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2026年4月28日

バロ・デヴェル『Qui som? ―わたしたちは誰?』ブログ(SPAC文芸部 横山義志)

Qui som(キ ソム) ? -わたしたちは誰?』は失敗をテーマにした作品です。壺は落ちて割れ、ろくろの粘土はぐちゃぐちゃになり、みんな泥まみれになり、転んでは立ち上がり、何度でも同じ失敗を繰り返します。世界に手を加えないと生きていけないし、楽しい生活を送るにはもっとがんばらないといけない。でも気がつくと、思ったのとは違うことが起きている。山は動き、海に呑み込まれる。一生懸命生きているだけなのに、なんでうまくいかないのか。こんなわたしたちは、一体何者なのか・・・。原題のQui som?(キ・ソム)はカタルーニャ語で「わたしたちは何者?」という意味。だんだん、人類全体の失敗の話にも見えてくるかもしれません。

バロ・デヴェルは2000年にフランスとカタルーニャ(スペイン北東部)で創立された現代サーカスのカンパニーです。でもサーカスアーティストやクラウンだけでなく、ダンサー、俳優、ミュージシャン、陶芸作家など、様々な分野のアーティストが参加しています。人はおしゃべりをして、ものをつくって、歌って、踊って、遊んで、飛び跳ねて、滑って転んで、また起き上がっておしゃべりをします。そんな全てが愛おしくなるような作品です。

Qui som(キ ソム) ?は「誰がわたしたちなの?」という意味でもあります。世界中のさまざまな地域から集まったバロ・デヴェルのメンバーたちは、経験とアイディアを持ち寄り、長い時間をかけて創作していきます。バロ・デヴェルという名前はロマ(かつてヨーロッパ各地を旅して暮らし、「ジプシー」とも呼ばれた人々)の言葉で「大いなる神」という意味だそうです。どうすれば「わたし」は他の人たちとつながって「わたしたち」になることができるのか。どうしたらもっと多くの人たちと「わたしたち」になれるのか。どうすればふだんの「わたしたち」より大きな存在とつながることができるのか。ここには、そんな問いも隠されていそうです。

実はバロ・デヴェルのメンバーには、人類だけでなく、動物もいます。前々から「すごく面白いから見て」と言われていたのですが、映像を見てみると、たしかにすごそうだけど動物が出てくる作品ばかりで、なかなか日本に来てもらうのは難しいかも、と思っていました。創立者の一人カミーユ・ドゥクルティは幼い頃からサーカス団とともに馬車でヨーロッパ各地を旅して回っていたとのこと。この作品にも、アヴィニョン演劇祭で初演されたときには子犬が出演していたのですが、日本は検疫が厳しく、残念ながら静岡では出演できなさそうです…。でも、「わたしたち」は人類だけではないかも、と思って見ていただけるとうれしいです。

ユーモラスな言葉が、いつの間にかどんどん詩的に飛翔していき、絶望を突き抜け、得体の知れない希望へと誘っていく。カミーユ・ドゥクルティの圧巻のボイスパフォーマンスを、メンバーみんなが楽隊になって支え、出演者も観客も「わたしたち」になっていく。そんな時間を静岡で体験できるのがとても楽しみです。

(文芸部 横山義志)

 


 

SHIZUOKAせかい演劇祭2026
Qui som(キ ソム) ?ーわたしたちは誰?

作:カミーユ・ドゥクルティ、ブライ・マテウ・トリアス
製作:バロ・デヴェル

公演日時:5月3日(日)、4日(月祝)、5日(火祝)、6日(水休)各日13:00開演
会場:静岡芸術劇場
上演時間:150分(休憩なし)
上演言語:フランス語、スペイン語、英語、ポルトガル語、カンボジア語上演/日本語・英語字幕

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