送が、「Hate Radio」です。
特にここ最近はニュースで「ヘイト・スピーチ」という言葉が目立ちますが
ある人たちへの「ヘイト」(憎しみ)を煽る言葉を、
人気のラジオ局がひっきりなしに流していたら――。
虐殺が起きた当時のルワンダがそうなっていたのは、いったい何故だったのか。
ラジオが煽った「ヘイト」は、そもそも何故生まれたのか。
今回上演される『Hate Radio』は、ルワンダで起きた虐殺の背景を明らかにします。
そしてその「構造」は、ルワンダに限らず
世界のどこでも、この先いつでも、起きうるものだと思います。
正直なところ、私はこの作品の担当に決まるまで
ルワンダのこと、ルワンダで起きた虐殺のこと、当時の国際社会のことを
全くきちんと知らないままでした。
いまもまだまだ分からないことだらけではありますが、
この作品に触れ、色んな資料に当たるにつれて、
ルワンダのことはもちろん、関係のあるアフリカの他の国やヨーロッパの国々のこと、
1994年よりも前のこと、現在世界で起きていること、日本で起きていること、など
色々な事柄がどんどんつながっていき、
考えたいこと、知りたいこと、が際限なく広がっていきます。
SPACでは、「劇場は世界を見る窓である」という理念のもとに
一年を通して様々な作品を上演しています。
この「世界」という言葉には色んな意味が込められますが
たとえばここで、国際社会という意味での「世界」とするならば、
「窓」から見たひとつの作品が、
「世界」についてこんなに広く・真摯に考える引き金になった、というのは
私にとって初めてのことです。
ぜひ、たくさんの方々にご覧いただきたいです。
「窓」の外には、ものすごく大きな「世界」が待っています。
劇場でお待ちしております。
※「ふじのくに⇔せかい演劇祭」での『Hate Radio』公演は、
6月に横浜で開催される「第5回アフリカ開発会議(TICAD Ⅴ)のパートナー事業に認定されています。