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2018年10月18日

『顕れ』パリ日記(10) ~初日~

SPAC文芸部 横山義志
2018年9月20日(木)

 
本番日なので、衣裳はつけず、稽古着で稽古。
宮城さんからマイブイエ(これから生まれる魂たち)たちに、「ちょっとスキップやってみて」と注文。
なかなか合わない。
「あ、幼稚園が違うとスキップも違うんだね・・・」
稽古

近所のレストランなどにポスターが貼ってある。
ポスター

今日はついに初日。劇場の書店にはレオノーラ・ミアノの本が並んでいる。
書店

劇場が長い眠りから醒めたように、入口に人が集い、ざわめきが少しずつ高まっていく。
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レストランも大忙し。
レストラン

20時半開演。

今日はパリの多くの劇場でシーズンが開幕する日で、競争が激しく、ちょっと不安だったが、500ほどある客席がほとんど埋まっていた。アフリカ系のお客さんがけっこう来てくれている。一割弱くらいだろうが、これまでパリで演劇を見ていて、こんなにアフリカ系の方を見かけたことはなかったかもしれない。じっと舞台を見つめてくれている。

終演。静まりかえった客席から、徐々に割れるような拍手が。カーテンコール。
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多くのお客さんが「ありがとう、すばらしかった」と帰り際に声をかけてくれる。
女優のデリア・セピュルクル・ナティヴィさん(ふじのくに⇄せかい演劇祭2016で上演された『少女と悪魔と風車小屋』で主演)は「アンティゴネも大好きだったけど、こっちの方がもっと好きです。すごくダイレクトに今のことを語っているから、すごく心に響きました」とおっしゃってくれた。

舞台や映画で活躍する女優のミレーヌ・ヴァグラムさんが宮城さんに話しかけてくれ、「一つずつ段階を踏んで神話的世界へと連れて行ってくれるのが、本当にすばらしかったです。なかなかフランスでは見ないタイプの舞台ですね。私はミアノさんの作品をよく知っているのですが、宮城さんの演出はミアノさんの戯曲に、さらに普遍的な次元と深みを付け加えていたと思います」とおっしゃっていた。ミレーヌさんは以前、『顕れ』を含む「レッド・イン・ブルー三部作」の別の作品のリーディング公演に参加している。
ミレーヌ・ヴァグラムさん

ミレーヌさんから後日、ミアノさんとの出会いについてうかがった。

ヴァグラムさんはカリブ海とフランスの二つの文化の間で育った。パリで生まれ、マルティニーク島の祖父母のもとで幼少期を過ごした。マルティニーク島はカリブ海にあるフランス海外県。はじめ読者としてミアノ作品に出会い、ミアノ本人と出会ってから、リーディング公演などにも起用されるようになった。

「レオノーラのうちで私が好きなところは自由なところです。それに触れることで、自分のなかの自由も呼び覚まされます。そのラディカルさ、勇気も、私を力づけてくれます。・・・きっと彼女も、私のうちに同じようなものがあると思ってくれているのでしょう。
きっと私たちは二人とも、人間の経験というものは一つの場所に結びつけられるものではなく、それを超えるもので、自分がどこから来たのかを知ることは、そこに閉じこもることではなく、世界に向かって言葉を発するためのはずみを得ることなのだ、という確信を共有しているのだと思います。」

『顕れ』パリ日記(11)に続きます。

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『顕れ』 フランス公演
2018年9/20(木)~10/20(土) 全27公演
 ※9/24(月)、10/1(月)、8(月)、15(月)休演
会場:コリーヌ国立劇場
◆公演の詳細はこちら
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年明け、日本でも「秋→春のシーズン」3作品目として上演します!
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『顕れ ~女神イニイエの涙~
2019年1/14(月・祝)~2/3(日) 静岡芸術劇場
◆公演の詳細はこちら
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