さて、今年も早いもので残りあと、半月となりました。
ご好評をいただいている、小野寺修二演出『変身』公演も
残すところ、週末公演は2回のみです。
まだ、観ていないという方、どうかお見逃しなく。
そして、もうひとつ、この年末見逃していただきたくないのが、
『ミス・ナイフ、オリヴィエ・ピィを歌う』公演です。
鏡の前で口紅を塗ってみたころ
~オリヴィエ・ピィ『ミス・ナイフ』のこと~
SPAC文芸部
横山義志
女装キャバレーショー『ミス・ナイフ』は劇作家・演出家オリヴィエ・ピィのライフワークともいえる作品である。1996年初演だという。この年には、ピィはまだ30代になったところで、セドリック・クラピッシュの映画『猫が行方不明』でゲイの男の子役で出演して、同居するヒロインに「ほら、もっと肩出して、セクシーにしなさいよ」なんて恋愛指南をしたりしてた。私がはじめてミス・ナイフを見たのは2004年。そんな青年の面影も残っていたピィが、パリのバスティーユにある「カフェ・ド・ラ・ダンス」で、お客さんに流し目を送りながら一生懸命お尻をふっていたのをよく憶えている。なんと宮城さんのク・ナウカがパリ公演を行ったのと同じ劇場だった。不思議な縁。
それから2007年にはオデオン座の芸術監督、つづいてアヴィニョン演劇祭の芸術監督に就任して、なんだかすっかりフランス演劇界を代表する存在になってしまった。気がつくとちょっと貫禄がついてしまったピィが、2012年にオデオン座サヨナラ公演としてこのミス・ナイフを再演する、と言い出したときには、ちょっと驚いた。静岡でもぜひやりたいという。
このときは忙しすぎて静岡公演は実現しなかったが、2014年のアヴィニョン演劇祭では、芸術監督就任直前に、なんとオフで、自分で小屋を借りてミス・ナイフをやっていた。「ぼくはここのオフで芝居をはじめたんだ。来年からはもっとインとオフの垣根をなくしていきたい」なんていいながら。10年前に比べて露出はだいぶ減ったけど、リップサービスと流し目は健在。それに大人の魅力(?)とちょっぴり哀愁が加わって。
ふだんのオリヴィエ・ピィの芝居は、きれいな男の子はいっぱい出てくるけど、えらく長台詞が多くて、平気で上演時間10時間とか24時間とかだったりして、やたらと壮大なものが多い。だけど、きっとミス・ナイフをやると、子どもの頃、ドキドキしながらお母さんのワンピースを出してきて、鏡の前で口紅を塗っていたのを思い出すんだろう。
そんな大事な舞台を、ようやく静岡に持ってきてくれるという。今も相当忙しそうなのに。だいたい女装キャバレーショーをやっている演劇祭の芸術監督が他にいるだろうか?いつも大きな十字架をかけてるけど、クリスマスのミサに出なくていいんだろうか?すてきなクリスマス・プレゼントまで、もうあと一週間足らず。アジア公演は台北と静岡の二カ所だけ。まだ多少お席があるようなので、ぜひピィさんの流し目に出会いにいらしてください。
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◆公演情報◆
『ミス・ナイフ、オリヴィエ・ピィを歌う』
12月23日(火・祝) 17:00開演
静岡芸術劇場
上演時間:約90分 歌詞:フランス語/日本語字幕付き
出演:オリヴィエ・ピィ(歌)ほか
http://spac.or.jp/missknife.html
☆終演後に、レセプション・パーティ「オリヴィエ・ピィ&宮城聰と語らうクリスマスの夕べ」を開催します。
◆『ミス・ナイフ、オリヴィエ・ピィを歌う』日本公演記念◆
「オリヴィエ・ピィ&宮城聰と語らうクリスマスの夕べ」
右:オリヴィエ・ピィ 左:SPAC芸術総監督・宮城聰 今年7月フランス・アヴィニョンにて
日時:12月23日(火・祝)19時開始予定
場所:レストラン「オアシス」(グランシップ1階/静岡芸術劇場隣り)