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2010年10月19日

<世界は踊る稽古日記⑨・10/17>初めてのコーラス!

いよいよ今週末!体験創作劇場 『世界は踊る~ちいさな経済のものがたり~』の稽古風景、第9回。

佇まいが武士道を感じさせ、男の所作が冴えわたる、山下浩平さんです。

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社会人をしながらSPACサテライト劇団「劇団静火」 の制作 兼 役者をやっておりますコーラスパート出演者の山下と申しまします。 演劇との出会いは十数年前、某県立高校演劇部への入部まで遡り、以後高校・大学・社会人時代、そして劇団静火へと続く演劇人生について語り出してしまいますと、本題から完全に外れてしまいますので割愛。

しかし、合唱に関しては義務教育時代以来経験皆無の門外漢…。しかも今回は、静岡が誇る合唱指導者、音楽青葉会の戸﨑裕子先生がコーラスの指導に当たると伺っており、そんな場に私などがと躊躇していたのですが、

「大丈夫、私がイチからビシバシしごいてあげるから(ハート)」

という裕子先生の温かい言葉を賜り、決死の覚悟で稽古に臨んでいる日々で御座います。

さて本題。

8月末に始まった「世界は踊る」の稽古も、早い物で残り1週間を切ってしまいました。今日からは、本番まで怒涛の毎晩稽古。月曜からはパスカル率いるフランスチームも合流し、いよいよ待ったなしという熱い状況なので、本日の稽古も下記のとおり、とっても盛り沢山な内容となっておりました。

~本日のお品書き~

(1)定番、稽古始めの30分超の大岡さん小話(ダメだし?)

「きらり☆ふじみ(埼玉)、そしてジュヌビリエ(パリ)公演から学ぶこと」

(2)戸﨑裕子先生・文葉先生による基礎訓練(ムーブメント出演者も参加)

(3)スタッフ顔合わせ・衣装合わせ・写真撮影

(4)シーン稽古+通し稽古

(1)定番、稽古始めの30分超の大岡さん小話(ダメだし?)

「きらり☆ふじみ(埼玉)、そしてジュヌビリエ(パリ)公演から学ぶこと」

稽古のたびに、その豊富な引き出しから判りやすい喩え話や一人芝居を交えつつ、演劇論や経済講義を語っていただいている大岡さんです。毎回毎回知的好奇心をくすぐられつつ抱腹絶倒させられているのですが(参考リンク必聴です!)、今回は流石に本番1週間前、なかなか身が引き締まる内容でした。

大岡さんは今回の公演のため、パスカル・ランペールが芸術監督を務めるパリ郊外のジュヌビリエ国立演劇センターに赴き、「世界は踊る」の初演に制作過程から立ち会ってきたそうです。そして、そこで目の当たりにしたプロの役者とパリの市民参加者が織り成す芸術性を、日本で再構築するというミッションを成し遂げるため帰国。埼玉県「きらり☆ふじみ」や宮崎県「宮崎県立芸術劇場」の「世界は踊る」共同演出家にジュヌビリエでの経験をレクチャーしつつ、私たちには直接稽古をつけていただくという多忙な立場にあり、昨日も深夜まできらり☆ふじみ公演の当日配布パンフレット原稿を書いていたとのこと。

そんな大岡さんが本番を1週間前に控えた私たち県民参加者に語りかけたことは、端的に言ってしまえば、

「凄いもの作ってパスカルをビビらせてやろうぜ!」

という話でした。現在公演中の富士見公演、再来週の宮崎公演には勿論のこと、フランス本国・ジュヌビリエでの初演に勝る程の高い芸術性を持った芝居を作ろうぜ、と語る大岡さんの言葉はいつになく熱を帯び、私も興奮してしまいました。

コーラスパート出演者は、舞台上で合唱するだけではなく、同時に一部のムーブメントも行っており、その中で「自分自身の日常生活を表現する」というシーンがあります。しかし、これを文字通り、日常の意識のままでなんとなく舞台に立ってテキトウにパントマイムをすれば良い訳ではなく、

・舞台に立つ/見られる意識

・他者との調和

を常に保っていなければ、舞台上全体としての「美」を損なうことになってしまう。この2点については、大岡さんだけではなく、そしてコーラスにおける戸﨑先生のレッスンでも同じことを指導されています。考えてみれば演劇にしても合唱にしても同じ舞台芸術であり、根っこは繋がっているんですねえ。

(2)戸﨑裕子先生・文葉先生による基礎訓練(ムーブメント出演者も参加)

コーラスパートでは、稽古開始前の時間に独自の基礎訓練をしています。

これは、戸﨑裕子先生・文葉先生(音楽青葉会)のメソッドで、身体をほぐし、バランスを整えるような柔軟的体操や呼吸法に関わる体操が中心で、このあたりは演劇の基礎訓練にも通じるところがあるのですが、興味深いのは「顔面のマッサージ」が取り入れられているところです。具体的には、両耳を上下左右にぐいぐい引っ張ってツボを刺激(文葉先生談)してみたり、こすり合わせて熱を帯びさせた両手でこめかみと両目を覆い、目を休めたり。おそらく、合唱において口を正しい形に開けたり、音を脳天に響かせるような時に「顔面への意識」というものが必要になってくるために、こういう訓練をしているのかなあ…と解釈している訳ですが、いかがでしょうか先生。

しかしまあ面白い物で、実際のところこれをする前とする後で声の響きが全然変わってくるのです。今回は、ムーブメントの出演者もの基礎訓練に臨んだのですが、初めて訓練を受けたムーブメントの皆さんから

「身体がすごくあったかくなった!」「コーラスパートはいつもこの訓練をしているんですか?羨ましい」などの驚きの声も聞かれ、ちょっとばかり優越感に浸ってしまいました。

(3)スタッフ顔合わせ・衣装合わせ・写真撮影

これから本番に向けてお世話になる、SPACの照明・音響・衣装スタッフ様にごあいさつ。顔合わせと同時に、後述する初通しを稽古見してもらいました。そして今日は、何と宮城芸術総監督も稽古場に来て頂き、激励のお言葉をいただきました。

衣装合わせについては、まずは県民出演者の普段の私服を持ち寄り、とりあえず全員着てみたうえで、衣装の郭さんが全体の調和を考えながら色合わせをしていく、という流れでした。自分も何着かの組合せの「衣装」を持ち込んでみたのですが、結果的に割とプライベートにおいて、「ここぞ」という時に着るコーディネート(いわゆる勝負服)が選ばれたのでちょっと嬉しかったり。

写真撮影は、当日配布のパンフレットに掲載する出演者の紹介用です。以前共演者のサビンの稽古日記にも書いてある「オブジェ」と各自ツーショットでの撮影。コメントは、「オブジェ」を通じて語られる、共演者の人生の一コマ…当日パンフが楽しみです。

(4)シーン稽古+通し稽古

長くなったので割愛!

…すいませんでした、前半が冗長過ぎまして、肝心の通し稽古のことが書けなくなってしまいました。ただ、もはや1週間前まで来ると、通し稽古の事を書いてしまうと、どうしても芝居のネタバレになってしまうため、書きたくても書けないという事情を御理解くださいませ。

最後に、今日の大岡さんのうんちく話を引用し、自らの決意に変えたいと思います。

英語の“economy”は、ギリシャ語のオイコノミア(家政術)に由来し、本来の意味は「家庭のやりくり算段」であり、後に都市国家共同体(ポリス)における統治、近代になると国家統治の単位にまで拡張して使われるようになった。

そして、漢字語圏における“経済”は「経世済民」が語源であり、やはり「世を治め民を救う」という意味であった。

つまり、西洋・東洋ともに「経済/economy」という言葉の意味は、金銭的・数学的な方法論である前に、「世の中における人々の生き方」であったことから、「世界は踊る」における県民参加者が表現すべきものもつまり、「世界」そのものである。

経済、即ち人間の歴史を、舞台上で表現してください。

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体験創作劇場 『世界は踊る~ちいさな経済のものがたり~』

(10月23日(土)/24日(日)、野外劇場で上演)