『真夏の夜の夢』出演者インタビュー、
第11回は、森に棲む妖精のひとり「夏の精かしら」を演じる
いとうめぐみです。
–いとうさんが演じる「夏の精かしら」はどんな妖精ですか。
『真夏の夜の夢』の妖精たちの世界は、王様や女王様を除いて、上下関係のヒエラルキーはない世界かなと、みんなで話したことがあるんですが、そうは言っても、私の役は夏の精のお頭(かしら)なので、何かが起こると、率先して高いところに登って周りの様子を見てみたり、「みんなをまとめなきゃ」と動くような妖精ではないかと思っています。
でも、ちょっとおっちょこちょいで、悪魔メフィストに真っ先にやられちゃって、起き上がるともう、何が起こったか分からなくなっていたりもして、お間抜けな妖精でもあります。
<メフィスト(渡辺敬彦・右から3人目)にやられた年の精(森山冬子・右から2人目)と夏の精かしら(いとうめぐみ・右端)>
–夏の精かしらのここを見てほしいっていうところはありますか。
私の役というよりも… この作品には、構造としていろんな階層がありまして、妖精の世界、恋人たちや割烹料理屋の出入り業者たち人間の世界、そしてその外枠としての作家の世界が複雑にからみあっています。そこがこの芝居の面白さでもあるので、細部を楽しみつつ、そういう大枠を見て感じてもらえたら、うれしいです。
夏の精かしらについてあえて言うなら、地味なんですけど、妖精パックが登場した時に風に飛ばされるところでしょうか。富士の麓の知られざる森のシーンがぱーっと開けて妖精パックが出てくると、風が吹くんですが、そこで夏の精かしらは風に吹き飛ばされて舞台から消えちゃってます(笑)それからまた出てくるんですが、パックはそのことに気づいてないので、「よう!夏の精かしら!」って話しかけてきます。夏の精かしらも、「よう、パック!」って何気なく答えてるんですけど、実は飛ばされる前のところで、「パパパック!」って必至に呼びかけているんです。なのに、飛ばされて気づいてもらえないかわいそうな私です(笑)
–『真夏の夜の夢』で好きな台詞やシーンは?
初めに台本を読んだとき印象に残ったのは、メフィストのこの台詞です。
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世界の終わりとか世紀末、軽々しくこの世を呪う声、
そいつが大きくなってくると、メフィストフェレス、俺の出番だ。
たとえば船が荒海にのりだし、大揺れし、気分が悪く、もどしたくなる。
陸は見えない、戻れない、吐き気はつのる。
思わず思う。いっそ、船ごと沈んでしまえ。
コトバにならず呑んだコトバが、俺様に届く。
そこでメフィスト、俺の出番だ。
お望み通り、船を沈めてしまう。
とりわけ、恋に狂った若者の願いは、俺の大好物。
この苦しみ、このせつなさ、いっそ世界も終わってしまえ。
呑みこんだコトバが俺に願ってくれるからな。
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この台詞のようなすごいどろっとした感情を自分も持ってしまう時があるので、印象に残りましたね。
シーンとしては、冒頭のそぼろちゃんが森に入っていくところはワクワクします。自分がもしお客さんとして客席から観ていたら「あー、森が広がってった〜!」って吸い込まれていくような感覚になるんじゃないかなと。
あとは、ラストシーンのメフィストの姿も素敵です。詳しいことは見てのお楽しみなので言いませんが… お客さんの中には、「あ、ここにもこういう人がいるんだ」っと自分自身を重ね合わせて救われる人もいるのではないかと思います。それくらいに素敵なシーンです。
いとうの2011年初演時のインタビューはこちらで読むことができます。