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2023年10月13日

SPAC演劇アカデミー3期生 国際交流

9月10日、SPACと交流があるオマール・ポラスさんによるワークショップが行われました。
今回はその様子をレポートします!
 

オマールさんは、スイスを拠点に活動する演出家・俳優で、SPACとは1999年シアター・オリンピックスでの『血の婚礼』以来度々上演、作品づくりを行ってきました。昨年度の「ふじのくに⇄せかい演劇祭」では自身の半生を作品とした『私のコロンビーヌ』を上演。
今回は、鳥取県の「鳥の演劇祭」での上演に際し来日、アカデミー生に向けたワークショップを実施してくれました。

 
オマールさんとアカデミー3期生はこの日が初対面。
ワークショップはオマールさん自身のお話から始まりました。
自分は小さいころから日本に行きたいと願い、こうして今日本に来ることができていることについて、こうしたいと信じたら実現できるというお話をしてくれました。

また、今回来日する前にアマゾンにいたというオマールさん。
文明と離れた古いコミュニティで過ごし、そこにはアルーナというスピリチュアルな思想があり、花や川、ハチドリなどみんな兄弟でありみんな同じお母さんの乳(水)を飲んでいるという話もしてくれました。
このエピソードが印象に残ったアカデミー生が多く、「日本人と海外の人、人間と動物は違うと思っていたが、みんな同じものを使って生きていることに気づき、視野が広がった」と話していました。
こういった世界各地でのさまざまな文化との出会いや経験ひとつひとつが「鎖」となってつながっていくというお話も印象的でした。
 
フランス語で俳優を意味するacteurは、「行動する人」という意味でもあり、俳優は変わりつつある世界の中で行動しなくてはいけないというお話をしてくれました。
行動しよう!ということで身体を動かすワークがスタート。

まずは、日常から非日常へと身体の状態を切り替えて歩いてみます。普段の自分との姿勢や視界の違いを感じながら歩きます。
時に円になったり、パートナーを見て歩いたり、空間を意識しながら歩いたり、走ったり・・・。
“歩行”という動きだけでも様々なワークを行いました。


▲均一に空間が埋まるよう動いている様子
 
時間をかけて行ったワークがこちら。
フランス語で「休憩したい?」というオマールさんに「したい!」というアカデミー生。
しかし、オマールさんの返答は「ノー」。
「ノー」と言われたら、ある決まったリアクションをします。
OKができるまで何度も何度も繰り返し行うことで、最初は控え気味だったアカデミー生もだんだん反応が大きくなりました。


▲リアクションのレクチャーを受けている様子
 
最後のワークは、2グループに分かれてアヴィーチーの「Hey brother」という曲に合わせてパフォーマンス。
1つのグループは、今回のワークショップで行った“歩く”ことに着目したパフォーマンスを披露。
急いでいるキャラクターだったら人と人の間をかき分けたり、喜んでいるキャラクターだったらその喜びを誰かに伝えたり・・・。他者とどうコミュニケーションをとるかを、それぞれのキャラクターに合わせて丁寧にオマールさんがアドバイスしてくれます。
「自分のキャラクターはシャイだからどうしたらいいですか?」という質問に、「シャイだから触れられないわけじゃない」とシャイなりの他人との接し方について実践しながらアドバイスをしてくれました。


▲最初のパフォーマンス(上)、ブラッシュアップ後のパフォーマンス(下)

もう1つのグループは2人のアーティストとその周りの人々を表現しました。

どちらのグループもオマールさんのアドバイスを受け、演じているキャラクターの伝え方、同じ空間にいる人との関り方がぐっと良くなったと思いました。

参加したアカデミー生からは、
●みんなで円を作るとき、最初は足元を見てしまっていたが、オマールさんより「目を開いて相手の顔を見て」と言われ、ここまで半年間アカデミーでみんなと仲良くなっていたつもりがみんなのことを見られていなかったことに気がついた。
●自分の性格を悲観的にとらえず自分自身でいいよといってくれたことが印象に残った。
●ちゃんと思えば叶う、自分のことをばかだと認めていたらばかで終わってしまうという言葉が印象に残った。
という感想があがりました。

オマールさんとの交流は、自分の概念や価値観を刺激し、新たな発見につながったのではないかと思います。
このワークショップの経験もアカデミー生にとって一つの「鎖」になったと思います。

(制作部・北堀瑠香)

 
★「SPAC演劇アカデミー」とは
「世界にはばたけ、teenagers!SPAC演劇アカデミー」は、2021年度に開校した高校生対象の1年制の演劇塾で、<世界で活躍できる演劇人>を目指す若者の感性を育むことを目的としています。劇場に通いながら、SPACの創作現場の“熱”をじかに感じられる環境の中で、少数精鋭の高校生たちが切磋琢磨する──そんな場をつくります。SPACの俳優・スタッフらによる指導のもとで演劇を学び、名作戯曲の上演に向けての稽古に取り組むと同時に、教養・英語・小論文の学習にも力を入れ、思考力・対話力を身につけていきます。詳しくはこちら

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