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2010年12月29日

【ドン・ファン③】仮面製作クローズアップ

目下、年明けの再演に向けて稽古真っ只中の仮面劇『ドン・ファン』。

本作のオリジナル(フランス語版)は、演出家オマール・ポラス率いるテアトロ・マランドロによって2005年にパリ市立劇場にて製作されたもので、そのテアトロ・マランドロ版をもとにオマール・ポラスとテアトロ・マランドロがSPACとともに、SPAC版『ドン・ファン』として共同制作されたものです。

本作の大きな特徴は何といっても劇中に出演者がかぶる仮面です。昨年(SPAC秋のシーズン2009)の初演の際に、SPACの創作・技術部スタッフがテアトロ・マランドロのスタッフと共同して製作したものです。
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本作で仮面メンテナンスを担当しているスタッフは、仮面という新しい美術を製作したことで、舞台作品で使用する装置や美術を考えるとき、改めて、それら単独ではなく、舞台における効果や役割、そして役者との関係を考えながら自身の創作活動に取り組むようになるきっかけになったと言います。

『ドン・ファン』で使用している仮面の素材は特殊なものが多く、素材の特性を理解するところから始まったそうです。実は、それぞれの仮面には様々な国の要素が含まれていて、仮面装飾の一つとして畳(いぐさ)も使用されているんです。こういった小さなコラボレーションも国際共同制作の面白さにつながっていきます。他にも、仮面につけられた髪はすべて本物の鳥の羽でつくられいて、そのデリケートな仮面をていねいに修復したり、一年経った出演者の顔にフィットするよう調整するメンテナンス作業が日々行われています。
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仮面をかぶることで顔の大半が覆われ、俳優達は自分の顔の表情で感情を表現することは限られることになります。しかし、仮面担当スタッフによれば、一方で、仮面で顔を覆うことは俳優を外見だけでなく内面からもその物語の登場人物に変身させ、自分の新しい可能性に気づかせてくれるかもしれない、だから舞台に登場するものをデザインし、創作するときは、それが舞台作品を創造する過程、そして舞台全体の中で他の要素とどのような関係を成立させ、どのように存在するのか、を改めて考えるようになったと言います。

ドン・ファンに登場する様々な仮面、皆さんにとってはどのような存在になるでしょうか。是非ご注目ください。
http://spac.or.jp/11_spring/donjuan