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2014年4月30日

《まるふレポート3》 ジャン×Keitaの隊長退屈男

『ジャン×Keitaの隊長退屈男』 4月28日(月)観劇感想

 最初はこんなど素人の私の感想なんかを読んで、SPACの魅力を伝えるお役に立てるのだろうかと不安でしたが、制作部の熊倉さんの「観方は自由です」という言葉で安心しました。難しいことは言えませんが、私が観劇して感じたことをレポートさせていただきます。
 私は4月28日(月)の公演を観劇しました。会場は「楕円堂」。まず、ここまでの道がすごく好きです。なだらかに下っていく斜面、茶畑、くるくるまわる案内板、林を越えた先に、その劇場があります。「今から観劇をする」という高揚感も相俟って、この道が隠れ家につながる道のような、ちょっとした冒険に向かうような、そんな感じがしました。
 「楕円堂」はまさにその高揚感に拍車をかけるような、隠れ家のような劇場。地下につながる黒くて暗い階段を足下に注意しておりていくと、独特のしんとした静けさの空間がそこにあります。お客さんにぐるっと囲まれるように、劇場の真ん中には舞台。ここで三島景太さんは一人で芝居をするのだと思うと、逃げ場がなくて怖そうだなあと思いました。
 ちょっとでも身動きをすれば空間に響くような、劇場全体の集中力が高まった時に、三島さんが登場しました。本当に独特な世界観がそこにはあって、まるで夢を見ているような感じがしました。引き込まれるというか、飲み込まれるという感覚でした。イワタニ隊長の感情が表現に直結しているような舞台で、ぐるぐると変化する様子に目が離せない。イワタニイズミという人間の感情がダイレクトに流れ出ていて、正直怖い作品だと思いました。
 先日開かれたキックオフミーティングの時に、三島さんに「演技はたのしいですか?」という質問をしたところ、「苦しいです。」とからっと答えられました。私は虚をつかれたように感じました。しかし、生で演じている三島さんをみて、納得しました。誰かの感情を自分に落とし込むというのは難しいし苦しいだろうなあ、すごいなあと思いました。はじまってすぐに三島さんの顔には汗が滝のように流れていて、「苦しいです。」という意味が見て取れるものでした。
 音楽も素敵でした。イワタニ隊長の感情にあわせて、楽曲が変わります。随所で観客も一緒に手拍子をしたり踊ったりするところがあり、体感的にも面白かったです。劇中、「音楽が違う!」と言っているときがあったのですが、あれはアクシデントだったのか、演出だったのか、終演後の質問トークの時間で聞きそびれてしまいました。
 好きなシーンについてですが、私は酒を飲むシーンが幻想的で好きでした。台詞が何を言っているのかよく分からない所がありました。しかしそれがまた、この劇に飲み込まれた理由の1つのような気がします。その後の精神が崩落したようなイワタニ隊長も、迫力があって怖くて目が離せませんでした。
 演劇というのは演じる方も相当大変そうですが、観劇をする人もだいぶ疲れるのだと知りました。独特の世界観に飲み込まれて、脳みそと感情を目一杯働かせるからです。今まで使った事のない部分の脳と感性を働かせている気がしました。今日はぐっすり寝れそうです。
 三島さんは「演技はたのしいですか?」の質問に、「苦しいです。」と答えられました。「でも、演じきったあとの一瞬がいいんだよなあ。」と仰っていました。その一瞬は、観客も共有できるものでした。

(まるふ2014執筆クルー 三好)