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2023年6月5日

<レポートブログ>『Dancing Grandmothers ~グランマを踊る~』制作レポ

今年のGW最終日の5月7日、「ふじのくに⇄せかい演劇祭2023」のラストを盛大に飾った『Dancing Grandmothers ~グランマを踊る~』
昼、夜2回の公演はどちらも大盛り上がり!終演時にはお客様も巻き込んで一緒に踊り、静岡芸術劇場がダンスフロアになりました。

世界で活躍する振付・演出のアン・ウンミさん率いるダンサーたちと、静岡に暮らす「グランマ」たちとのコラボレーションによる今回の舞台。その裏側には、沢山の人たちの短くも濃厚な協力があったんです。
今回はそんな空前絶後のダンス公演『Dancing Grandmothers ~グランマを踊る~』の創作風景を、担当制作の坂中がご紹介します!!


 
劇場内にいるすべての人をダンスの渦に巻き込んだエネルギーたっぷりのこの作品は、世界中で上演を繰り返しているアン・ウンミさんのヒット作の一つです。
実は『Dancing Midde-Aged Men』、『Dancing Teen Teen』と並ぶ三部作のうちの一つ。中でも本作は、踊りの中に生きてきた人生や歴史を感じる、温かく幸せに包まれる作品でした。
(アン・ウンミさんと『Dancing Grandmothers ~グランマを踊る~』作品紹介のブログはこちら

「韓国のピナ・バウシュ」と称され、世界中で活躍する振付・演出のアン・ウンミさんと、韓国、フランス、インドネシアから集結したダンサー、スタッフは総勢16名。ウンミさんを含む別の作品のワールドツアー中のカンパニーメンバー(写真右)は、なんと公演日の前日にフランスから来日したんです! 7時間の時差と14時間近くものフライトを終えて早朝に空港から直行で静岡芸術劇場でのリハーサルに取り組みました。その体力たるや!!

あらかじめカンパニーから送られてきた舞台の内容や必要な道具、資材のリスト(テクニカルライダー)をもとに、SPACはアン・ウンミさんたちの来日前からステージを作るための準備をしていました。韓国の学生のリアルをハートフルに描いた『XXLレオタードとアナスイの手鏡』の公演から、『Dancing Grandmothers ~グランマを踊る~』のリハーサルまでの2日間で、静岡芸術劇場の舞台はガラッと変貌を遂げていたんです。
先に劇場入りをしていたスタッフはアクロバティックなダンスに耐えられる床の質や、この作品に欠かせない色鮮やかな照明、映像、舞台装置の確認を限られた時間の中で入念に行いました。

左が『XXLレオタードとアナスイの手鏡』、右が『Dancing Grandmothers ~グランマを踊る~』の舞台の様子。全く同じ場所だなんて思えないですよね。

テクニカルスタッフによる舞台の確認と並行して、前日リハーサルでは静岡に暮らす「グランマ」たちとカンパニーの初対面。
本番を翌日に控えた限られた時間の中、アン・ウンミさんの的確な指示と、「グランマ」たちのエネルギッシュな対応力でみるみる内に静岡スペシャルバージョンの『Dancing Grandmothers 〜グランマを踊る〜』が仕上がっていくのでした。


 
ダンス経験のない「グランマ」も多い中、2時間の、しかも前日のリハーサルで作品を完成させてしまうこの作品。静岡に暮らす「グランマ」10人に対して、10人のダンサーがマンツーマンのペアになることでスムーズな舞台の進行を組み立てていたんです。

「グランマ」たちの手を引きながらステージ上の動きを確認するダンサーと「グランマ」との間には、常にアイコンタクトと笑顔が溢れていました。言葉が通じなくても、短時間のうちに言語や文化、世代を超えたつながりができるのは、ダンスならではのことなのかも知れません。
演出のアン・ウンミさんによって綿密に作り上げられた出演者全員の動線と、出演ダンサーたちによる的確なサポートによって、「グランマ」全員に事故や怪我なくリハーサルが進行しました。

そしていよいよ本番日!
今回初めて静岡芸術劇場にいらした方も多く、前日リハーサルの前には緊張の面持ちだった「グランマ」たちですが、開演が近づくにつれ「本番が待ちきれないっ!」といった雰囲気が舞台裏に充満していました。緊張もなんのその、楽屋ではお互いを励まし合いながら意気揚々と出演の準備をしている皆さんの姿は、真のパフォーマーそのもの。

ステージの上では緊張で固まりがちな僕はそんな「グランマ」たちの姿に憧れてしまうのでした。。。!

そして『Dancing Grandmothers ~グランマを踊る~』の幕が上がり、アン・ウンミさん、カンパニーのダンサーたちの華麗なる踊りが終始目を惹きます。

息を呑むアクロバティックな演技から、

コミカルで思わずクスッとしてしまうようなユーモアあふれる身体表現の数々。

 
アン・ウンミさんがこの作品の中で大切にしていることの一つは「対比」。

老いと若き、静と動、前半で魅せるカンパニーメンバーのしなやかで起伏に富んだダンスは、その後に登場する静岡の「グランマ」たちが盛大に踊り出すステージへ伏線を与えているかのようです。

そしていよいよ、静岡の「グランマ」がステージに登場する時がきました!カンパニーメンバーと2人1組になって登場した「グランマ」たちは、それぞれ思い思いのダンスを披露します。

リハーサル時からグランマに向けて、幾度もアン・ウンミさんは言っていました。
「グランマの皆さんはいるだけの姿、それ自体が美しいのです。きれいに踊ったり、激しく踊ろうと無理せず、ありのままの姿でいてください。」

ステージで光る「グランマ」たちの動きの一つ一つに、彼女たちの人となりやこれまでの人生、色鮮やかな音楽とステージの中で今を存分に楽しんでいる思いの全てが込められているようで、観ていると胸が熱くなりました。
 
そしてステージはクライマックスを迎え、ご来場のお客様へアン・ウンミさんからのメッセージが伝えられます
「元々この作品は最後にお客様にも舞台に上がっていただいてみんなで踊って締めます。
今回は感染症の対策もあるので、今日は客席で皆さんも一緒に踊りましょう!!」

お客様の盛大な拍手の中はじまった音楽と共に「グランマ」たちも再登場、お客様も手を振ったり、体を動かして大盛り上がり!

世代を超えた「グランマ」たちが、劇場にいるの全ての人をダンスの渦に包み込んでしまったのです!
静岡芸術劇場が壮大なダンスフロアに変貌した本作品。今年のGWと「ふじのくに⇄せかい演劇祭」を壮大に、熱烈に締めくくったのでした!

公演が終わった2日後、カンパニーの皆さんは次のステージに向けて日本を離れました。
世界中のステージでダンスの渦を巻き起こしているアン・ウンミさん。またお会いできる日を楽しみにしています。

(制作部・坂中季樹)

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『Dancing Grandmothers ~グランマを踊る~』
公演日時:2023年5月7日(日) 14:00/19:00
会場:静岡芸術劇場
上演時間:90分(途中休憩なし)
座席:全席指定
振付・演出:アン・ウンミ
製作:アン・ウンミ舞踊団、斗山アートセンター
共同製作:パリサマーフェスティバル
https://festival-shizuoka.jp/program/dancing-grandmothers/
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