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2009年5月27日

『ふたりの女』稽古中!

宮城聰が芸術総監督に就任して2年以上が経ち、宮城の野外劇場での作品を心待ちにしている皆さんもいらっしゃるかと思います。

今年の春の芸術祭で、宮城は、唐十郎作『ふたりの女』の演出に挑みます。

「唐十郎」と聞いて、皆さんは、何をイメージするでしょうか。まったく知らないよ、という方も多いかもしれません。「唐十郎」、日本の演劇界で、この名前は、特別な香りのするものなんです。

唐十郎さんは1940年東京生まれの劇作家、演出家、それに俳優でもある奇特なアーティスト。状況劇場という劇団を1960年代に旗揚げし、60年代末のアングラ演劇運動の旗手として注目されました。SPACの前芸術総監督・鈴木忠志もこの時代に頭角を現した演出家です。鈴木忠志、唐十郎、寺山修司の3人が、60年代アングラ演劇を牽引した、といわれています。

唐十郎さんは、神社の境内や原っぱにテントを設営して、そのなかで作品を上演する、というスタイルを確立します。そのテントの色から「紅テント」と呼んで親しまれました。

この「紅テント」という言葉は、劇団のみならず、唐十郎の作品に漂う暗くロマンティックな抒情をも表現するものになります。観客はゴザの上で肩を寄せ合い、唾が飛んでくるほどの近さで、俳優の演技を楽しみます。そんな空間はテントでこそ実現できるものです。状況劇場時代の唐作品を観劇された方なら、「紅テント」と聞くだけで、心躍らせることでしょう。

その唐作品を宮城聰が演出します。舞台芸術公園内にある野外劇場「有度」での上演です。美しい野外劇場で、唐作品が、どう再生し、どう変貌するのか…

宮城自身、唐作品に刺激を受けてきた演劇人ですから、今回の『ふたりの女』には、唐作品とはこういうものなんだ!、という宮城の思いが投影されることになります。後の世代へ受け継ぐべく、唐作品のエッセンスをうまく抽出するための試行錯誤を重ねています。

現代演劇史の更新。現代演劇史で強烈な存在感を放つ唐作品を上演することには、おのずと、その困難な課題が浮かびあがります。SPAC版『ふたりの女』はその一点突破を目指しています。

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写真は、白塗り、女装をした俳優・三島景太。心なしか興奮しているようにも…

ゼロ年代最後の年に、現代演劇史を更新できるや否や、ぜひ、劇場でお確かめください!