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2014年2月1日

真夜2014【8】 出演者インタビュー パック:牧山祐大

『真夏の夜の夢』ロングラン公演は、おかげさまで順調に、
公演を重ねています。

さて、今回からは出演者インタビューと題し、
出演者総勢24人が
この作品のあちこちにちりばめられた魅力的な言葉やシーン、
創作の裏話などをご紹介していきます。

それでは『真夏の夜の夢』ということで、
「真夏」の「ま」から始めてみます。

トップバッターは、いたずら好きの妖精パックを演じる
牧山祐大です。

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牧山祐大
パック:牧山祐大(まきやま ゆうだい)
茨城県出身 B型

——牧山さんが演じる「パック」の魅力を教えてください。
 一言で言ってしまえば、「のー天気」なところかな。というのは、シェイクスピアの原作では、パックがこの作品全体に対して負っている部分はすごく大きいんです。パックのセリフには皮肉や含みが多くて、そこには書いて演じもするシェイクスピアの闇の部分がにじみ出ている。けれども、野田さんの潤色では、パックの役を乗っ取るメフィストフェレスという原作にはいない登場人物が、そういう要素をほとんど持っていってしまう。だから、野田さん潤色のパックは、お約束から切り離された役者のように、「台本なんて気にしないでいいんだよ、舞台を面白くしちゃえばそれでいいんだよ。」みたいな感じでいられる存在だと思うんです。重荷から解放されて「のー天気」というか、ほんとうにそれだけに特化できているという気がします。
 そもそも、原作のパックがあそこまで狂言回しに徹することができるのは、自分が事件を引き起こしたり解決したりしても、自分自身には事件が起こらないからだと思うんです。でもそんなパックにも本当は、「なにか事件に巻き込まれたいなぁ」っていう、言えずに呑み込んだ言葉があるんじゃないかと思うんです。だから、野田さん潤色で、メフィストに役を取られたパックは、そこで必死になって自分を取り戻そうとしているよりも、むしろその状況を楽しんでいる。自分の役を取ったメフィストと、ダジャレ合戦していられるのも、そういうことなんじゃないのかなって思います。

——そういえば、牧山さんが演じるパックには、いくつか物真似ネタもありますよね。あの辺はどんな感じでやっていますか。
 今回は、あくまでもパックとしてやっています(笑)パックだったらこういうことをして遊んでしまうのではないかという感じで。2011年の初演の時には、自分が役者として、お客さんに受けて笑いを取りたいという思いがあったけれども、今はそういう欲が消えた感じがします。
パックはシェイクスピアの登場人物の中でも、皆が憧れるアイドル的存在で、お客さんの中にも固定したイメージがある役です。初演の時には、自分がパックを演じることの責任を重く考えていて、それにすごくとらわれていた。けれども、今回はパックのことをいろいろと考えながらも、気負わずにやるべきことをやるという感じでのぞめています。それというのも、野田さんの潤色には、そういう神のような位置に置かれてしまったパックを解放してあげようという思いがあるのだと、気づいたからです。

——『真夏の夜の夢』の中で、一番印象深い台詞は?
 パックが、オーベロンに「自信は?」と聞かれて、「ない!」と答える、この一言です。メフィストの仕業によって、とうとう妖精たちの住む森が危機に瀕した時、妖精の王オーベロンは、パックに命じます。森に迷い込んだ若い恋人たちを眠らせろと。そこでパックは自信を問われて、「ない!」と答える。たぶん、狂言回しで居続けるシェイクスピアの原作のパックだったら、自信は「ある」と答えるところを、野田版パックはそうは答えない。さっきの話とつながるけれども、この「ない!」っていう返事で、パックはおちゃらけず、けれんもなく、前向きに、今自分には自信がないんだと素直に言葉にした。パックは自分が事件に巻き込まれて、その状況を楽しみながら、今まで言ってみたかったけれども言ったことのない言葉を、初めて言えたという気がするんです。気のせいかな?(笑)
 原作では最後の締めにパックが一人でしゃべる観客に向かっての口上も、野田さん潤色では、何人かの登場人物たちで、かわるがわるに言うことになっています。宮城演出でこの口上は、また少し違う演出がされているんですが、このシーンのパックは全くしゃべらずに、舞台の真ん中の空中に浮いています。この位置に無言で存在しているというのは、野田さんの手によって、重責から解放されたパックが、『真夏の夜の夢』という作品の中で純粋に生き生きと存在できたことの証になっている気がします。だから自分の一番の見せどころはと聞かれたら、この最後のシーンですね。

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出演者インタビュー第1回、いかがでしたでしょうか。

牧山の2011年初演時のインタビューはこちらで読むことができます。

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