◆中高生鑑賞事業「SPACeSHIPげきとも!」パンフレット連動企画◆
中高生鑑賞事業公演では、中高生向けの公演パンフレットをみなさんにお渡ししています。パンフレット裏表紙に掲載しているインタビューのロングバージョンを掲載します。
『RITA&RICO』にて衣裳を担当する清千草(SPAC創作・技術部)にSPACで働き始めたきっかけや、衣裳のお仕事内容などを訊いてみました。舞台のお仕事に興味のある方はぜひお読みください!
(インタビューは2019年10月13日に行ったものです)
――SPACで衣裳の仕事を始めた経緯は?
小さい頃から服に興味があって、お母さんと一緒に、人形に着せるための小さい服を作っていました。中高時代はソフトテニス部に入っていて部活に励んでいましたが、服には興味を持ち続けていて、ファッション雑誌を読みながら「こんな服を着てみたい」とか「このアイドルにこういう服を着せたら素敵だろうな」とか考えていました。自分で服を作れたら、自分のサイズに合った好みの服を着られると思い、静岡デザイン専門学校のファッションデザイン科に入学しました。
専門学校1年のときにSPACへ見学にきたのですが、そこで初めて舞台衣裳の魅力を知りました。『真夏の夜の夢』という作品では新聞紙を素材にしていたり、『天守物語』では鯉のぼりを衣裳の一部に使っていたり…。衣裳が舞台美術の一部にもなるという発見がありました。普段なら服として絶対に使わない素材でも、舞台では衣裳として使うことができて、普通の服づくりとは全然ちがう面白さがあると思いました。
ちなみに専門学校では玉結びのやり方やデザイン画の描き方など、衣裳制作の基礎から学びました。自分たちでコンセプトから立ち上げて、布や糸もひとつずつ選んで制作したものを、デパートで売るというところまで体験しましたね。先生の勧めでいろいろなデザイン・コンテストに千本ノックのように応募したり、色彩検定の資格取得に向けて勉強したり…。そういった経験は今の舞台衣裳の制作にも役立っています。
大きく分けてデザインとワードローブの2種類の仕事があります。まず、ワードローブというのは担当する作品の衣裳を管理する仕事です。本番中の俳優の着替えを補助したり、衣裳を洗濯したり、直したりもします。公演終了後は、誰がどのタイミングで着替えるかとか、どういう洗い方をするかなどの情報も資料として記録しておきます。
デザインをするときは、稽古中の雰囲気や実際の俳優の動きを観察したり、作品に関する資料を集めたり、様々な情報を集めることが大切ですね。『RITA&RICO』では演出の渡辺敬彦さんからコンセプトとなる具体的な絵画などを提示されたので、そこからデザイン画を描き、何度も話し合いを重ねて決定しました。今回は1人の俳優が複数の役を演じるのですが、たとえば、ジャケットを着るとか、スカーフを巻くとか、簡単な動作で役が変わったことが分かるようにしなければならず、演出家と相談しながら工夫しました。また、舞台美術とのバランスも考えなくてはいけません。今回は木材が多く使われるので、衣裳も綿麻の素材を使うなど少し古めかしい感じにして、舞台全体の色調や雰囲気を整えていくことも重要でした。
一年中、衣裳を作っていられる環境がよいですね。試行錯誤しながらクリエイティブに製作していくことができる。工場のように同じものを何枚もつくるのではなくて、一点物のように作りこむことができるのが魅力です。毎日違うことができるし、新しい発見があって退屈しません。こんなに恵まれた環境は珍しいと思います。SPACには2つの活動場所があるのですが、日本平の山中にある舞台芸術公園で作業するのは、すごく気持ちが良いんですよ!(笑)
また、SPACでは海外の人と仕事をできるのが楽しいです。様々な人との出会いがあって、情報や知識を交換できる。こちらの常識が海外では常識でないこともあるんですよね。先日のニューヨーク公演で現地の衣裳担当者と一緒に作業したときにも、仕事のこだわりポイントが違っていて面白かったです。
これまで韓国、中国、フランス、サウジアラビア、アメリカの5か国へ行きましたが、外国の人と仕事をするときには、単語だけの会話でもだんだんとコミュニケーションがとれるようになっていくので不思議ですね。2017年にSPACで創作した『MOON』という作品では、ドイツの美術デザイナーと一緒に衣裳を作ったのですが、お互い英語がうまく話せないという状態で、それでも目指す場所が一緒だから衣裳は出来上がっていく。そういう体験は新鮮で、大変だったけど楽しかったです。
――中高生へのメッセージをどうぞ。
「あの車ってどういうつくりになっているのかな」とか「あの飾りつけはどこの会社がデザインしているのかな」とか、なんでも興味を持ったら調べてみると良いと思います。
アルバイトをしてみるのも、世の中の人がどんな働き方をしているのか知る機会にもなって良いかもしれません。自分も衣裳とは関係のないところでアルバイトをしていましたが、接客をしながら人見知りをしなくなるなどよいこともありましたし、逆にアルバイトをしていたからこそ、「やっぱり自分は服飾の仕事がしたいのだ」と再認識できました。
今回、レギュラーシーズンの公演で初めてデザインから担当させてもらいましたが、与えられたチャンスでしっかりと成果を出して、これからもデザインを任される機会を増やしていくのが目標です。
でも、ワードローブの仕事もとても好きです。急ぎで俳優の着替えを間に合わせなければならない作品などは、大変だけど達成感を得られるし、自分が上演している作品の一部になれている感じがして楽しいですね。
実際、ワードローブの仕事もデザインをするうえでとても役に立っています。俳優が衣裳を着ているところを間近で確認できるので、どのような仕組みにすれば舞台の進行上で便利なのか、ということにも気づける。たとえば「ここはマジックテープにすればすぐ着替えられるんだな」とか。これまでの経験や知識の蓄積を活かして、尊敬する先輩に追いつけるように頑張りたいと思っています。
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SPAC秋→春のシーズン2019-2020 #3
『RITA&RICO(リタとリコ)~「セチュアンの善人」より~』
2019年12月14日(土)、15日(日)、21日(土)、22日(日)
各日14:00開演
会場:静岡芸術劇場
原案:ベルトルト・ブレヒト
構成・演出・台本:渡辺敬彦
台本協力:守山真利恵
出演:泉陽二、大内智美、木内琴子、貴島豪、小長谷勝彦、三島景太、山本実幸、吉植荘一郎
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