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2015年4月6日

『メフィストと呼ばれた男』稽古場ブログ2 出演者インタビュー阿部一徳

出演者インタビューを通じて、『メフィストと呼ばれた男』の登場人物や、作品の魅力、舞台裏を紹介していきます。

トップバッターは、主役クルト・ケプラーを演じる阿部一徳です。


◆阿部一徳◆

登場人物紹介◆クルト・ケプラー
当時ドイツで最高の俳優と謳われた男。当たり役はゲーテ『ファウスト』に登場する悪魔「メフィストフェレス」。ナチス・ドイツ政権下、劇場と芸術を守るためと信じ、敢えてベルリンの国立劇場芸術監督に就任するが、次第に時代の波に飲み込まれていく。

Q. 阿部さんの演じるクルト・ケプラーはどんな人物ですか。
 まず、天才!それが、今回この役を演じる上でなかなか大変です。それから役作りでは、彼の中心は「芸術至上主義」ということを一番考えています。稽古を重ねていく中で気付いたのですが、彼は国を代表する劇場の芸術監督として、当然政治的なことにも巻き込まれ、そこで葛藤するけれども、彼にとって政治は実は二の次で、やはり一番大事なのは、芸術、演劇なんです。とてつもなく演劇が好きで、一緒に芝居をやっている仲間への思いも深い。どんな状況でも演劇を続けていこうとする想いや、仲間の命を助けようと長年働きかける執念深さは、ある意味恐ろしくもあり、うらやましくもあります。
 最初は僕も、この男はすごく悪い人なのかな、自分の出世のためにあらゆることを計算し、人を利用しているのかなとも思っていました。彼には強烈な上昇志向があるので。でも、根のところではすごくピュアで、熱い人なのだという気が、今はしています。ただ、そういう彼の行動や態度は、普通の人の倫理観や価値観の尺度では、おさまらないところにあるので、周りの人たちは劇団の仲間も含め、誤解していくのかもしれません。今までに出会ったことのない役なので、毎日稽古していてとても面白いです。


【稽古風景より(右は若手劇団員アンゲラを演じる山本実幸)】

Q.この作品の見どころを教えてください。
 お話の内容は、芸術と政治ですが、僕たち俳優から見てもすごいなと思うほどの「演劇ラブ」が見どころです。この、演劇一筋に突き進んだものは、なんなんだろうというくらいにすごいので、そういう芸術家のありようも見てもらえたらと思います。
 登場人物たちの様子は、演劇をやっている人には、自分たちのことのように思えて、落ち着いて見てはいられないかもしれません。シェイクスピアやチェーホフといった、いろんな作品が劇中劇で出てくるので、演劇好きには本当にたまらない作品だと思います。
 それから、これは当日劇場に来てのお楽しみですが、木津さんの空間構成も見どころです。公演は3回だけですが、一度観ただけでは味わい尽くせない面白さがあるので、3度見てほしいです(笑)


【稽古風景より 劇中劇でハムレットを演じるクルト役・阿部】
【(左はハムレットの母ガートルードを演じるリナ役・鈴木麻里)】

Q. 社会派の骨太な作品をリアリズムで作るのは、宮城&SPACにとって新たな挑戦です。今回、阿部さんも新たな挑戦がありますか。
 今回はストイックな役で、劇中劇ではハムレットも演じるので、締まった身体にしようと、人生初の大減量中です!目標はマイナス12キロ。今マイナス9キロまできたので、本番までに達成できそうです。今年1月に出演した『グスコーブドリの伝記』のときと比べると、かなりしゅっとした阿部一徳を見ていただけるのではないかと思います(笑)

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演劇祭開幕まであと3週間、関連企画の連続シンポジウムもいよいよスタートします。
4月10日の〈開催直前シンポジウム〉は、『メフィストと呼ばれた男』を、「政治の季節」という論点から議論していきます。

ゲストの高田里惠子さん、片山杜秀さんに加えSPAC文芸部3人も登壇し、「演劇と政治」の関係をめぐって、熱い夜となること間違いなしです。

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〈開催直前シンポジウム〉
抵抗と服従の狭間で ―「政治の季節」の演劇―
4/10(金) 19:30~21:30
スノドカフェ七間町 (静岡市葵区) 【定員30名】
登壇者:片山杜秀(音楽評論家、思想史研究者)、高田里惠子(ドイツ文学研究者)、
大澤真幸、大岡淳、横山義志 (以上、SPAC文芸部)

◆ご予約:
電話 SPACチケットセンター Tel.054-202-3399
(受付時間10:00~18:00)
http://spac.or.jp/15_symposium.html
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SPAC新作『メフィストと呼ばれた男』
4/24(金)・4/25(土)・4/26(日)
静岡芸術劇場
http://spac.or.jp/15_mefisto-for-ever.html
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