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2020年9月8日

【シアタースクール通信2020】オンラインワークショップ開催レポート

毎年、夏に開催している「SPACシアタースクール」
今年度は新型コロナウイルスの影響により、残念ながら発表会を2021年度に延期いたしましたが、8月9日(日)、15日(土)、16日(日)、22日(土)、23日(日)に過去シアタースクールに参加してくださった中学2年生~高校2年生を対象にオンラインワークショップを開催いたしました。
今回のブログはワークショップの様子を制作部・北堀がレポートしたいと思います!
 
今回のワークショップには、指導に中野真希、アシスタントに俳優の春日井一平、片岡佐知子、鈴木真理子、ながいさやこが入り、参加者のサポートをしました。
オンラインでの実施ということで、例年のシアタースクールで行っている内容をそのままやることは難しいため、今回は主にストレッチと台本読みを行いました。

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▲仲間やアシスタント俳優と久しぶりに会えて嬉しそうでした。
 
ストレッチは、アシスタント俳優が日替わりで担当。体をほぐすストレッチや自分の身体の状態を知ることができるストレッチを行いました。

画角を気にしながらのトレーニングで大変なこともありましたが、オンラインだからできたものもありました。

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▲春日井によるカメラで遊ぼう!というトレーニングの様子。
 
今回のシアタースクールで取り組んだ作品は、サン=テグジュペリの『星の王子さま』
まずはシーンごとに回し読みを行いました。
参加者の中には「タイトルは知っているけど読んだことがない」という参加者も何人かおり、初めて読んだ参加者からは・・・

・飛行士の小さい時と、王子さまが似ていると思った。つまらない大人にさせられてしまったと感じている飛行士が、小さい頃の自分に対峙しているように思えて面白い。

・2人の会話が夢の中のようで、違う考えの2人だけど、どちらも想像力が豊かだから、すごく楽しい会話になっている。

・歳を重ねるにつれ、日々の小さなことに感動したり刺激を受けたりすることが減っていくと思うけど、王子さまは大人に対してそこをビシッと言って、気づかせてくれたのではないかと思った。

など、初めて読んだとは思えない感想が出てきました。
 
回し読みをして内容をつかんだ後には、シーンごとに役を割り振って読みました。
オンラインでのワークショップは、これまでのように同じ空間でお互いの身体や呼吸を感じることができないため、最初は不安そうな参加者もいましたが、回数を重ねるにつれ慣れてきたようで徐々に読むだけではなく、身振りや手ぶりを入れる参加者も出てきました。
中野からの指導も入り、だんだんセリフの間や強弱なども意識しながら読めるようになっていきました。

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▲羊の絵を自分で書いてくれた参加者も!
 
ワークショップを終え、参加者からは、

・オンラインで演劇をやるのが初めてなので、どうなるのだろうと思ったが、いろいろな役ができたことで、たくさんの役柄を理解することができ楽しかった。

・普段は動きながら演じているけれど、今回は声だけで伝えなくてはいけないのが難しかった。でもそこが面白いところでもあった。

・今回みんなと離れてやると聞いてドキドキしていたのだけれど、いつもと変わらず楽しめた。

などの感想があがりました。
 
オンラインでのワークショップにあたり、参加者自身も初めてのことが多く大変だったこともあるかと思いますが、それぞれがオンラインでの見せ方を考え、楽しんでいただけたようでよかったです。
普段のシアタースクールでは学ぶことのできないオンラインという新しい場での演技の仕方やコミュニケーションの取り方について学ぶことができたのではないでしょうか。

最終日には指導の中野、アシスタント俳優、そして芸術総監督の宮城聰よりメッセージが送られました。


指導・中野真希から参加者へのメッセージ
最初はどうなるかわからなかったですが、想像していたより進みがよく、みんな前向きでうまくいってとても嬉しかったです。周りのセリフをよく聞けていたし、台本も読み込めていて、5回のワークショップでみんな成長したと思います。来年は顔を合わせてできたらいいなと思います。もし来年参加できなくても芸術劇場が再開したら会いに来てください!


芸術総監督・宮城聰から参加者へのメッセージ
僕は若い頃、演劇を始めたおかげで、他の人の気持ちや考えを、より感じられるになりました。
『星の王子さま』に書かれていることの半分ぐらいは、みんなぐらいの年に感じることだと思います。決定的な別れなど悲しみについても書かれていますが、サン=テグジュペリは40歳過ぎてこの作品を書き、若いころの気持ちと、後になってそれを思い出している気持ちとの、両方の視点から物語をつくっています。そして、若いころに感じた気持ちは次第に薄れていくけれど、本当はいつまでも大切なものだと思って書いていると思います。
色々な見方ができるのも演劇のいいところです。その人物になりきると同時に、その人物と離れて上から眺める、それが両方味わえるのが演劇で、そのことにより、他の人の気持ちを学べるのだと思います。


 
また、ネット環境がない参加者向けに、「くものうえ⇅せかい演劇祭」ブロッサム企画としても実施した「でんわdeシアスク」を行いました。参加者は、アシスタントのながいさやこと『星の王子さま』の台本を読んだり、近況について話したりしました。担当したながいは、電話越しではありましたが、久しぶりに参加者の元気そうな声を聴くことができ、とても嬉しかったそうです。

今年度のシアタースクールは、回数も5回に限られ、オンラインワークショップという形での開催でしたが、参加者一人一人の、劇場でのシアタースクールでは見られなかった一面を知ることができました。また、この1年間での参加者のみなさんの成長を、しっかりと感じることができたワークショップとなりました。
今年はオンラインでの開催となりましたが、来年は新しい仲間も加わって、静岡芸術劇場でみなさんとお会いできることを楽しみにしております!
 
関連リンク◆人材育成事業「SPACシアタースクール」紹介ページ