みなさま、ごきげんよう。ゴールデンウィークをいかがお過ごしですか。私は、よもやまブログがなかなか書けずに頭を抱えています。
『SHOJI KOJIMA FLAMENCO 2013 生と死のあわいを生きて ―フェデリコの魂に捧げる―』を担当する熊倉です。
いろいろ考えてみましたが、結局、本作の踊り手である小島章司さんの魅力を淡々と綴るのが、もっともよい気がしてきました。そんな午前2時近くです。
このタイトルにある「フェデリコ」とは、スペインの詩人であるフェデリコ・ガルシア・ロルカ(1898年‐1936年)のこと。
日本におけるフラメンコの第一人者である小島章司さんは、ご自分に多大な影響を与えたロルカへのオマージュとなる作品を作りたいと長年願っていたそうです。
このたび、それが、この演劇祭のための新作として、そしてたった1回限りの公演として実現することになりました。
それも、バイレ(踊り手)は小島さんお一人、ギタリストとカンテ(歌い手)のミュージシャンは、この公演のためだけにスペインから日本にいらっしゃるのです。
しかも、演劇のフェスティバルで上演されるということで、どうやら、ロルカの悲劇三部作『血の婚礼』『イェルマ』『ベルナルダ・アルバの家』から抜粋した言葉をカンテが歌い上げる場面もあるようです。
ますます見逃せません。
この三部作は、どれもスペインのアンダルシア地方を舞台に、そこで生きなければならない宿命の女達の悲劇を描いています。
いち早く海外の民族舞踊であるフラメンコを踊り、東京オリンピック開催で大勢の外国人に触れ、その2年後にスペインへと渡った小島さん。
日本を発ってから3週間かかってたどり着いた(※1)、アンダルシアの乾いた地で、古い因習のなかで生きる女性の姿を目の当たりにしたといいます。
さて、ここまでに書いたことを読むと、なんだか西洋への強い憧れを感じさせますが、実は小島さんの表現の原点は、小さな漁師町である故郷・徳島県牟岐町にあります。
「水平線から昇る月、打ち寄せる波の音、神社で見ていた浄瑠璃」。それら全てが、小島さんのフラメンコの原風景なのです。(※2)
深い郷土愛と自国の文化への尊敬によって(※3)、お能と融合させたフラメンコを踊ったり、高野山真言宗総本山金剛峯寺でのフラメンコ奉納公演を行ったりもしています。
さらに、古希を迎え、巨匠と呼ばれるようになった今でも、小島さんはたびたび牟岐町の子どもたちのもとを訪れ、その魅力を伝え続けているのです。
そんな小島さんに、先ごろ3月28日に開催された「ふじのくに⇄せかい演劇祭2013」プレス発表会にご登壇いただきました。
今回のよもやまブログでは、そこで語っていただいたお話をもとに、作品を紹介しています。
そうそう、上の写真を見ると、踊っている時は妖艶だったり、話している時はお優しい口調でありながら威厳に満ちていたりする小島さんですが、柔らかな笑顔がとってもチャーミング!
来たる6月16日、みなさまにもぜひ、常に次のステージに立ち向かい続ける孤高の舞踊家・小島章司さんが作る圧巻の世界と、ステキな笑顔に出会っていただきたいと願っています。
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※1
1966年、横浜から船で日本を発ち、シベリア鉄道と飛行機を乗り継いで冷戦時代のソ連モスクワを通り、
厳しい監視や検問の連続するポーランドやチェコスロバキアを経て、ウィーンに到着した時、小島さんは安堵感で涙を流されたそうです。
その後、パリに1週間滞在して舞踊やオペラを観て回り、いよいよスペインへと向かいました。
(大久保元春著,『求道の旅人 小島章司とフラメンコの世界』,角川SSコミュニケーションズ,2009年 より)
※2
(徳島放送局制作『ホリデーインタビュー「一歩一歩が力になる~フラメンコ舞踊家・小島章司さん~」』より)
※3
そのあたりのことは、今井翼さんにたっぷり語っていただきました。
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それと、忘れちゃいけないイベントをもう一つご紹介しましょう。
「ふじのくに⇄せかい演劇祭2013」の初日を飾る「フリー・オープニング・カフェ」!
なんと、しりあがり寿さんをゲストにお迎えして、SPAC文芸部メンバーとで座談会をおこないます。
テーマはズバリ「今年の演劇祭」なのですが、一体どんな話が繰り広げられるのかまったく想像がつかない分だけ、当日がとても待ち遠しいです。
みなさまも、この驚きの時間(たぶん)にお立ち会いくださいね。
前々回のよもやまブログで、仲村さんと高林さんがご案内したフランスの人形劇『ポリシネルでござる! 』とSPAC新作『黄金の馬車』とのはしごももちろんできます。
1ヶ月におよぶ演劇祭を、6月1日のこの開幕イベントから一緒に盛り上げていきましょう。