これは、(公財)静岡県舞台芸術センター、SPACを調査している、大学院生による『イナバとナバホの白兎』を読者の皆さんと一緒に楽しむためのブログです!
『イナバとナバホの白兎』の注目ポイントやSPACの皆様が大切にしていることを、レポートします!
前回のレポートはこちらからお読みいただけます。
『イナバとナバホの白兎』は、10月19日(土)に一般公演の幕が上がりました!
今回は、初日の雰囲気をレポートしていきます。
開場から開演までの過ごし方
SPACの公演では、開演時間まで少し余裕を持って会場に到着することをお勧めします!なぜなら、作品をより理解したり劇場の雰囲気を楽しんだりすることができるからです。
静岡芸術劇場1Fのロビーでは、これまでの上演作品の写真や今年度の出演俳優の皆さんの写真、関連書籍を見ることができます。本公演では、9月21日(日)に行われたアートワークショップ(美術家の深沢襟さんと一緒にオリジナルの仮面をつくるイベント)で作られた仮面も展示されています。
また、物販では本作に関連したグッズやSPACのグッズが販売されています。さらには、中高生鑑賞事業「SPACeSHIPげきとも!」(以下、「げきとも」)で中高生に配布されているパンフレットも発売されており、作品のあらすじや解説などがイラスト、図を用いて分かりやすく掲載されています。
(私は、クリアファイルとステッカー、アクリルキーホルダーを買いました!)
図1 著者が購入したクリアファイルとステッカー、アクリルキーホルダー。HAHAHANO.LABOさんがデザインを担当。
図2 静岡芸術劇場1Fロビーの関連図書のおいてある本棚。本作の他に今年度の「秋→春のシーズン」で上演される作品に関する書籍が並んでいる。
受付を済ませ、2Fへ向かうと、まず芸術総監督の宮城聰さんがホール入り口前で出迎えてくれます。2F奥には、カフェ・シンデレラがあり、SPAC俳優・三島景太さんがプレトーク(観劇ポイントの解説)をされていました。この作品解説では、『イナバとナバホの白兎』の構成や各神話のあらすじ等が三島さん特有の語り口で解説されていました!三島さんの作品解説をたくさんの観客の皆さんが、カフェ・シンデレラで提供されているお菓子や飲み物を飲みながら聞いていたり、集中して聞いていたりしていました。
カフェ・シンデレラでは、各作品にちなんだお菓子が販売されます。今回は、「うさぎの上生菓子」のお抹茶セットとおだんご(あんことみたらしの2種)が販売されていました!これらを片手にパンフレットを読んで予習されている方も、何名かいらっしゃいました。
会場は、三島さんの解説の声、カフェ・シンデレラに立つSPAC俳優の方と来場された方のお話などたくさんの声で溢れていて、そろそろ舞台が始まる!という気持ちが高まる一方でした。
解説が終わると、いよいよ開演10分前。お手洗いを済ませ、客席へ向かいます。
今回は、前から3列目の真ん中の席を予約しました!お隣の方々は、初演からご覧になっているのか、初演と前回のお話をされていて少し羨ましくなりました。この方々だけでなくSPAC観劇の先輩方がたくさんいらっしゃいました。
開演5分前のアナウンスが流れ、少しずつ会場全体が開演前の集中した雰囲気になって行きます。しばらくすると、「ちょーん…」と拍子木が聞こえてきました。
近くから観るか、遠くから観るか、上から観るか
公演の内容や詳細については、これまでのレポートやSPACホームページ、SNSでご確認いただければと思います。
今回のレポートでは、私なりの見る場所によって異なる楽しみ方をシェアしていきます。
私は、稽古や「げきとも」公演も見学させていただき、バルコニー席や舞台から少し離れた場所でも拝見していました。(10月20日(日)の公演は舞台から11列目で観劇しました。)
近く、遠く、上から、の3視点で観劇した私の結論は、場所によって異なった気付きを得られるということです。言葉にすると当たり前のことですが、ここからそれぞれの気付き、楽しみを述べていきます。
①近くから観る
近くから観る楽しみは、細かな仕草や衣裳、仮面、演奏方法等をじっくりと楽しむことができることです。本作品の第1部、第2部では、舞台上がポールチェーンによって隔てられています。近くから観ると、ポールチェーンの内側で行われていることまで注目することができます。また、エピソードによって異なる配役にも着目することで、考えられることが増えるかもしれません。
②遠くから観る
遠くから観る楽しみは、舞台全体を観られることです!本作品は、すでに述べているように注目ポイントが多数あります。視界に舞台全体の動きを入れられるのであれば、どこか一点に注目していても全体的な動きや構造を捉えやすくなります。舞台全体を通した人やモノの移動を目で追いやすく、身体全体の動きを観ることができます。
③上から観る
バルコニー席での観劇は、遠くからも、そして少し上から舞台を見下ろす視点となります。本作品では、上からの視点でも舞台全体を奥行きも含めて楽しむことができるのです!もちろん、前から観ても奥行きは分かりますが、上から観るとより奥行きを感じて舞台全体を構造的に考えられます。舞台をどのように使っているのか、何が逆転しているのか、等を考えるには、上から観ることが私は分かりやすいと感じました!
本作品では、遠くや上から地図のように舞台を眺めて楽しむこともできれば、近くで細かな人やモノの動き、衣裳、仮面の装飾などを楽しむことができます。
是非ご自身の興味や好みに合わせて座席を選んでみてくださいませ!
公演後の楽しみ
SPACの公演は終演して終わり、ではありません!
終演後もカフェ・シンデレラでは飲み物やお菓子が販売されています。「カフェ・シンデレラで逢いましょう!」という企画では終演後カフェ・シンデレラに出演した俳優の皆さんとお話することができます。
実際に身につけていた仮面や衣裳を持って、登場されるので仮面の裏側や衣裳の実物を見ながらお話をすることができます。
私は、河村若菜さん演じるビーバーの仮面や本多麻紀さん演じるクモ女の仮面の裏側を拝見しました!ビーバーの仮面は鼻の穴から前を見ていたり、クモ女は煙草の煙を吐いていたり、初めて知ることばかりでした。
その他、公演ごとに異なる企画が行われています。10月20日(日)には、アフタートークが行われました。宮城さん、第3部の台本を執筆された久保田梓美さん、出演者のながいさやこさん、野口俊丞さん、吉見亮さんが登壇し、創作エピソードや好きなシーン等をお話されていました。第3部の久保田さんの台本はとてもシンプルなもの(あえてシンプルにされたそうです。)で、それらを対位法等を駆使して俳優や宮城さんの手によって演劇的表現に広げたエピソードやナバホ族の資料を翻訳する方を含めた多様な関係者の方が、それぞれの方法で深化させたエピソードがとても興味深かったです。
今後の公演では、SPAC創作・技術部の方が舞台上の美術や照明、音響、衣裳等を解説するバックステージツアーが開催されるそうです!(※要予約、定員有)
今後は11月頭まで静岡公演、12月には浜松公演、沼津公演があります。
この機会を逃さないよう是非ご覧いただけると嬉しいです。
また、もう観劇された方でも少しずつ変化している部分があるため、複数回目でも楽しめる作品ではないかと考えています。(私自身は、3回拝見しても飽きずに見ています。)
そして、可能であれば時間に余裕を持って、カフェ・シンデレラでお茶を飲みながら感想を共有したり、俳優の皆さんとお話したり、舞台の秘密を探ったり、より作品の楽しみを広げた対話が生まれると、最大に演劇、劇場を味ってみてはいかがでしょうか。
村上瑛真(静岡文化芸術大学・大学院2年)
秋→春のシーズン2024-2025
#1『イナバとナバホの白兎』
<静岡公演>
2024年 10月19日(土)、20日(日)、27日(日)、11月3日(日祝)、4日(月休)、9日(土)
各日14:00開演
会場:静岡芸術劇場(グランシップ内)
<浜松公演>
2024年 12月7日(土)13:30開演
会場:浜松市福祉交流センター ホール
<沼津公演>
2024年 12月21日(土)13:30開演
会場:沼津市民文化センター 大ホール
上演時間:110分(予定)
日本語上演/字幕あり(英語、フランス語、ポルトガル語、日本語)
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*公演詳細は↓バナーをクリック
*それぞれのポスターをクリックすると、2016年(左)・19年(右)上演時のブログをご覧いただけます(2016年初演時の文芸部・横山義志によるパリ日記はこちら)。