舞台芸術公園ロータリーからの富士の眺めは見事である。殊に雲上の富士は幻想的だ。
それにしても、背後の山茶花の植え込みは貧弱極まりない。日本平パークウエイ(市道池田日本平線)に接する面の生垣にしているのだが、長細いコンクリート枡の中で乾燥気味になるのか、葉はいつも黄ばんだ色、丈も一メートルほどで十年前の植栽時と変わらない。枝枯れとともに支柱の竹も朽ちかけ、ススキや蔓も絡み、見すぼらしさだけが目についてしまう。
自然の中で人工的な植栽は馴染み憎い面もあるが、せめて自生の植種を選択すべきであったろう。
何れ模様替えするにしてもと思いながら、昨年の秋、はじめて枯れ枝、朽ちた支柱、枯れ草を取り除いた。気まぐれの手入れであったが、長年放置した後ろめたさも幾分取れた気になった。
年が明けて一月半ばの夕暮れ、ロータリーの片隅に赤い花が点々と浮かぶ光景に目を見張った。輝いている。生垣越えの沿道の林が黒の背景になってその木立の間から、射すような光がピンポイントで山茶花の花を当てている。
陽が低い冬の、そのまた一瞬を捉え山茶花は、“ここに居るよ”と呼び止めたのか。いや違う。今まで何を見ていたのさ!
この地が舞台芸術の世界だけに尚更のことかも知れない。
よく見ると竹の支柱がまだ残っている。取り払って自由にさせてみよう。