ブログ

2022年5月1日

悠久の森で過ごす幻想体験 『星座へ』 制作レポート

毎年海外から様々な舞台芸術作品の招聘を行なっている「ふじのくに⇄せかい演劇祭」。今年はコロナ禍において南アフリカ共和国で生まれた作品を、SPACとのコラボレーションで日本初上演します!その名も『星座へ』(原題:Constellations)。
静岡市内の「日本平の森」を舞台に様々なアーティストと出会う回遊型の演劇作品です。日が沈んだあと、会場内に灯されたランタンの明かりのもとで、ダンサー、ミュージシャン、詩人など、多彩なジャンルのパフォーマンスをお楽しみいただけます。なんと、お客様には森の中を歩いていただくんですよ!今回は、『星座へ』担当制作の坂中が、作品の創作過程をレポートします!会場の雰囲気を事前に知りたくない!という方は観劇後にお読みください。

この作品は、新型コロナウイルス感染拡大で世界が混乱していた2020年に、南アフリカ気鋭の劇作家・演出家で、インスタレーションアーティストとしても活躍するブレット・ベイリー氏によって構想されました。深刻なパンデミックとロックダウンに苦しめられていた南アフリカにおいて、芸術や自然、また人間同士の繋がりを失わない為に出来ることは何なのか。ベイリー氏がコロナ禍で向き合った課題でした。

 

 
「私が住んでいるのは、都会から離れ、小さな森が広がり、小川が流れている場所で、幸いにもこの作品を創るのに適した環境でした。俳優、ミュージシャンなど声を発するアーティストは、舞台に出る機会が奪われ、政府からの支援もなく、多くの舞台芸術家は窮地に立たされました。一方、観客は家の中に閉ざされ、芸術を鑑賞する機会も、自然や他者との繋がりも失いました。」(ブレット・ベイリー)
舞台を奪われたアーティストのため、自然や芸術、人との交流を奪われた観客のため、このような逆境を乗り越える一つの方法としてベイリー氏が創り出した作品。2022年、静岡に現れます。


▲出演者への手紙 (Letters Sent to Guardians)

出演アーティストに向けて、ベイリー氏は予め一つの「手紙」を用意していました。
手紙の冒頭には、作品タイトル『星座へ』に込められたベイリー氏の想いが綴られていました。作品の原題”Constellations”は、直訳で「星座」を意味します。ベイリー氏はこの言葉に、「光り輝く才能」、「特異で素晴らしいあらゆるものごとの繋がり」という意味を込めています。様々なジャンルのアーティストが作り出す異世界が夜空の下で繋がっていく、そんな想いがタイトルから伝わってきます。
 
−ルールに縛られない自由なパフォーマンス−
手紙の中に記されているのは、魔術的で神秘的なこの作品のコンセプトと、アーティストに自由で異世界に誘うかのようなパフォーマンスを求める、ということ。
『星座へ』日本版のキュレーターを務めるSPAC文芸部の大岡淳は、その高い要求に応えるアーティストを日本各地から招集し、星座のように繋がっていく一夜限りの宴を作り上げていきます。

 

会場となるのは、静岡市の南部にある日本平・有度山北麗の森の中。県有林で普段はボランティア団体が豊かな森づくりを目的とし、活動されています。今回は、そのフィールドの一部が会場として選ばれました。
作品において「森」は、パフォーマーと並び欠かせない一人の登場人物のようなもので、この場所は「森の中へ入っていく」体験にピッタリの場所です。


5月の本番に向けて、準備も着々と進んでいきます。各上演スポットに設置する丸太の椅子も、ボランティア団体の方が用意してくださいました。その数はなんと100個!並べられた丸太の木の香りに心が癒されます。


 
4月某日。出演アーティストと共に会場の下見を行いました。
会場内に設置される計9つの上演スポットをツアー。どのスポットにどのアーティストが待ち構えているのか、それは本番当日のお楽しみです!


 
日が落ちてからは、オイルランタンの明かり具合をチェックしました。写真ではお伝えしきれないほどの幻想的な灯火が上演スポットを包みます。

自然が作り出す環境は、パフォーマーが演技をしやすいよう設計された劇場とは全く異なります。地面に生い茂る草花や木々、鳥の音など、その場に適応し、環境を活かすことも求められ、その夜限りのパフォーマンスにつながっていきます。お客様の安全な動線を一歩一歩確認し、出演者、テクニカル、制作、全体をまとめ上げるキュレーター、それぞれの立場でこれから創り上げていく大自然の宴にイメージを膨らませました。

日が落ちると暗く、冷え込む森の中での開催となるため、お客様には懐中電灯、防寒着をお持ちいただくようお願いしています。
また、森の地面はぬかるむ所もあるため、トレッキングシューズや長靴でお越しください。

 
下見を経て、ベイリー氏と出演者、SPACスタッフチームとでオンラインミーティングも行いました。
日本側のチームでは、ベイリー氏からいただいた「手紙」で事前に作品コンセプトを共有し、現地の下見で得た情報とインスピレーションを持ち合わせてこのミーティングにのぞみました。
会場でのスタッフワークや演出方法など、気候や環境の違う静岡での開催に向けて、情報共有は欠かせません。出演者は各々で練った作品のプランを説明したり、質問したりと、ディスカッションを通して、作品へのイメージを膨らませ、より深く作品を理解する場となりました。
ちなみにこのミーティング、通訳は坂中が務めました!日本語と英語、二つの言語が、頭の中を左から右へ、右から左へ行き交う中での責任ある仕事にヘトヘトになりましたが、アーティストとの想いをつなぐ橋渡しの役割が出来ました。


▲チラシ画像はこちら(クリックすると画像が開きます)

公演内容を広くお知らせすることもSPAC制作部の大切な仕事の一つ。チケットの発売に合わせてチラシの作成も行いました。
森の中で舞台芸術を楽しめる貴重な機会。作風に合わせたデザインを考えながら、編集ソフトで必死に作成しました。どうですか!?この素敵なデザイン!
チラシは静岡市内のアウトドア用品店、スポーツ用品店を中心に配架していただきました。SPACのことを応援してくださっている方も、SPACのことを初めて聞いたという方にも、多くの快いご協力をいただいて、地元の多くの方との強い繋がりに努力が報われます。

おかげさまで好評をいただき、チケットも完売しました!只今はキャンセル待ち対応のみとなっております。

制作部・坂中


 
====================
『星座へ』

公演日時:2022年5月6日(金)、5月7日(土)、5月8日(日)
集合場所:静岡芸術劇場・各日17:30
会場:日本平の森
上演時間:約220分(移動を含む)※本編 約120分
上演言語/日本語/字幕なし
座席:全席自由
コンセプト ブレット・ベイリー
日本版キュレーション 大岡淳
製作 SPAC-静岡県舞台芸術センター
協力 サード・ワールド・バンファイト
初演 南アフリカ共和国・ステレンボスのワイン農園「スピア―(Spier)」にて(2020年11月)

★公演詳細はこちら
====================