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2014年4月29日

《まるふレポート1》 ファウスト 第一部

『ファウスト 第一部』 4月26日(土) 観劇感想

 この200分、私は何度ため息をついたのかわかりません。何にため息をついたのかも曖昧です。あの空間は何だったのでしょう?
 さて、劇場の客席は私が想像したよりも舞台に近いものでした。舞台を包むように配置された客席が、開演が近づき埋まるにつれて舞台の方に迫っていくように感じられるくらいには。
 ただ、私はこの吸い寄せられるような感覚の原因は劇場の広さの他にもあったのではないかと考えています。私の思うこの感覚の源のひとつは、私の(もしくは他の観客の)期待です。同じ空間に居る(しかしひとりひとりが別々の)人たちがこれから『ファウスト』を一斉に観ると考えるだけで、劇場の空間が何重にもずれたり重なったりしているような気分になりました。開演するやいなや、この不思議な空間の感覚はより形容しがたいものに変わっていきます。観客の側に舞台が食い込んできた!と思いました。あるいは、舞台の側に観客が食い込んでいったのでしょう。どこから劇が始まっていたのか、どこまで役者がこちらに話しかけてきていたのか…わからないままに私は『ファウスト』の中に身を置いていました。
 この不可解な吸引力は、徐々に舞台へ私を釘づけにしました。人物や場面、モノが何重にも重なっているイメージが私の中には残っています。舞台上に散らばるモノは、なぜそこにあるかわからないものも混ざっています。それだけ異質なのに、どこで増えているのか、どこでなくなっているのか、意識しないと気付けないのです。これは今考えても全く不思議でなりません…。
 最後に、劇の内容は、是非それぞれが直接劇場で観ていただけたらと思います。正直なところ、この観劇後の気持ちを口で説明して終わらせようとするにはあまりにもったいない作品です。よりたくさんの人が『ファウスト』という空間に引き込まれると良いなと思っております。

(まるふ2014執筆クルー 立野)