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2016年6月30日

イナバとナバホの白兎/パリ日記(30・完)

SPAC文芸部 横山義志
2016年6月20日(土)~21日(日)

 
公演が終わり、今日で帰国。雨。
 
 
そういえば、今回はパリのこの季節には珍しく、かなり雨が降ったが、なぜか上演中はそれほど降らなかった。最後に背景幕を開け、庭園を見せる演出だったのだが、午後8時開演だと、午後9時40分頃に背景幕が開くことになる。日の入りは午後10時過ぎなので、まだ明るい。太陽神を祀る場面なので、このときに大雨だったりすると、ちょっと話が合わない。このときには、庭園はいつも鮮やかな緑を見せてくれていた。

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まずは技術スタッフ等7人が午後1時20分に劇場に集合し、持ち帰る楽器や小道具などの機材をトラックに積む。午後3時過ぎに空港着。税関で手続きをして、機材を預ける。今回はANAに協賛をいただき、荷物の受け入れにもご協力いただいて、かなりスムーズに進んだ。午後5時前、俳優など残りのメンバーが空港に到着。

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今回は俳優・スタッフ総勢42人。俳優は26人。そう言うたびに驚かれた。最近ヨーロッパでは一人芝居がやたらと多くなり、そうでなくても、特にツアーをするような作品は、出演者はせいぜい数人、というケースが多い。舞台装置もなるべく作らず、映像を多用する傾向がある。これには経済的要因が大きい。一方『イナバとナバホの白兎』では、映像は使わず、音は全て俳優の声と楽器によって構成されている。その分、旅をするにはかなりの手間がかかる。このような作品は時代の風潮に逆行しているともいえる。

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パリでは多くのお客さんから、「このような作品に出会ったのは何年ぶりだろう」という声を聞いた。毎晩のように絶賛の声を聞くことができたのは、一つには、実際このような作品を見る機会が失われているからだろう。集団創作を行っていた時代の太陽劇団の作品になぞらえてくださった方も少なくなかった。フランスでは、同じメンバーが長年に渡って共同作業をつづける「劇団」という形態が稀少になりつつある。SPACのミッションの一つは、「劇団」でなければできないことを示すことにある。この意味では、この作品はまさに、「劇団」なしではありえなかった作品だといえるだろう。SPACができてからもうすぐ20年、宮城さんが芸術総監督になってからもすでに10年近くになる。既存の戯曲にもとづかない集団創作という実験が可能になったのも、それだけの経験を共有し、蓄積してきたからだろう。

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そういえば、初日が開けてからも毎日稽古していたのにも驚かれた。おかげで静岡公演に比べても、ずっと完成度の高い作品になったと思う。再演してほしいという声も多かった。またこの作品を見られる日も、それほど遠くはないかも知れない。

午後8時過ぎに離陸。翌日午後3時頃、羽田空港着。午後7時頃、静岡到着。片付け作業のあと、各自帰途に着く。

集合写真トリミング済

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フランス国立ケ・ブランリー美術館開館10周年記念委嘱作品
『イナバとナバホの白兎』
6/9(木)~19(日) ケ・ブランリー美術館クロード・レヴィ=ストロース劇場
◆公演の詳細はこちら
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