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2020年3月6日

【大解剖!『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』の魅力】
Vol.1〜宮城聰に聞いてみました〜

今年の「ふじのくに⇄せかい演劇祭」で上演する、SPACの最新作『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』。このブログでは、本作の担当制作・宮川が作品の魅力や見どころについて、じっくりご紹介していきたいと思います!開幕までお付き合い頂けたら嬉しいです♪
 
先日「ふじのくに⇄せかい演劇祭」の会員先行チケット発売(3/1~)にあわせて、『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』演目紹介movieが公開されました!
 

 
第1回目のブログでは、3月中旬の稽古開始に先駆けて、本作上演へ至った経緯、また現段階での作品の見どころを演出の宮城聰に聞いてみました。
(本インタビューは、上記の演目紹介動画を作成する際に収録したインタビューの全編です。)
 
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宮城 聰 MIYAGI Satoshi
このお茶目なポーズのヒミツは動画の最後で明らかに♪気になる方は、ぜひ上記の動画を最後までご覧ください!
 
 
--新作『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』上演に向けて、ひと言お願いします。

今年僕が唯一、新作として手掛けるのが『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』です。僕が唐十郎さんの戯曲を演出するのは『ふたりの女』に続いて2作目で、会場も同じく舞台芸術公園の野外劇場「有度」での上演です。
 
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▲舞台芸術公園 野外劇場「有度」
 
--今回、なぜ改めて唐十郎さんの戯曲を上演するのでしょうか?

僕はちょうど1年前に駿府城公園でヴィクトル・ユゴーの『マダム・ボルジア』という戯曲を上演しました。ご存知の通りヴィクトル・ユゴーは、『レ・ミゼラブル』や『ノートルダム・ド・パリ』といった作品も書いていて、考えようによっては、世界で最も上演されている舞台作品の原作者です。
 
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『マダム・ボルジア』(演出:宮城聰、原作:ヴィクトル・ユゴー)
 
僕がユゴーの戯曲を演出していて驚いたのは、作家の方が観客よりもなにがしか上の立場にいて、「観客がまだ知らないことを作家の私は知っているよ。だから観客の皆さんに教えてあげるんだよ。」っていうスタンスが全くないんです。皆目ないんですよ!
つまり、作家が書きながら、読者あるいは観客と全く同時にその出来事を体験している。作者自身が「へー、こうなるんだ!」っていう感じで、まるでその場に立ち会っている人のように書いているんです。

 
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『マダム・ボルジア』(演出:宮城聰、原作:ヴィクトル・ユゴー)
 
「これはすごいな、ヴィクトル・ユゴー、だから天才なんだ!だから世界で上演されるんだ!」と思った後でふと、「あ、これ何かに似てるぞ、そうだ唐十郎さんの戯曲だ。」と気づいたんです。
 
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『ふたりの女 ~平成版 ふたりの面妖があなたに絡む~』(演出:宮城聰、原作:唐十郎)
 
観客と唐さんが全く同時に体験しながら、あたかもその場に唐さんがいて、その様子を書き留めているかのように戯曲が出来上がっている。「これが観客と舞台の、真の平等性なんだ。舞台の方が偉くて、観客に対して上から下に情報を流すのではない、観客と舞台が本当にフラットなんだ。」と。ヴィクトル・ユゴーの戯曲をやりながら、その関係性が真の天才の手によって成し遂げられいて、唐さんの戯曲もそういうものだなと思い、それで今年も唐さんの戯曲をやってみよう、と思いました。
 
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▲『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』イメージ・ビジュアル
 
--舞台美術はカミイケタクヤさんです。

カミイケさんとは『寿歌』で初めて出会って、僕はそのセンスに非常に惚れ込みました。
 
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▲カミイケタクヤ氏
 
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『寿歌』(演出:宮城聰、作:北村想、美術:カミイケタクヤ)
 
「芝居を心の底から好きだ」ということと、一方で、舞台美術を一人の作家として作っていく作家性。実は、この二つは両立しにくいものなんです。作家性の方が前に出てくると、「これは私の造形作品です」という風になってきて、芝居に奉仕している感じがなくなってくる。また芝居に奉仕すると、裏方的な感じになってきて、舞台美術も作家の作品なのだという雰囲気が減ってしまう。しかし、カミイケさんはその両方のバランスができていて、成立しているんですね。「芝居の熱狂的なファンである」という熱を持っていながら、彼なりに戯曲を読み込んだ上で、彼なりの作品として提出している。それは一種の演出ですね。そんなカミイケさんの舞台美術にも、ぜひご期待ください。
 
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また、先日グランシップ内にて「ふじのくに⇄せかい演劇祭2020」のプレス発表会が行われた際に、『ふたりの女』にも出演していた俳優のたきいみきと奥野晃士が登壇し、本作出演への意気込みを語りました。
 
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「私たちはSPACの”チーム・アングラ”(笑)として、唐戯曲のきらめくような言葉の数々を身体を通して語っていけるよう、また新たにチャレンジしていきたいと思います。」(たきい)
 
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「唐戯曲をやっているときの宮城さんは、まさに“演劇に恋した”状態。その中で生まれる今作を他にはない形で上演できるよう、アングラのスピリットを宮城さんから受け取っていきたいです。」(奥野)
 
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SPAC”チーム・アングラ”による『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』。稽古の開始がより一層楽しみなりました♪
次回のブログでは、「戯曲の魅力」をご紹介する予定です。どうぞお楽しみに!

構成・文:宮川絵理(制作部)



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ふじのくに⇄せかい演劇祭2020
『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』
2020年4月25日(土)、26日(日)、29日(水・祝)
各日18:00開演
会場:舞台芸術公園 野外劇場「有度」
演出:宮城聰
作:唐十郎
美術:カミイケタクヤ

出演:泉陽二、奥野晃士、春日井一平、片岡佐知子、河村若菜、木内琴子、鈴木陽代、関根淳子、たきいみき、ながいさやこ、牧山祐大、宮下泰幸(50音順)
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