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2023年9月26日

『ばらの騎士』ブログ♪1 音楽・根本卓也さんにインタビュー!

SPAC秋→春のシーズン2023-2024にて、宮城聰と寺内亜矢子が共同演出でお届けする『ばらの騎士』。第一期稽古が8月の約1ヶ月間をかけて行われました。


▲屋内ホール「楕円堂」にて行われた稽古の様子
 
『ばらの騎士』は、ドイツロマン派のリヒャルト・シュトラウスが作曲し、文豪ホーフマンスタールが台本を作成したオペラとして有名で、ウィーンの上流社会を舞台に、貴族たちの華やかな恋模様を描いた作品です。

ウィーンの上流社会と聞くと、なんだか優雅で格式高く感じてしまいますが、SPAC版では演出の宮城が台本を執筆し、舞台を日本の鹿鳴館時代に置き換え、思わず笑ってしまうドタバタラブコメディの演劇作品に生まれ変わらせます。

そしてSPACならでは!俳優たちの生演奏が劇を彩ります。しかし・・・(当然??)シュトラウスの曲は1ミリも使用しません…!
オリジナル曲をイチから作って欲しいと、宮城から直々に談判があったのは・・指揮者でもあり、チェンバロ奏者でもあり、作曲者でもある、根本卓也さんです!

根本さんは、今回初めてSPAC作品の音楽を担当されるということで、一体どんな方なのか、第一期稽古を終えた感想などを今回のこのブログでお聞きしていきたいと思います!
 
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Q1.まず、指揮者でもあり、チェンバロ奏者でもあり、作曲者でもある・・・そして、チューバも学生時代演奏されていたとか・・!気になるところが多すぎる根本さん、簡潔に自己紹介をお願いします!

簡潔、が難しいプロフィールですみません(苦笑)。
開成中・高:ブラスバンドでずっとチューバを吹く。指揮者を目指したのは高校1年。
→東京藝大(指揮):オーケストラがあまり好きになれず、学部3年でオペラの仕事を始める。院生の時にバロック音楽にハマり、チェンバロを始める。
→リヨン国立高等音楽院(チェンバロ):指揮の勉強は棚上げしてフランス留学し、チェンバロの勉強に打ち込む。留学中に作曲を始めたら処女作がいきなり出版されて自信をつける。
→帰国後はあちこちのオペラ団体で、「音楽スタッフ」という名の何でも屋(ADみたいなものです)として働きつつ、バロック音楽ではチェンバロを弾き、オペラの経験を活かして歌の曲を中心に作曲活動。最近は雑誌(白水社「ふらんす」etc.)にコラムやエッセイも執筆。
ざっくりと書くとこんな感じです。寺山修司を模範に「職業:根本卓也」とうそぶくのが目標です。
 
Q2.今回『ばらの騎士』の音楽を担当してほしいと依頼され、とても驚かれたと思いますが、宮城の印象はどんな感じですか?2度目の宮城との現場ということですが、何か印象が変わることはありましたか?


2017年に日生劇場のオペラ『ルサルカ』でご一緒したのがご縁です。
オペラは全編、音楽が作曲されていて尺の自由がないということもあり、演出家も「振付」のように、この音楽やこの言葉をきっかけにこう動く、ということを手取り足取り指示することが多いのですが、宮城さんはイメージを手短に伝えたら、歌手が自分で考えて何かするまで黙って見ている、それに対するコメントも禅問答のように抽象的で、いわゆる「正解」を提示しない。そういうやり方に不慣れな歌手からは、戸惑いの声も多く上がりましたが、私はオペラをちゃんと「演劇」として扱って頂いていることにとても感銘を受けました。

今回は、ご自身のカンパニーということもあり、より役者さんとの長年の信頼関係もおありなので、あの時よりはずっと饒舌に色々お話されるな、と思って横で拝聴しております。

 
Q3.第一期稽古期間に根本さんが静岡にいらっしゃったのは最初の10日間。まだ台本もない中で、ある程度音楽を詰めないといけないところでした。SPAC作品では、演技専門の俳優たちが曲も演奏してしまうところが魅力なのですが、実際に静岡に来てみて、稽古に参加してどうでしたか?

事前に俳優のお一人お一人に、(音楽面で)何ができて何ができないのかのアンケートを取りました。思った以上に譜面の読める方は少なかったのですが、実際に現場でお会いすると、口移しだけど、覚えたら素晴らしい声の持ち主の方もいらっしゃいましたし、長年訓練されている打楽器のアンサンブルはとても高い演奏スキルをお持ちで、こちらが舌を巻きました。私が静岡を離れてからも、毎日の稽古を録音・録画していただき、それをリモートでフィードバックするという作業を続けていたのですが、日々の進化速度がすごい!

私の方針として、舞台中の台詞のやり取りを聴き取りながら、そのテンションと双方向に高め合うような音楽でありたいと思っているので、即興のセクションの多さや、これまでとは異なる耳の使い方に苦労されているようでした。第二期で、それがどう仕上がっていくのかが楽しみです。

 
 
Q4.第二期稽古は11月から再開され、そのまま年明けの本番へ一直線となりますが、SPAC版『ばらの騎士』はどんな作品になりそうですか?また、どんなことを期待しますか?そして、チケットを購入されるお客様へ最後にひと言お願いします!

宮城さんが初日に「ホーフマンスタールの言葉を、シュトラウスの音楽から解き放ちたい」という趣旨のことを仰っていました。オペラ『ばらの騎士』の音楽の雄弁さは、確かにいくつかの場面において、「何を喋っているかはもはやどうでも良くなる」瞬間を作っているのも事実で、それをストレートプレイで提示したときに、オペラでは音楽の影に隠れていた微細な心理の揺れ動きがクリアに見えてくるのではないかと思います。
と同時に、この公演は静岡県内の中高生向け公演も予定されているので、エンタメ要素もてんこ盛りになります!演劇ファンの方も、オペラファンの方も、老いも若きも、様々な視点でお楽しみ頂けるはずです。どうぞご期待下さい!

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根本さん、インタビューにお答えいただきありがとうございました!
ここで、根本さんのこと、もっと知りたい!気になる!という方に朗報です。
『ばらの騎士』では、SPAC初の試みとして、創作現場を公開する、オープン・クリエーション『ばらの騎士』サロンを実施中です。静岡芸術劇場にて、12月2日(土)10:30~12:30には、「根本卓也トークショー」、12月21日(木)時間未定(夕方以降を予定)には、「SPAC文芸部・大岡淳と根本卓也のトークショー」を実施予定です。根本さんの生の声が聞きたくなった!という方、ぜひこの機会にご参加ください。
単発参加の詳細はこちらhttps://spac.or.jp/news/?p=23540
また、根本さんには、2024年1月7日(日)、『ばらの騎士』公演初日の終演後のアーティストトークにもご登壇いただく予定です。こちらのトークもぜひお楽しみに。

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SPAC秋→春のシーズン2023-2024
#3『ばらの騎士』

演出:宮城聰・寺内亜矢子
作:フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
音楽:根本卓也
出演:石井萠水、大高浩一、木内琴子、貴島豪、小長谷勝彦、榊原有美、佐藤ゆず、武石守正、永井健二、本多麻紀、牧山祐大、宮城嶋遥加、森山冬子、山本実幸、吉植荘一郎、若宮羊市[五十音順]

2024年1月7日(日)、8日(月祝)、13日(土)、14日(日)、20日(土)、21日(日)、3月10日(日)
各日14:00開演 会場:静岡芸術劇場

★公演の詳細はこちらをご覧ください。
https://spac.or.jp/au2023-sp2024/der_rosenkavalier