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2022年6月15日

悠久の森で過ごす幻想体験 『星座へ』 振り返りレポート

2022年の「ふじのくに⇄せかい演劇祭」のトリを飾った作品、『星座へ』。
演劇祭終了から1ヵ月ほど経過しましたが、、今回のブログではその振り返りレポートを本作の担当になったSPAC制作部新人・佐藤美咲がお届けします!

ところで、『星座へ』というタイトルを聞いて、皆さんはどんなことを想像しますか?
夜空に浮かぶ星座ではないでしょうか。プラネタリウムのように空を見て、星座を観察する演目?と想像してしまいますよね。
しかもこの作品は回遊型演目となっており、会場は、「日本平の森」……森!?!?
一体どんな作品だったのか振り返っていきたいと思います。


●作品の初演は、南アフリカ共和国のワイン農園にて2020年に上演されました。この作品をどのように静岡で上演するのか?演出家のブレット・ベイリー氏の思いが綴られた創作過程レポートはこちらからお読みいただけます!

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公演当日、お客様には静岡芸術劇場に集合していただき、チャーターバスに乗って会場まで来ていただきました。

会場到着時に、青/赤/緑いずれかのカラーリボンが付いている座布団をお渡ししました。実はこの色は後ほど重要になってきます。そして、「ミーティングポイント」と呼ばれる森の入口まで歩きます。

「ミーティングポイント」では、ブレット・ベイリー氏、日本版キュレーションの大岡淳氏、そして、座布団のリボンと同じ、三色それぞれの色のツナギ服を着用したガイド俳優がお客様をお出迎え。リボンの色によってこれからグループ分けを行うのです。

まずは、ベイリー氏、大岡氏から挨拶があります。

それから、お客様はご自身のリボンと同じ色の服を着たガイド俳優達と1つの大きな円を作ります。ガイド俳優はそれぞれの色ごとに3人います。さらに3つのグループに分かれます。これからその小グループで「パフォーマンス・スポット」をランダムに巡るのです。

いよいよお客様はガイド俳優に導かれながら森の中へと入っていきます。

9つある「パフォーマンス・スポット」にそれぞれ1人ずつ、ランタンの火を守る「ガーディアン」が待っています。
各グループが異なる順番で、3つのポイントを巡り、各30分のパフォーマンスを体験します。
当日参加されたお客様も、自分が出会った「ガーディアン」は一体誰だったのか、はたまた、他のエリアではどんなことが行われていたのか気になりますよね!そこで、どんな出演者がいたのか振り返ってみましょう。

青エリア ガイド俳優:杉山賢、鈴木真理子、三島景太 

水沢なお


里見のぞみ



巻上公一 ※5/6、7のみ


国広和毅 ※5/8のみ


 

赤エリア ガイド俳優:武石守正、ながいさやこ、牧山裕大 

黒谷都


※5/7(土)に出演を予定しておりました山下残氏は、ご自身の事情により出演キャンセルとなりました。代わって、黒谷都氏に出演いただきました。

渡辺玄英


こぐれみわぞう


 

緑エリア ガイド俳優:加藤幸夫、山崎皓司、若宮羊市 

美加理(micari) 



宮原由紀夫 


辻康介 


 

気になるパフォーマーはいましたでしょうか??

『星座へ』は3日間の公演日があり、日によって気温も違えば、時間帯によって聞こえる虫の声が違い、その時、その場でしか見ること、感じることができないパフォーマンスとなっていました。青のエリアでは、蛙の大合唱が聞こえたり、小高く眺めのよいスポットがあったり。赤のエリアには、小さな沼の奥にパフォーマーが見えるスポットや、生い茂る竹林の情景が美しいスポットがあったり。緑のエリアには、大きな松の木が点在し、一面に松葉が広がるスポットがあったりします。色が違えば、出会うパフォーマーが違うだけではなく、見える景色や、体で感じるものも違っていました。ベイリー氏は、その場で生まれたエネルギーを大切に、そして、前日の収穫を翌日に活かしてほしいと指示していました。出演者の皆さんはアドリブを利かし、回を重ねるごとにパフォーマンスが深化していました。

森の中で過ごす時間は私にとっても初体験なことが多く、貴重な時間を過ごしている実感がありました。隣にいる人は、お互い知らない人だけれど、同じ未知なる体験を共有していて、知らぬ間に一体感が生まれていました。ベイリー氏が目指した、夢のようで、ミステリアスな時間が実現されていたように感じました。お客様が帰られる際に、ガイド俳優より、「素敵な夜をお過ごしください」という言葉がありました。その頭上を見ると、綺麗な星と月が光り輝いていました。一番星が綺麗に見えたのは最終日、曇り空が明けた夜空でした。綺麗な夜空を眺めながら、もう二度は見ることのできないパフォーマンスを既に恋しく思っていました。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
『星座へ』はSPACとして初めての部分が多かったこともあり、スタッフ・出演者全員が一体となって作ることのできた作品だと思います。日本版として、実際にベイリー氏とともに作品をリクリエイトできたことが、とても嬉しいことでした。
この作品に参加できなかった方も、参加してくださった方も、ぜひ今宵は夜空を見上げてみてください。星たちがきらきらと輝き、繋がっています。きっとそれは、私たち人間もそうなのです。
それでは、皆さま、今宵もよい夜をお過ごしください。

 (制作・佐藤美咲)