アメリカツアー日記
SPAC文芸部 横山義志
10/5(水)~10/8(土)
10/5(水)、いよいよアメリカツアー最後の本番日。今日は2回公演。
午前7時45分ホテルロビー集合、8時頃劇場入り。特に舞台班は数時間しか寝ていないはず。俳優陣は8時40分から30分間訓練。
午前10時にお昼ごはん。高校の学食メニューをご提供いただく。さすがにあまりおなかは空いていないが、とりあえず食べる。
12時30分開演。ハンティントン高校他、近郊のいくつかの高校の学生と先生が700人ほど観劇。学校の行事があったようで、仮装している学生が多い。杖をついた老人の仮装が多いのは、高齢者向けの病院が多い土地柄を反映しているのだろう。
客席後方からスピーカー男性陣の笑い声がすると、学生たちがビクっとする。仲谷さん、ガヤガヤにまぎれて「いやー昨日あんまり寝てないんですよ」と本音。
ハンティントンにはプロの劇団はないそうで、学生はあまり舞台を見慣れていない印象。やはり子殺しの場面で「オォ」といううめき声。映画を見たあとのようにすぐに去っていこうとする学生もいる一方で、入り口の資料をしげしげと眺めている学生も。記憶に残る公演にはなっただろう。
公演後、しばしの休息。みんな、さすがにけっこうぐったりしている。
午後5時に夕食の中華。
午後7時の回は一般公演。マーシャル大学・ハンティントン高校の日本人の先生や日本語科の学生が着物でお出迎え。
ハンティントン高校は市街地から遠く、マーシャル大学演劇科の『真夏の夜の夢』公演もあるそうで、お客さんが来るか不安だったが、地元の日本の方々のご協力もあり、350人くらいのお客さんがいらしてくださった。
こちらはさすがに大人が多く、かなり集中して見てくれて、ほぼ全員スタンディング・オベーション。
帰り際、女性のお客さんはよく笑顔で「グレート!」「ワンダフル!」などと声をかけてくれる。男性のお客さんは複雑な顔をしていたりもする。「ハンティントンでこれだけのものを見られる機会は何年に一度。本当に来てくれてありがとう!」などと、声をかけてくださる方も。
感傷に浸る間もなく、舞台班はすぐにバラシに入る。
午後10時半、衣裳班をのぞいてバラシ終了。お世話になったジェフさん、いたもちさん、ふくながさん、かわださん、やまださん等々にご挨拶して、劇場をあとに。ジェフさんが自宅から巨大なコーヒーメーカーを持って来てくれたり、いたもちさん他は自宅からアイロン台を持って来てくれたりして、みんな長時間付き合ってくださって、ホスピタリティに溢れるハンティントンのみなさんとの触れ合いが記憶に残る公演だった。
宮城さん阿部さん水村さん佐伯さんは次の予定のため、そのまま午前3時にホテルを出て州都チャールストンまで行ってから飛行機でワシントン空港に向かい、帰国。阿部さんは帰国後静岡に直行し、休む間もなくダニエル・ジャンヌトー演出『ガラスの動物園』の稽古入り。
阿部さんはそもそも、このアメリカツアーがあるため、『ガラスの動物園』のオーディション参加メンバーに入っていなかったが、前回ジャンヌトー演出『ブラスティッド』での演技が評価され、ジャンヌトーからのたっての希望で、厳しいスケジュールながら今回も出演することになった。『ガラスの動物園』は第一期稽古終了時の通しでもかなりいい仕上がりになっていた。ジャンヌトーの透明感のある舞台装置と沢田さんの照明で、ぞっとするほど美しい場面がいくつもある。紹介頁には稽古時の舞台写真も。乞うご期待。
http://spac.or.jp/11_autumn/glass.html
他のメンバーは翌日10/6(木)午後11時にホテルを出発。
7時間のバス、14時間のフライト、4時間のバスを乗り継ぎ、10/8(土)午後8時45分、静岡芸術劇場到着。
1年以上前から準備していた『王女メデイア』との19日間の旅路。ニューヨーク、ピッツバーグ、ハンティントンと、それぞれかなり異なる文化環境のなかで7回の公演を行い、2500人くらいのお客さんと出会うことができた。今回のツアーでは、お客さん一人一人の顔がよく見えた気がする。
お客さんも、俳優一人一人をじっくり見てくれたようだ。ニューヨーク公演の記事は、スタッフと役者一人一人の名前を挙げて賞讃を惜しまず、「まさに感性の饗宴、特権的な体験である」と結んでいる。
http://www.nytheatre.com/showpage.aspx?s=mede13391
ハンティントン公演ではマーク・ウェブさんが、俳優の顔にぐっと迫ったすてきな写真を何枚も撮ってくれた。
宮城作品では8年ぶりのアメリカツアーだったが、今回の出会った方々の顔を思い浮かべてみると、なんだか次回はもっと早く来られるような気がしてならない。