静岡県立美術館「グループ『幻触』と石子順造」展の関連企画として、
2/14(金)~16(日)にアトリエみるめで上演される『此処か彼方処か、はたまた何処か?』について
評論家の菅孝行氏からの紹介文が届きました。
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初演はもう40年何年も前のことなのでディテールの記憶はない。ただこんな芝居を書いたり演出したりするのは、とてつもないアホか大天才だと思った。恐らくその両方なのだろう。舞台上には、大半役者というにはあまりにもナチュラルな身体が並んで身を持て余していた。場所は、東京信濃町の千日谷会堂という仏教系施設の駐車場である。いわゆるアングラ(60年代演劇)系の舞台は、日本近代演劇(新劇)の規範を壊すことを共通の旗幟にしていたから、新劇にこだわる人には兎に角判りにくかったようだ。しかし、私は一応「アングラ」のはしくれだから、大概の舞台をそれなりに「理解」することはできた筈なのだが、コイツは客に、ザマアミロ、判るな、と挑発しているようであった。一瞬、これはそもそも芝居なのか?と思った。ただ、68年革命の効用とでもいうのだろうか、見ているうちに判ったのかどうかはともかく、次第にこの舞台と、感性の党派性とでもいうようなものを共有していったように記憶する。ラストで、舞台奥の外部を遮蔽していた幕が消えて、突如街の夜景が眼前に開けたときには、底抜けの解放感があった。時は移って、初演の頃たぶんまだ生まれていなかった演出家や俳優・スタッフによって、このテクストがどう解釈され、舞台化されるのか、ほとんど初演時には生れていなかった観客たちの感性と、それがどう交錯するのか好奇心をそそられずにはいない。
菅孝行(評論家)
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今後も続々と各氏からのコメントをお届けします!
『此処か彼方処か、はたまた何処か?』
作:上杉清文、内山豊三郎
演出:大岡淳
2/14(金)~2/16(日)
アトリエみるめ
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