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2019年5月4日

「ふじのくに⇄せかい演劇祭2019」前半レポート

GWは早くも折り返し、「ふじのくに⇄せかい演劇祭」は今年も連日賑わっています!開催20回目を迎えた演劇祭前半4作品のチケットは、開幕前に全てソールドアウト。「平成」から「令和」への改元で巷が湧く中、「GWは静岡へ!」の合言葉が浸透してきたことを実感しながら迎えた10連休。4月27~29日、前半の3日間を写真とともにレポートします♪
 
4月27日(土)

『Scala-夢幻階段』開幕初日は、土砂降りの雨とともに始まりました。強まる雨にも関わらず、静岡芸術劇場には続々とお客様が来場され、ロビーはこれから始まる祭典への期待と高揚感に包まれます。
 

SPAC芸術総監督の宮城聰が、劇場入り口でお出迎え。[撮影:平尾正志]
 
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2Fロビーでは、これまで開催した20回のポスター展も。[撮影:平尾正志]
 
開幕作品の『Scala-夢幻階段』は、世界的に注目されているヨアン・ブルジョワ氏の日本初上演作ということで、静岡はもちろん、首都圏をはじめ遠方からも多くのお客様が。劇場に一歩足を踏み入れると、舞台には階段がそびえ立つグレートーンの大きなセットが目に飛び込みます。
 
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[カンパニー提供写真 / 撮影:Géraldine Aresteanu]
 
舞台に男が現れ、不意に壁の額縁が落ち・・・。日常的な動作が行きつ戻りつし、時間軸が次第に歪んでいくかのよう。全てが目の前で起きていることだとわかりながらも、観客は非現実的な浮遊感に包まれます。ブルジョワ独特のセンスとユーモアに、笑いが起こるシーンもしばしば。人間離れした動きの連鎖が生む濃密な60分、観客は舞台に釘付けになりました。
 
12_Scala3©Géraldine Aresteanu - light
[カンパニー提供写真 / 撮影:Géraldine Aresteanu]
 
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トランポリンを使ったアクロバットに、思わず拍手が起こる。[カンパニー提供写真 / 撮影:Géraldine Aresteanu]
 
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カーテンコールには熱い拍手が送られた。[撮影:平尾正志]
 
初日の舞台芸術公園では、「開幕式」も行われました。昼から降り続いた雨が奇跡的に止み、新緑が目に鮮やかな野外劇場前広場に、大勢のお客様が集います。
SPAC芸術総監督宮城聰の挨拶、そして難波喬司静岡県副知事のご祝辞に続き、駿府城公園で上演される『マダム・ボルジア』のSPAC俳優たちによる「開幕パフォーマンス」が、賑々しく行われました。
 
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「開幕パフォーマンス」の笛や太鼓の音色が広場に響く。[撮影:猪熊康夫]
 
開幕式の後は、いよいよ宮城聰が演出するSPAC作品、『ふたりの女 平成版 ふたりの面妖があなたに絡む』を野外劇場「有度」で上演。
 
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[撮影:猪熊康夫]
 
廃材の柱を組み上げた舞台美術が、今回も見事に再現されています。2015年と同じキャストで、それぞれに4年という月日を重ねた俳優たちが、唐十郎が紡ぐ珠玉のセリフ群を一層丁寧に観客に渡しているように感じました。宮城のサプライズ出演のワンシーンも健在!客席が大いに湧きます。俳優たちの吐く息が白くなるほどの冷え込みにもかかわらず、満席の会場は集中した空気に包まれました。
 
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[撮影:2枚目/平尾正志、その他/猪熊康夫]
 
終演後の冷えきった体には、カチカチ山の「フェスティバルbar」が待っています。今年は静岡おでんも登場!地元のおいしいものをほおばりながら、俳優たちとの語らいにも花が咲きました♪
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[撮影:猪熊康夫]
 
4月28日(日)

2日目の朝には、『Scala』の出演者によるワークショップを開催。講師を務めたのは、ブレイクダンスやコンテンポラリーダンスをバックグラウンドに持つメヘディ・バキさん、スタント俳優出身でアクロバットを得意とするルカ・ストゥルナさん。そして、『Scala』のアーティスティック・アシスタントとして来日した津川友利江さんも、通訳兼アシスタントとして30名の参加者とともに作品の“秘密”の一端に触れました。
 
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ウォーミングアップもユニーク。相手との距離を感じながら歩く参加者とメヘディさん。
 
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1人の体を数人で持ち上げる。体を委ね、浮遊しているような感覚を体験。
 
27日(土)・28日(日)、2日のみの貴重な上映となったのが、グランシップ映像ホールで上映されたドキュメンタリー映画『コンゴ裁判 〜演劇だから語り得た真実〜』。作品は、コンゴで起きている虐殺や環境汚染に関する「模擬裁判」を記録したドキュメンタリー映画。国際企業によるレアメタル争奪戦により、地元住民の土地は奪われ、河川が汚染され、民族紛争や貧困による様々な犯罪の連鎖が起きている。そして加害の一端に、携帯電話などの電子機器を消費する私たちの生活がある、という極めて重い事実が観客に突きつけられました。そしてフィクションである演劇が、実社会における真実を炙りだす役割を持ち得ることも実感しました。
 
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[カンパニー提供写真]
 
4月29日(月・祝)

『Scala』は、最終日も満員の客席から惜しみない拍手が送られ、終演後には出演者全員によるアーティスト・トークが開催されました。
 
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[撮影:平尾正志]
 
お客様には、アーティストに聞いてみたいことを「質問カード」に書いていただき、宮城がその質問をアーティストに投げかけていきます。驚くほどたくさんのカードが寄せられた中で、7人のバックグラウンドに関する質問に、サーカス、アクロバット、スタント、ブレイクダンス、演劇、さらにクライミングやボクシングなど、パフォーマーたちが自身の表現の源となっているフィールドを紹介。様々なテクニックとアイディアがこの作品に結集していることが改めて知れました。
 
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「私たちは異なる道をたどってここに集まった」、そう話す出演者たち。[撮影:平尾正志]
 
演劇祭前半の最後を飾ったのは、27日から舞台芸術公園の屋内ホール「楕円堂」で3公演を行なった韓国の『メディアともう一人のわたし』
 
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水を湛えたセットの両側で演奏する俳優たち。[撮影:猪熊康夫]
 
前半、メディアが後に夫となるイアソンたちと遊ぶ幼少時代は、どこまでも無邪気でコミカル!しかし幸福な時間も束の間、ストーリーの大胆な省略と飛躍が、裏切った夫への復讐に駆られるメディアの感情を加速させていきます。嫉妬に狂うメディアと、子どもたちへの情愛に苦しむもう一人のメディア。二人の俳優の感情が頂点に達し復讐が成し遂げられた時、世にも恐ろしい場面にも関わらず涙する観客もちらほら。日常では経験しないような激情に引き込まれ、観る者の心もまさに“引き裂かれる”ようでした。韓国演劇の底力を感じる舞台で、前半戦が終了しました。
 
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楕円堂の扉を開け放ったラスト、赤いセットに新緑が映える。[撮影:猪熊康夫]
 
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演出家のイム・ヒョンテク氏や韓国チームと。お疲れ様でした![撮影:平尾正志]
 
演劇祭は早くも後半戦に突入!3日からはいよいよ「ストレジシード」も始まり、ジャンルはさらに広がります。まだ演劇祭のチケットも好評発売中!残りの日程もどうぞお見逃しなく。

(テキスト:制作・坂本彩子)

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