SPAC『象』チームは、鈴木忠志さん(SPAC初代芸術総監督)が主宰するSCOTの拠点、富山県利賀芸術公園で開催された「SCOTサマー・シーズン2024」に参加しました!
世界にも類を見ない利賀のユニークな劇場群で、次代を担う舞台芸術家が作品を創造し、発表する企画「桃太郎の会」参加作品として、8月31日(土)から9月9日(月)まで、8泊9日間の滞在をさせていただきました。
「桃太郎の会」は、2022年に結成され、今年で3年目。そのメンバーは、鈴木忠志さんを筆頭に、SPACの宮城聰、豊岡演劇祭を率いる平田オリザさん、そして鳥取「鳥の劇場」の中島諒人さんの4名で、それぞれの団体が次代を担う演出家と作品を創作し、利賀芸術公園に集結して初演。そしてそれぞれの地域でも上演が重ねられます。
今回は鈴木さんが日本の近代戯曲・小説から6作品を選定しその課題作品の中から、各団体が上演作品を選んだのですが、蓋を開けてみると、大岡昇平作『野火』を2団体、別役実作『象』を2団体が選ぶという結果に。図らずも、戦争を題材とした作品の競演となりました。
▲『象』上演会場となった創造交流館
SPAC『象』チームは、3週間あるフェスティバル期間のうち、2週目後半からの合流で、SCOTの作品や、「桃太郎の会」の他団体の作品を観劇させていただきました。
特に同じ作品である『象』(鳥の劇場/福永武史演出)を自分たちの上演の直前に観たのは、レアな機会となりました。
観劇を終えたあとは、自分たちの本番に向けて一直線。利賀芸術公園の素晴らしい創作環境のなか、本番に向けた調整を重ねます。
▲稽古場にはSPAC芸術総監督・宮城聰の姿も。
鈴木忠志さんは早稲田大学在学中に知り合った別役実さんらと、新しい舞台表現を求め新劇団「自由舞台」を結成しました。『象』はその旗揚げ公演のために別役実さんが1962年に書き下ろした戯曲です。お二人はその後「早稲田小劇場」を創設しますが、別役さんは『マッチ売りの少女』、『赤い鳥の居る風景』で第13回岸田國士戯曲賞を受賞したのちに、劇作家として自立するために退団の道を選択。その数年後に鈴木さんは拠点を富山県利賀村に移し、劇団名を「SCOT」(Suzuki Company of Toga)へと改称しました。
戦後の復興から高度経済成長を遂げ、学生運動や市民運動が激化した1960年代。その時代に現代演劇の傾向に違和感を抱き、「新しい演劇」に挑戦した若者たちによって、演劇界にもうねりが起こりました。そのとき台頭した演劇はやがて「アングラ演劇」と呼ばれ、鈴木さんは唐十郎さん、寺山修司さん、佐藤信さんとともに“アングラ四天王”と呼ばれています。
革命を起こした伝説的な時代の一翼を担った鈴木さん・別役さん。
お二人の始点となったのが『象』だったのです。
SPAC『象』チームはそのエネルギーに思いを馳せながら、この創作期間を過ごしてきました。
★創作の様子を綴った「象BlogⅠ」はこちら(https://spac.or.jp/blog/?p=34128)
鈴木さんからの意見もいただき、本番直前まで試行錯誤を繰り返します。
どんな演出の変更にも、丹念に対応するさすがのベテラン俳優たち。いつも真っ直ぐで、真摯なEMMAさん。そして、パワフルなスタッフ陣。皆でよりよい作品を作り上げようと、稽古場は常に熱気で満ち満ちていました。
利賀公演は2日間とも好評で、無事に幕を下ろすことができました。
なかには静岡から初めて利賀にいらしてくださったお客様も!熱烈な応援が私たちの支えとなりました。
ご来場くださった方、気にかけてくださった方、改めまして、ありがとうございました。
この利賀での経験を次の12月の静岡公演へとつないでいきます。
(SPAC制作部・佐藤美咲)
================
SPAC秋→春のシーズン2024-2025
#2『象』
演出: EMMA(旧・豊永純子)
作:別役実
出演:阿部一徳、小長谷勝彦、榊原有美、牧山祐大、吉植荘一郎、渡辺敬彦[五十音順]
<利賀公演>
SCOTサマー・シーズン2024
9月7日(土)12:00開演
9月8日(日)14:00開演
会場:富山県利賀芸術公園 創造交流館
<静岡公演>
SPAC秋→春のシーズン2024-2025 #2
12月7日(土)18:30開演/8日(日)・14日(土)・15日(日)各日14:00開演
会場:静岡芸術劇場
*詳しくはこちら