『ふたりの女』出演俳優 永井健二(光一役)
SPACの『ふたりの女』には初演からずっと出演している。
この作品の初演は2009年の6月で、稽古を始めたのは、その2か月前の4月からだ。
途中が空いているとはいえ、もう13年もこの作品に関わっている。
上演のたびに「これが最後の上演かも…」と思うのだが、2022年、再びこの作品と再会する機会を得た。
再演回数の多さに、少し驚いてもいる(苦笑)
4回目の再演ということで、SPAC『ふたりの女』のこれまでの道のりを振り返り、ブログに綴ることにした。
▲2009年の演劇祭パンフレットと、『ふたりの女』初演時のイメージビジュアル
(ビジュアルイラスト:七戸優)
SPACの『ふたりの女』には実は、2009年の初演以前の「試演会バージョン」というものが存在する。
初演に向けた稽古が始まる1か月前、つまり2009年の3月のことだ。
SPAC『ふたりの女』の、はじまりのはじまりである、1か月間だけの、幻の「試演会バージョン」は、初演とは「まるっきり異なる舞台」と言っても過言ではない。
今回は、その「試演会」の時のことを書こう。
この「試演会」というのは、稽古場で非公開に行われたもので、僕はそちらにも参加していた。
試演会を目撃したSPACの人間もずいぶん少なくなったし、文字通り「幻の舞台」になりつつある。
この時、演出家はほぼ不在の創作現場で、スタッフワークも含め、稽古の進行や演出は全て、俳優たちに一任されていた。
戯曲を前半と後半に分け、配役も前半と後半で分けて交代し(配役は宮城さんから指定された)、参加メンバー同士で「あーでもない、こーでもない」と言いながら、無責任かつ純粋に、作品と向き合う機会でもあった。
…と書けば聞こえはいいが、「どれだけ面白くできるか合戦」のような一面もあった。
俳優たちは思い思いに自分の場面で流したい曲を持ち込んだり、着たい衣裳を探してきて身に付けたり、病院患者たちの登場シーンでディズニーランドのパレード曲に合わせて珍妙なダンスを踊ったり、小道具にダンボールで作ったチープな車を登場させたり…
ほかにも、ここには到底書けないようなことも含め、笑いと混沌に包まれた現場だった記憶がある。
この時、僕は戯曲前半の「光一」役だった。
前半と後半を、同時並行でも稽古ができるよう配役され、しかも僕は後半での配役がなかったので、後半の「光一」役の俳優の演技を見て参考にしたり、異なる俳優の同じ役へのアプローチの仕方の違いを楽しんだりもできた。(合間には、ダンボールでの工作作業とか、音出しなどもしていた気がする)
そして、唐戯曲だけに当然、「アングラとはなんぞや?」というようなことも、俳優たちはそれぞれに考え、稽古場でもしばしば話題に上った。
「『アングラ的なもの』を、どうやって表現するか」というようなことに腐心していたわけだ。
しかし。
演出家の求める「アングラ」が、こんなものではないことを、この時はまだ気づきもしなかった。
「アングラ的なもの」などではなく、「身体がアングラになる」のを求められることになるわけだが、それは次回に。
こちらは、2009年の初演時『ふたりの女』プロモーション映像。
初演作品で、過去の舞台映像が存在しないため、初演のプロモーションに「試演会」の映像が使われた。
つまり、あの「幻の試演会」で、唯一「公になってしまったもの」だ(笑)。
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『ふたりの女
平成版 ふたりの面妖があなたに絡む』
公演日時:2022年4月29日(金・祝)、30日(土)各日18:00開演
会場:舞台芸術公園 野外劇場「有度」
上演時間:100分
座席:全席自由
演出:宮城聰
作:唐十郎
出演:SPAC/たきいみき、奥野晃士、春日井一平、木内琴子、杉山賢、鈴木真理子、武石守正、永井健二、布施安寿香、三島景太、若宮羊市
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★こちらも合わせてご覧ください!(2022/3/28配信)
永井と同じく、初演から出演する三島景太・奥野晃士が『ふたりの女』を語っています♪
今回のブログで取り上げた「試演会」についても話しています!