「あのとき、こうしていたら?」
あるいは、
「あのときのことが、こんな風になるなんて!」
そんなことを思ったりすることはないでしょうか。
私はあります。初めまして。制作部新人の豊島です。
「人生が変わるのを待っているあなたのための」という煽り文句で、『私のコロンビーヌ』の魅力をお伝えするブログ記事の前編です。
『私のコロンビーヌ』は、俳優・演出家のオマール・ポラスが、その半生を自ら演じ語る、自伝的な作品です。自伝的な作品というと、なんだか押し付けがましいような印象があるかもしれません。
「私はこんなに苦労した、おかげでこんなに成功した…」というような。
でもオマール・ポラスの『私のコロンビーヌ』は、そういう感じとはちょっと違います。
新人である私が『私のコロンビーヌ』の担当メンバーになって最初の仕事。それは、その舞台映像を見ることでした。ヘッドフォンをして80分間、じっとノートPCを覗き込みます。
ほとんど何もない舞台。出てくるのは黒いズボンに黒いTシャツのおじさん。
フランス語だから何を言ってるのかよく分からないけど、とにかく楽しそう。
演じているおじさんも、見ているお客さんも、とにかく機嫌が良くて楽しそうなんです。
そのおじさんが声色や仕草をクルクル切り替えて、半ベソの子ども、態度がデカい大人、ヨボヨボの老人の「フリ」をしてみせるのがとにかく面白い。落語を見てるような感じもあるかもしれません。
「あー面白かった」と一息ついた私に先輩から差し出されたのは、字幕のデータ。
そうです。本番ではフランス語のセリフに、日本語字幕がつくんです。
字幕をつけてもう一回見た私を待っていたのは、全く別の作品でした。
あれ?こんなに…
とここまで感想を書きかけて、その先をどう書けばいいのか、思いつきません。
演じられていた内容は、あらすじにある通りです。コロンビアの貧しい農家に生まれた少年が、海を渡って遠い異国のパリへ。ハッキリ言ってかなり「キツイ」出来事を含んだ波乱万丈の人生を、ユーモラスに描く。
しかし私を感動させたのは、やっぱりその上機嫌さだったような気がします。
馬鹿にされたり、笑われたり、何かを失ったり。自分の人生に起こったキツめの出来事を、こんなにも上機嫌に語ってみせること。
その愛やエネルギーが、オマールの『私のコロンビーヌ』の魅力です。
コロンビアに生まれて20歳で渡仏。スイスで劇団を作り、世界で活躍する演出家になったオマール。国や環境によって異なる文化の違い、そこにある困難さえもエネルギーにして、自分の人生をつくりかえてしまうオマールの姿は、必見です。
この作品は、2019年にフランス・アヴィニョン演劇祭(オフ)でも上演されているのですが、実は私、この年にアヴィニョン演劇祭を訪れていました。つまり観るチャンスはあったのです。しかし演劇祭の無数にある演目の中で、この作品と巡り会うことができず、見逃しました。
しかし、ここまでこのブログを読んでくれたみなさんには、『私のコロンビーヌ』を見逃してほしくない!その一心で、このブログ記事を書いている次第です。
後編では、『私のコロンビーヌ』を生み出したオマール・ポラスという人の強烈な個性について、過去資料にあるエピソードから深掘りしてご紹介します。
ご期待ください。
====================
『私のコロンビーヌ』
公演日時:2022年5月3日(火・祝)14:00、4日(水・祝)13:00開演
会場:静岡芸術劇場
上演時間:80分
上演言語/字幕:フランス語上演/日本語字幕
座席:全席指定
演出:オマール・ポラス
製作:アム・ストラム・グラム劇場、TKM クレベール=メロー劇場
★公演詳細はこちら
====================