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2016年4月20日

『イナバとナバホの白兎』~新作誕生までの道のり~vol.7

『イナバとナバホの白兎』初日まであと2週間をきりました!
衣裳も少しずつできあがり、衣裳つきの稽古も始まりました。

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今回はSPACシアタークルー平塚敬子さんが書いてくださった、本作品の重要な要素のひとつ「イナバの白兎」のおはなしについてのレポートをご紹介します!
実は意外と知らない人も多い「イナバの白兎」のおはなし。
それを詳しく、おもしろくまとめてくださいました↓↓↓

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子供の頃一度は読んだり聞いたりした「イナバのしろうさぎ」絵本には大きな荷物を担いだ大黒さまが痛い痛いと泣いているかわいいウサギちゃんを助けるシーン。
「うさちゃんかわいそう、え~んえ~んないてるぅ~」
「やさしいおじさんがたすけてくれてよかったね」
子供心に思う事はこんなところでしょうか。
そして大人になって読み返してみると……。
あらあら何やら複雑な大人の事情があったようで。

現存最古の古典文学「古事記」ごちゃごちゃ神様の名前が出て来て突然新しく神様が成ったり生まれたり(成ると生まれるは意味が違うので)
そうこうしていると例のイナバのしろうさぎの場面。
実は大きな袋を担いでいた神様は兄弟達が結婚相手を探しに行く為、兄弟達の荷物を担がされてちょっとしたパシリ役?
ワニに毛皮をむしられて痛がっているウサギに「海水に入ってそのあと陽にさらせ!」と意地悪(本当は意地悪ではなく1つの治療方法だった)をした兄弟神達、八十神といいます。その後荷物を担がされていた為遅れて来た神様オオナムチ(のちのオオクニヌシ)が「真水に入り蒲の穂の上で寝転ぶように」と優れた治療方法(八十神が教えた治療方法より有効な)を教えてウサギは無事元通り、めでたしめでたし。

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「稽古の様子:ワニの上を渡るウサギ」

しかしウサギもウサギ、元はと言えばワニ(ワニは本来日本には生息してないのでワニだか鮫だかわからない霊獣)を騙して島から海岸まで渡って来たのでしたよね。
騙したワニに皮を剥かれても当然!
世界各地東アジアからニュージーランド等、には似たようなお話しが存在していて、いわゆるずる賢い小動物が大きな動物を騙すというお話。大体それらのお話は最後に小動物が首尾良く逃げるか食べられてしまってthe end。では何故イナバの白兎は逃げもせずワニに食べられもしなかったのでしょうか?
それは、古事記の中で「イナバのしろうさぎ」の場面は物語の通過点、このウサギさんがオオクニヌシに「ヤカミヒメと結婚出来るのは兄弟ではなくあなた様です」とお告げをしなければならずワニに食べられてしまったら神々から続く天皇への道を説く物語が閉ざされてしまうからなのです。
しかし所詮物語ですからどんな場面でも当時はあまり深い意味等なかったと思われますが……。
後の人々がその時代時代に応じて都合良く解釈したり、また悪用したり、時代の波に翻弄された古事記。
その「イナバのしろうさぎ」がまさか静岡の駿府城公園野外劇場で『イナバとナバホの白兎』となってSPACが演じるとは!神々様もビックリ!

今回は一から俳優達が台詞を創り配役まで創作過程から決まっていったとか?今までとは一味違う宮城ワールドが展開しそうです。
駿府城公園野外ステージ満天の星空の間に間に神々がこっそり観劇しているかも知れませんね、そうそうナバホのご先祖様達も。あっ、もしかしたら四日間の間には曇りの日も雨の日も……雲の間に間に、雨の間に間にチラチラ観劇でしょうか。私個人的には雨のステージが大好きです。ライトの当たった雨がキラキラ輝き舞台がより一層華やかで且つ神秘的で☆☆☆☆☆
駿府城公園で皆さんと『イナバとナバホの白兎』をワクワクドキドキしながら楽しみましょう!
ウサギは白じゃなかった?野うさぎだから……?ウサギは本当は神の化身?オオクニヌシを試した……?
~~謎に満ち溢れ分からないことがあればあるほどおもしろい~~

SPACシアタークルー 平塚敬子

参考資料として
からくり読み解き古事記 山田 永著
イナバノシロウサギの総合研究 石破 洋著

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ふじのくに野外芸術フェスタ2016
フランス国立ケ・ブランリー美術館開館10周年記念委嘱作品
『イナバとナバホの白兎』
5/2(月)~5(木・祝)
駿府城公園 紅葉山庭園前広場 特設会場
◆公演の詳細はこちら
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