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2015年6月7日

【『舞台は夢』新人日記】​ ​vol.​2​:​フィスバックさん、静岡大学に登場!<前編>

こんにちは、制作部新人の塚本です。

前回ブログ​では演出部・守山から、『舞台は夢』の稽古模様を報告させていただきました。

演出家フレデリック・フィスバックさんの頭の中にあるイメージを、SPACの俳優たちがいかに形にして表現していくか、そしてお互いのイメージにずれがあれば、それをどう擦り合わせていくか…
悩みながら、楽しみながら稽古の続くそんな日々の中、5/27にフィスバックさんが特別ゲストとして静岡大学の授業に登場しました!

授業のテーマはズバリ、「演劇祭は何の役に立つか」。

うーむ。私たちSPACのスタッフにとって演劇はすでに身近な、なくてはならないものになっていますが、そうでない方、「演劇なんてみたことないよ」という方にも演劇に接していただくためには、これはじっくりと考えなくてはいけないテーマなのです…。
授業を受けている学生の方々も、SPACに何度も足を運んでくださっている演劇ファン。周囲の友達や家族に演劇の魅力を伝えようとするとき、きっと頭に浮かぶテーマなのではないでしょうか。

演出家として、まさに演劇に「人生を賭けている」フィスバックさんなら、きっとひとつの答えを与えてくれるにちがいない。ワクワクした雰囲気の中、授業が始まりました。

まずは講師であるSPAC文芸部の横山からフィスバックさんの紹介。

普段は温和でとても話しやすいフィスバックさんですが、演出家としての経歴は超ド級。フランスで行われている世界最大の演劇祭、アヴィニョン演劇祭では何度も公式プログラムとして作品を発表し、時に俳優としても出演。2007年には演劇祭のメインアーティスト(提携アーティスト)として二つの大作を発表し、他の招聘作品の選択にも関わっています。

ちなみに今回SPACで上演する『舞台は夢』​。
​フィスバックさんは2004年にも上演しているのですが、その時は​​140公演を越える記録的なロングラン・ヒット​​だったそうです。映画ならともかく、俳優さんたちが毎回生で演技をすることを考えると、なんともびっくりです…。

そしてフィスバックさんから『舞台は夢』の紹介。

作者・コルネイユが『舞台は夢』(原題は“L’illusion Comique”​/「演劇の幻想」の意味)を書いた17世紀は、フランスの古典劇と言われる作品群が書かれはじめた頃だそうです。

古典劇というと、難しそうで、学問的、というイメージがありますが、フィスバックさんによれば、『舞台は夢』はむしろ古典劇の前、バロック時代の作品に近いそうです。

​​バロック演劇の特徴とはなにか?それは「祝祭的、民衆的」ということだそうです。平たく言えば、「お祭りみたいで、誰がみても楽しい!」ということですね。

そして『舞台は夢』のもう一つの特徴、それは、「演劇を見ている観客」について書いた作品である、ということ。

改めてあらすじを簡単に紹介すると、「行方不明の息子を案じた父親が魔術師に頼んで、現在の息子の姿を幻影として見せてもらう」というお話です。すると息子の人生はやたらに波乱万丈である、なんだか変な人物がたくさん出てくる、これはどういうわけだ、となるわけですが、実は息子は俳優になっていたのです。つまり、父親は息子の出演している演劇を見せられていたわけで、それを私たちは劇中劇としてみることになります。

フィスバックさんによれば、『舞台は夢』の父親は、「息子の演劇の中に自分と息子の関係性を見い出して、それを観客として客観的にみることで救われる」のだそうです。

…なんだかややこしくなってきました。

でもつまり、私たちが『舞台は夢』を観るということは、息子の芝居を見る父親の姿を通して、私たち自身の姿を観る、ということなんですね。それでは、このお芝居を観ることで私たちはどんな風に救われるのでしょうか…それは劇場でのお楽しみです。

さて、まだまだある『舞台は夢』の魅力、いくつか紹介していきます。

​​●​若者が自分を解放する物語!

主人公のクランドールは家出をして父親から逃れ、そして俳優になっていたわけですが、いつの時代も若者が「自己実現」するためには一度、居心地のよい環境から脱出する必要があるんですね。

​​●キャラクターが面白い!

コルネイユは若い人物、特に若い女性を描くのがうまかったそうです。まだまだ男性優位の意識が強かったこの時代に、コルネイユは登場人物のリーズというキャラクターを通じて、自分を主張していく芯のある女性を描きました。

それから私個人も大好きなマタモールというキャラクター。いくつもの国を制覇したとか、女性にモテすぎて大変だとか、いつも大ホラばかり吹いているのですが、決して悪い人物ではなく、どこか憎めないお笑い担当です。でも実は「嘘を通じてしか生きられない」というちょっと哀しい側面も見え隠れしたり…

ここには紹介しきれないほど、『舞台は夢』にはさまざまな要素がてんこもり。フィスバックさんは「劇場でお客が体験しうる、あらゆる感情を体験できる作品だ」と言っていました。うーん、公開が待ちきれないですね。皆さんもぜひ、劇場で自分だけの『舞台は夢』の魅力を見つけてくださいね!

<フィスバックさん静岡大学に登場!>後編ではフランスのアヴィニョン演劇祭を例に、いよいよ「演劇祭はなんの役に立つのか」というテーマに迫ります!

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​9~10月 SPAC新作
『舞台は夢』
演出: フレデリック・フィスバック
出演: SPAC
静岡芸術劇場
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