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2015年4月21日

『メフィストと呼ばれた男』稽古場ブログ7 出演者インタビュー本多麻紀

出演者インタビュー、第7回は、女優ニコルを演じる本多麻紀です。


◆本多麻紀(ほんだ・まき)◆

登場人物紹介◆ニコル
野心家で左翼よりの女優。

Q. 本多さんの演じるニコルはどんな人物ですか。
 阿部さんが演じる主人公の俳優クルトと10年近く一緒に演劇をやっている同僚の女優です。父親が世界的に有名な劇作家で、超セレブな女優で野心家という設定です。幼い頃から海外に行き、コネも世界中にあり、望んだものは何でも手に入っただろうし、勉強も出来た。もう、小市民の私からしたら、敵のような存在です(笑)。今までいろんな役を演じてきた中で、今回は性別も同じで、年齢も近いですが、超セレブでお嬢様なニコルの価値観や、その時々の選択は、私とはことごとく違います。最初は本当にやりにくい、難しい役だなと思っていました。けれども、どうして彼女がそういうふうに行動し、そう言わざるをえなかったか、彼女が彼女なりに抱いていた切実さを考えるうちに、彼女の生き方の真っ直ぐさ一生懸命さには、共感できると思いました。とはいえ彼女の複雑で多面的なところは、自分と役との距離感を大事にしつつ、探っています。


【稽古風景より】

Q. 1932年から45年までのドイツの国立劇場の物語で、同時に戦争時代の話でもありますが?
 台詞はすごいリアルだなと思うところがあります。登場する政治家の台詞には、具体的なことは何ひとつ言っていないのに、それなのに人々を鼓舞していくような台詞があって、今の日本の或る種の政治的発言にもすごく似ている気がします。そういうところは、ニコルにもあります。彼女は、すごく頭がよくて、意志も強く、なんでも自分でできて、周りの空気に流されるような人を半分からかっていたような人です。けれども彼女のような人でさえ、ある事態が自分に身近に迫った時、それに乗っかり、率先して極端なところにまでいくことがある。そういうところは、今の日本や私たちの状況にも似ているのではないかと思い、すごく怖いなと思います。


【稽古風景より】

Q. お客様にはどんなところを観てもらいたいですか。
 この作品は、そんなふうに今の日本とシンクロしている部分があると思うんですけれども、実はキャスティングも何気にそれぞれの俳優とシンクロしている部分があるような気がしています。というのは、私の場合も、野心のある超セレブお嬢という役は、距離を感じる反面、ニコルという役に内包されているある部分には、同じ女優として、苦しいほど共感してしまう部分があります。出演者それぞれが、演じる役に妙にハマる部分があって、その人が、その役の台詞を話している姿を見て、時として非常にいたたまれなくなったり、ぐっときてしまったりすることがあります。「私にこの台詞言わせるんだ、エグイ!」というような部分も(笑)演出の宮城さんはそういうことまで見抜いてキャスティングしているのかなと思います。役者が役者の役を演じる作品なので、いろいろ想像してしまいますよね。お客様には、そんなところも楽しんで観ていただけたらと思います。


【稽古風景より】

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SPAC新作『メフィストと呼ばれた男』
4/24(金)・4/25(土)・4/26(日)
静岡芸術劇場
http://spac.or.jp/15_mefisto-for-ever.html
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4/10演劇祭開幕直前 『メフィストと呼ばれた男』関連シンポジウム
【抵抗と服従の狭間で―「政治の季節」の演劇―】の動画を公開しました!
http://spac.or.jp/15_symposium.html
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