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2019年10月24日

『ペール・ギュントたち』稽古場ブログ#2

『ペール・ギュントたち~わくらばの夢~』は、インドネシア、スリランカ、日本、ベトナムから様々な分野で活躍をするアーティストたちが集い、インドネシア〜東京〜静岡と『ペール・ギュント』同様に、旅をしながら創作が行われています。

今回のブログでは、演出のユディさんがこの作品を構想するキッカケとなった、インドネシアのフローレス島にあるララントゥカについてご紹介していきます。

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インドネシアは、なんと!1万3000以上の大小の島からなり、人口は2億5千万人(世界第4位)にもおよびます。ララントゥカは、ポルトガル語で「花」の意を持つフローレス島の東端に位置しています。


▲ララントゥカ の空港に到着時、歓迎される一行

遡ること16世紀の大航海時代、香辛料を求めてこの地域にやって来た、オランダやポルトガルの植民地となった歴史があり、インドネシア全体の約9割近くがイスラム教徒なのに対し、ララントゥカは8割以上カトリック教徒が占めています。
植民地時代の影響が色濃く残るこの小さな町は、諸外国から持ち込まれた宗教、国家や政治の介入によって、伝統的な信仰や文化の存続が危ぶまれたこともあったようです。そして、未だにそれらが歩み寄ったり衝突したりし続けながら、町の社会自体を作り上げているということを目の当たりにしたユディさんは、今回の作品の着想を得たと語ってくれました。

伝統的な文化や風習に、新しい技術や価値観が混ざり合う様子は、今世界中で起きていることだと考えたユディさん。グローバル化やインターネットの発達で、国境や言語を超えたコミュニケーションが容易になり、新たな価値観が複雑に交錯する今の世界に身を置く私たちと、旅を通じて新しい世界と己に対峙するペール・ギュントの姿に共通性を見出しました。

旅の出発点となったララントゥカには、共同創作アーティストたちも2週間ほど滞在して、地域住民との交流や、近隣の島にある小さな村で行われている儀式を体験。SPACからは俳優の美加理が参加しました。


▲ララントゥカでのワークショップの様子(中央:美加理)

地元で表現活動を行う人たちも参加したワークショップでは、お互いをより深く知るための話し合いが多く行われました。それぞれが住む国や地域が抱えている社会の状況などもそこで共有され、共同創作アーティストの一人で、スリランカ出身のダンサー、ヴェヌーリ・ペレラさんからは、今年4月にスリランカ国内で起きた同時爆破テロの話があったそうです。まだ記憶にも新しいこの悲惨な事件は、ヴェヌーリさんの故郷でもあるスリランカ最大の都市コロンボの歴史的なカトリック教会も標的となりました。


▲中央で立っているのがヴェヌーリさん

多種多様な民族や宗教から成り、近年の急速な経済成長によってさらに複雑さを増すアジア。この状況を征しようと暴力的な動きが各地で発生し、ニュースでも毎日のように目にするようになりました。

ワークショップでこうした背景を共有していくうちに、国籍やこれまで生きてきた背景は皆違っていても、問題の核は全て同じなのではないか、という結論に至ったそうです。

ララントゥカでの最終日、海を背景とした野外ステージで成果発表が行われました。その海岸はかつての王宮と、島に流れ着いたマリア像が祀られている教会が隣りあい、島の歴史と文化を象徴する場所。普段はプロの俳優による演劇と出会う機会のない現地住民も多く来場し、最後まで集中して観ていたそうです。


▲地元のアーティストも参加したワークインプログレス上演会の稽古

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このように、ララントゥカからはじまった創作の旅を通じて、個人の経験や社会が抱える様々な状況を見つめ直し、19世紀ヨーロッパで書かれたイプセンの『ペール・ギュント』へと織り込みながら、新たな物語を紡ぎ出していきます。静岡の稽古場でも、たくさんの話し合いが行われ、ララントゥカ での様子を収めた映像を観たりアイデアを共有しながら、日々シーンが作り上げられています。

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SPAC秋→春のシーズン2019-2020 #2
『ペール・ギュントたち〜わくらばの夢〜』
2019年11月9日(土)、10日(日)、16日(土)、17日(日)
各日14:00開演
会場:静岡芸術劇場

原作: ヘンリック・イプセン
訳:毛利三彌

上演台本・演出: ユディ・タジュディン

共同創作:
ウゴラン・プラサド(ドラマトゥルク)
川口隆夫(パフォーマー/ダンサー/振付家)
ヴェヌーリ・ペレラ(振付家/ダンサー)
美加理(俳優)
ムハマッド・ヌル・コマルディン(俳優/ダンサー)
森永泰弘(サウンドアーティスト/作曲家)
グエン・マン・フン(ヴィジュアル・アーティスト)
アルシタ・イスワルダニ(俳優/パフォーマー)
グナワン・マルヤント(俳優/作家)

大内米治、佐藤ゆず、舘野百代、牧山祐大、
宮城嶋遥加、若宮羊市(俳優〔SPAC〕)

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