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2013年12月27日

『ロミオとジュリエット』ヨーロッパ・ツアーその15(制作・佐伯風土編)

『ロミオとジュリエット』制作担当の佐伯です。
2012年に静岡で製作・初演された本作。
2013年、ヨーロッパ・ツアーもついに終盤!
ということで、今回は現地に合流してのレポートです。

静岡からパリ経由でジュネーブ着。
出発から実に25時間・・・。
シーンと静まり返った22時の住宅街を、本当に劇場があるの??と疑念にかられながらも
教えられた地区に向かってスーツケースをごろごろ引っ張り、彷徨う。
息が白い。

心細くなった頃。
テアトロ・マランドロの本拠地の劇場、「シテ・ブルー」は大学の中にある、と聞いていたとおり、目の前に大学が!
そして誰かいる!
話しかけると、なんとマランドロ作品の『春のめざめ』(「ふじのくに⇄せかい演劇祭2012」上演)で来日していた、衣裳のマルチャさん!
久々の再会、そして中に案内されると、3ヶ月前に成田空港で見送った懐かしい顔のみなさんとついに会えました。

ちょうど夜公演の終演直後だったようで、出演者・スタッフとお客さんがワイワイやっているタイミングでした。
マランドロの人もSPACの人も会う人会う人懐かしすぎて、ハグの嵐。
もちろん、ここの主、オマール・ポラスも。
ギュギュ~~っと。

ロビーに飾られていたのが、これ。
あれ、美加理さん・・・?

ロビーにはカウンターがあって、日本食を出していました。
気が利いてるなぁ、と思いきや、見知った顔のシェフ、いや、音響スタッフが。
「ごはんですよ」をアレンジした岩のり、その名も「エマニュエルですよ」を作ってしまうほどの和食の腕前を持つ、マランドロのマニュ。

恐るべし、そのクオリティーの高さ。
メニューがこれ。柿なますって・・・。

さて、公演日の様子を紹介します。
SPAC俳優といえば、日々スズキ・トレーニング・メソッドで鍛錬を積んでいます。

こちらは、静岡公演から出演しているピエール=イブ。すっかり身体に溶けこんでいます。

俳優だけでなく、マランドロのスタッフさんたちも毎日参加しています!

低い重心の感覚をつかむのは日本人でもなかなか難しいですが、3ヶ月繰り返してきた積み重ねの成果がしっかり出ていました。
SPAC俳優から通訳さんを介しながら、型だけでなく、その意味するところを熱心に伝えてきたそうで、真剣な眼差しはSPAC俳優のそれと遜色ないほど。舞台上からの研ぎ澄まされた感覚の集合体に圧倒されそうでした。

トレーニングも「体験」で終わらずに追求し続ける。
ともに仕事をする人たちの異文化を我が身をもって吸収しようとするマランドロのスタッフさんたちの熱意。
尊敬の念を様々な場面で感じました。

ジュネーブでの公演は一般公演の他に、昼間に中高生の鑑賞公演も行われていました。
『ロミオとジュリエット』の話は知っていても、和風テイストを取り込んだオマール・ポラスの『ロミオとジュリエット』は衝撃的だったようです。

こちらは劇場ロビー。

夜の一般公演。
ジュネーブで、日本の小物雑貨のお店を開いているマダム。
ロビーで出店していると、「あらかわいい」とすぐに人だかり。
芝居を通じて、ジュネーブの人々に日本文化に興味を持っていただける機会にもなっているようです。

受付。
この巻物が実はチケット!
値段別になっていて、ここからもぎって渡します。

そして今回のツアーで一番の話題をさらったのがこれ!
ジュネーブ公演のポスターは、ロミオでもジュリエットでもなく
なんと乳母がメインビジュアル!
演じている武石本人もビックリでしたが、マランドロの狙いとしては、新しい『ロミオとジュリエット』像を打ち出せる、とのこと。。。

偶然ですが、ガラスに反射した夜の街灯を見つめる乳母。飲まれそう。

この日は終演後、「マランドロ・友の会」の会員さんを対象としたパーティーがありました。
観劇をした後に、会長自ら料理の腕を振るって会員をもてなす、という企画。
ちょうど次のシーズンの入会キャンペーン中だったようです。
会員同士の横のつながりもでき、劇場に来るのがより楽しくなりますね♪

会員が劇場を支えている。これはどこも同じなんですね。
あ、SPACの会も来年度の会員募集中です!詳しくはこちら

ロビーには懐かしい顔が、もう一人。

SPACとテアトロ・マランドロが初めて一緒に共同製作をしたのが
2009年の『ドン・ファン』という作品でした。
ジュネーブからやってきた俳優・スタッフが一夏を日本平の舞台芸術公園で
SPACの俳優・スタッフとともに過ごしながら、稽古をして舞台装置を一緒に作っていきました。
その経験が、『ロミオとジュリエット』にも間違いなくつながっています。

当時、静岡に来ていた舞台美術家のジャン・マルク。
御年70歳。
彼の顔を見た途端、タイムスリップしたような錯覚が起こり、最初は本当に幻かと思い、泣きそうになりました。
自分の中で、『ドン・ファン』の経験がよっぽどSPACでの原体験になっていたのだと再認識。
あれ以来、彼は静岡には来ていませんが、SPACでいまなお愛され続けているアーティストの一人です。

ヨーロッパツアーを経て、作品はまた一段と大きなものとなったように感じました。
3ヶ月間、約50ステージをスイス・フランスの各都市で巡演してきた俳優・スタッフの皆さん。
SPACとマランドロの間に、またひとつ、大きな絆が生まれました。

誰か一人ではできない、一日でもできない。
色んな人が、何年にもかけて紡いできた「糸」。

おまけ。
帰りのトラムを待つ間、リコーダーを教えあう、俳優の渡辺敬彦さんと、衣裳のマルチャさん。
ツアーと言っても、人と人がつながって、お互いの持ってるものを出し合って、作品が出来ていく。
芝居の基本はいつでもどこでも同じ。

そんな一枚。

佐伯 風土(2013.12.14 ジュネーブ)