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2014年3月14日

真夜2014【28】 出演者インタビュー オーベロン:貴島豪

『真夏の夜の夢』出演者インタビュー、
ラスト第21回は、森の妖精の王オーベロンを演じる貴島豪です。


オーベロン:貴島豪(きじま つよし)
宮崎県出身 A型

–貴島さんが演じるオーベロンはどんな存在ですか。
 オーベロンは、森に棲む妖精の王ですが、言ってしまえば、傍迷惑なおっさんですよね。そもそも森の中で起こるこの大騒動は、オーベロンとその妻タイテーニアの痴話ゲンカから始まっている。しかも、オーベロンはその傷口をどんどん広げるかのようにことを進めていく。ただ思うに、オーベロンは、19万3648年も生きてきたというから、これまでもことあるごとに、こういうことをやってきたと思うんだよね。何か計略を練っても、浅はかなところがあって、どこかしら思わぬ方向に事は進んで、周りの妖精たちも、「しょうがねぇおっさんだなぁ」と、あきれながらも憎めなくて、つきしたがっているところがあるんだと思います。


<板前デミを眠らせるために振り子を振るオーベロン>

 ただ、そういう存在でありつつも、オーベロンは、これまで王として妖精たちの世界に君臨してきた存在でもある。だから、妖精であり、それもまた王である存在を演じるには、普通の人間や存在ではない異種感や威厳、それを支える過剰なエネルギーと説得力のある体を、常に失わないように意識しています。その上で、そんな存在が見せる、どこかこどもじみたかわいらしさや、憎めない「おっさんらしさ」、いつまでも恋していたいと思う心なんかが出ればいいなと思っています。


<妖精を招集するオーべロン>

–『真夏の夜の夢』で一番好きな台詞を教えてください。
 あのね、『真夏の夜の夢』では一番凹む言葉ってのがあるの。そぼろに言われるんだけれど…

〜〜〜〜〜
なんてひどいことを言うの、あの親爺。
〜〜〜〜〜

 オーベロンは、悪魔メフィストに騙されて結んだ契約を破棄するために、「消えた恋人たちの憎しみよ、戻ったときは倍になれ!」と言わなくてはならなくなる。けれども、そう言ったとたん、そぼろにこう言われるの。それがオーベロンを突き抜けて、自分の胸の奥深くにグサーッと突き刺さるの。それが「親爺」の「爺」が「ジ」ではなくて、絶対「ヂ」のほうで「オヤヂー!」って(笑)これまで見えない存在として、そぼろのいたいけな姿を、ずーっと上から見守って来ただけに。って勝手にそうしてんだけど(笑)自分が引き起こした騒動ではあるけれども、それを今からでもなんとか解決しようと、よかれと思って苦渋の決断をするのに、あの可愛いそぼろにそう言われちゃうとね。毎回言われて、毎回凹みますね(笑)


<パックに扮するメフィストと契約を結んでしまうオーベロン>

 好きな台詞は、板前デミが言う台詞です。

〜〜〜〜
まぬけだね、恋人たちっていうのは。
〜〜〜〜

 あっけからんとした言葉なんだけど、すごく思いを巡らされるんです。何か「悲劇」と「喜劇」のボーダーラインの様な言葉だと思うんです。幸せと不幸せ、見えるものと見えないもの、生と死と…「まぬけだね」の前にとどまるのと、それを踏み越えてしまうとでは、世界の色がまるで違ってみえる… そんな宙吊りの言葉を、口上を除けば物語の最後にあっけからんと置いた。いい意味で終わらないんです。ああ人の物語は続いていくんだなと。いつの世でも「まぬけ」な恋人達のドラマができて、「まぬけ」を踏み越えてしまった人間のドラマができる。ある意味普遍的な言葉なのかも知れませんね。だから世の恋人達はあっけからんと「まぬけ」であってほしいし、僕も一生まぬけでありつづけたい。できる事なら(笑)

貴島の2011年初演時のインタビューはこちらで読むことができます。

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ご好評をいただいている『真夏の夜の夢』ロングラン公演、
平日の中高生向けの鑑賞事業公演もいよいよ最終日!

まだ観ていないという方、もう一度観たいという方、
どうか、お見逃しなく!

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