ただいま静岡芸術劇場では、年明けの上演に向けて『顕れ』の仕込みの真っ最中!
9月にパリで世界初演したので、それをそのまま静岡でも上演すればよいだけ、というわけではもちろんなく…。
舞台セットを芸術劇場のステージのサイズや客席との距離に合わせて調整し、衣裳や小道具もメンテナンス、ものによっては作り直しが行われています。
今回はそんな大忙しのなか、衣裳デザインの駒井さん、小道具デザインの深沢さんにお話を聞くことができました!前後編に分けて創作秘話をお届けします。
『顕れ(Révélation)』はアフリカの奴隷貿易の歴史においてこれまで語られることのなかった「加担したアフリカ人たち」に光を当て、神話的世界で救済の物語として描いています。
作品に登場するのは、万物創造の女神と魂たち。舞台写真を大きく使った今作のチラシ・ポスターの中央いるのが「女神イニイエ」、取り囲むように跪いているのが魂たち「マイブイエ」です。
アフリカでは、死ぬと魂は“魂の海”に還っていくという輪廻転生が基本的な死生観。戯曲では、人間の肉体が誕生するときに、最高神・イニイエの懐のなかから魂が飛び出して赤子の中に入るとされています。物語はマイブイエたちが「この世に生まれたくない」とストライキを起こしたことから始まり、イニイエはその原因となった“一千年のつみびとたち”の審きを行います。
イニイエの衣裳は縄文土偶!?
駒井さんはこうした作品の世界観をふまえた時、罪を告白するときに対峙するイニイエは、つみびとたちの本来の自分達の姿・人間の生まれたままの姿を象徴する存在であるべきなのではと考えたそうです。
そのイメージから、いまよりもっと原始的な時代の人間の姿である土偶にたどり着き、今のようなフォルムになったといいます。
▲初期の素材集めの段階の資料
イメージが、固まったら実際に衣裳をデザインしていきます。
駒井さんはいつも、素材集めをして舞台上にコラージュしながらデザインを考えていくそうです。
今作の舞台美術は、SPACとも親交の深いフランスの舞台美術家サラディン・カティールさんが手がけ、稽古開始時にそのデザイン案が届いていました。
その写真の上に集めた素材を並べながら、生地や質感・色合いなどを模索していったそうです。
▲コラージュした写真。並べることでキャラクター同士のバランスも掴むことができるそうです。
「提灯型の土偶」はこうして出来上がった!
そうした着想から、舞台衣裳として戯曲に指定のある動きをできるようにと考えた結果生まれたのが、「提灯型の土偶」。
“縄がほどけて人間が生まれてきた”というようなイメージを具現化するため、提灯と同じような、骨に輪っかを括り付けるという構造で衣裳が出来上がっています。(今はメンテナンス中のため、輪っかが何本かとれている状態。)
提灯のように畳むことができるので、パリへ運ぶときにコンパクトになり便利だったそうです。(笑)
それぞれの輪っかの長さを算出したリスト。この調整だけでもかなりの時間を要したそうです。
また1本1本ロープに布をかぶせてできていて、舞台上でのっぺりしないように白は2種類の色が使われています。
稽古を通じて俳優からフィードバック
衣裳の核が出来たあとは、稽古をしながら俳優と話し合いを重ねて調整していきます。
今回は演じる美加理さんから、「今回の衣裳の場合は足の動きが見えないので、腕の動きを活かせるようにしたい」というオーダーがあったそう。
これを受けて、元々は全身すべて同じ素材で作っていたのを腕の部分だけ素材を変え、動きをいかにきれいに見せるかにこだわり作っていったそうです。
駒井さんお気に入りポイントでもある腕の部分。ぜひ劇場で、俳優の動きとともに注目してご覧ください!
そしてイニイエの胸に宿る、生まれ変わろうとする魂たち・マイブイエは、衣裳班と美術班のタッグによって出来上がっています。
こちらは次のブログでご紹介します。お楽しみに!
◆これまでのブログ
2018.7.15更新 #001 県大での公開授業レポート
2018.7.21更新 #002 作者レオノーラ・ミアノ氏来静!
2018.8. 5更新 #003 レオノーラ・ミアノ氏講演会レポート
2018.8.30更新 #004 研修生ポールさんの振り返りレポート
2018.9.11更新 #005 世界初演まで間もなく!
2018.12.10更新 #006 『顕れ』の世界を読んで楽しむ
2018.12.16更新 #007 静岡県立大学図書館で特別展示開催中
◆パリ公演期間中のブログ
『顕れ』パリ日記2018 by SPAC文芸部 横山義志
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SPAC秋→春のシーズン2018-2019 #3
顕れ ~女神イニイエの涙~
2019年1月14日(月祝)、19日(土)、20日(日)、26日(土)、27日(日)
2月2日(土)、3日(日) 各日14:00開演
日本語上演/英語字幕
会場:静岡芸術劇場
作:レオノーラ・ミアノ
翻訳:平野暁人
上演台本・演出:宮城聰
音楽:棚川寛子
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