大道芸ワールドカップにも多くの俳優が出演していた『わが町』チーム、
怒涛の週末を経て、勢いそのままにBOXシアターでの稽古期間を終え、本日はついに劇場入りでした!
7月の第一期稽古以来の、静岡芸術劇場での稽古が始まりました。
『サーカス物語』とはうってかわって、空間ががらりとシンプルになっています。
なんといっても「幕なし。装置もなし。」
ソーントン・ワイルダーが作品に込めたものを味わっていただくためには、この空間なのです。
さて、以前「わが町ブログ」第三幕では
グローヴァーズ・コーナーズの町の情景を一気に描く一幕の冒頭のシーンをご紹介しました。
その後は、俯瞰してきた町の風景の焦点をぐぐっとしぼって
隣同士の2軒の家――ギブス家とウェブ家の、夜明けの様子へと進んでいきます。
ギブス医師(奥野晃士)が仕事を終えて戻ってきたところに、
新聞配達の少年ジョー・クローエル(大内智美)や
牛乳屋のハウイ・ニウサム(すがぽん)が居合わせて
両家の夫人が大声をあげて子どもたちを起こし、それぞれの朝食の場面へ。
それから子どもたちは元気いっぱいに学校へ行き、
彼らを送り出した夫人たちは他愛のないお喋りをし…。
▲写真左手は豆のすじ取りをしながらお喋りをするギブス夫人とウェブ夫人。
そして舞台の端に座って彼女たちを見守る俳優たちは…?
1938年に初演された、アメリカを舞台にした作品ですが、
皆さんにとっても親しみの感じられる光景がたくさん出てくることと思います。
そんな流れの中で、違った目線でわたしたちに語りかけるのが進行係(牧山祐大)。
登場人物たちが動き出す前に、
あたたかな朝の光景の中ではまだ誰も考えようとしない未来のことを
さらりと口に出してみせます。
ギブス氏の、そしてギブス夫人(木内琴子)の未来について。
新聞を持ってきたジョー・クローエルの未来についても。
進行係は、グローヴァーズ・コーナーズの「時」についても
俯瞰したところにいるようです。
あるいは、人間の営み、地球の歴史、わたしたちの世界とは異なる世界…
とんでもなく広く、大きなものが見えている人なのかもしれません。
今回のSPACでの再演までにあった様々な変化についても
「あれから三年の月日が経ちました」なんて言いながらどこからか現れて、
初演から今日までの時間をふっとつないでしまうような気さえします。
グローヴァーズ・コーナーズのことを「我々の町」とは呼んでいますが、
彼はいったい、どこにいるのでしょうか。
そして彼のいう「何かしら永遠なるもの」とは――。
これはぜひ、作品をご覧いただいて、
皆様それぞれに感じ取っていただけたらと思います。
次回のブログではギブス家をご紹介します!
———————
SPAC秋のシーズン2013
『わが町』
11月14日~11月29日
公演の詳細はこちら
———————
制作部:中野三希子