ブログ

2014年3月8日

真夜2014【20】 出演者インタビュー そぼろ:本多麻紀

『真夏の夜の夢』出演者インタビュー、
第13回は、そぼろ(シェイクスピアの原作ではヘレナ)を演じる本多麻紀です。


そぼろ:本多麻紀(ほんだ まき)
東京都出身 B型

–本多さん演じる「そぼろ」は、鑑賞事業で観に来る中高生に大人気ですね。再演にあたり、自分と作品との関係で何か変化はありますか?
 初演と比べて何かを大きく変えているつもりはないですが、そぼろにはあまりにも共感する台詞が多くて、初演は自分にそぼろを近づけてしまった部分が結構あったかなと思います。だから、今回はそぼろと自分自身との違いを気をつけようと思ってやってはいますね。
 たとえば、そぼろはコンプレックスをかかえて自分を卑下する人間でありつつも、諦めずに元恋人を追いかけちゃう。でも、私は別れた恋人をそぼろのように追いかけたりしないと思うんです。「くそー、なんで私じゃなくて、あの子にいっちゃうの?」っていう心の中でぐるぐるうずまく想いは同じようにありますけどね。そういう自分との違いや、そぼろと彼女の親友かつライバルの「ときたまご」との、恋愛観の違いなんかも今回は意識しながら演じています。
 そういえば今回、いろんな人の意見や恋愛事情を聞いていく中で、世の多くの女性が無意識のうちに、もしくは意識的に異性に対して「心のワンクリック」(ちょっとモーションをかける)をするテクニックを持っているという話になったんです。デミさんが、そぼろという恋人がいたのに、ときたまごに心を奪われたのは、ときたまごも多くの女性のように、彼に「心のワンクリック」をしちゃったのかもしれない。でも、そぼろはそんなテクニックを持ち合わせてないことを自覚していて、ときたまごに「どんな手管でデミさんの心を自由に手玉にとるの?」って尋ねる。また、それを恋のライバルに素直に聞くっていう、その心の裏側のことを考えると、いたたまれないそぼろの恋心…ってね。私自身もそこはそぼろに共感するところです。


<そぼろ(本多)がデミ(大道無門)に 「私はあなたのスパニエル!」>

–そう考えると、ときたまごとそぼろは、本当に親友なんでしょうか。
 初演の時、演出の宮城さんとの話の中でも出てきたんですが、そぼろはとてもコンプレックスが強い人間で、そういう人はコンプレックスを表に出したがらない。彼女は、ときたまごのことが大好き。けれども、自分にはないものを彼女がたくさん持っていることを悔しくも思っている。そぼろは、自分の恋人デミさんの想いがときたまごになびいた時、内心はいろいろ複雑な想いがあるけれど、ときたまごとの関係だけは壊したくない。彼女との関係が壊れたら自分自身をも、もう肯定できないっていう思いがあると思うんです。
 だから演じる時にも、そういう心の内のドロドロした気持ちを、あからさまには出さずに、でもお客さんに少しは感じてもらえるようにしなければならないという難しさがあります。そぼろのこういういじらしさは、ほんとに可愛らしいなって思います。彼女のそういう姿に、思春期の中高生は共感できる部分が大きいのかもしれないですね。


<媚薬の力 ライ(泉)がそぼろ(本多)に首ったけ>

–『真夏の夜の夢』の中で一番印象的な台詞は何ですか?

~~~~
私が醜いだけなんだわ。
~~~~

 デミさんがときたまごになびいた理由を自問するそぼろの台詞です。初めて台本を読んだとき、泣けてきちゃいました。そうだ、昔は自分もそう思っていたなってことを思い出して。この台詞はガツンってきましたね。余りにも思い入れが強いだけに、舞台ではできるだけフラットに言おうと努めています。

 それからラストに近いシーンに出てくる、そぼろのこの台詞も好きです。

~~~~
森が燃えていくのを見て、
メフィストはとても悲しくなりました。
消えてなくなった森の中で目に見えなくなった自分が
ずっと生きていく。
そう思うと不覚にも涙がこぼれました。…

~~~~

 宮城さんが提起する詩の身体、つまり自分の体を最弱にする、あらゆることに敏感になった因幡の白兎状態の身体にしたところに、ただ言葉が降ってくる、その言葉が口から思わずポロっと出て、その口から出た言葉を聞いたときに自分の身体に大きな傷跡を残す。そういうことをこのシーンでは意識してやっていて、この台詞を口にした時には、台詞からくるあらゆるもの、絶望感や切なさ、美しさに襲われるんです。いまだに言う度に、自分の体がこの言葉にうがたれます。さっきの台詞とはまた違う観点で、私の中で衝撃が強い台詞です。


<そぼろ(本多)と悪魔メフィスト(渡辺)>
 
本多の2011年初演時のインタビューはこちらで読むことができます。

~~~~~~
ご好評をいただいている『真夏の夜の夢』ロングラン公演、
平日の中高生向けの鑑賞事業公演は3月14日までです。

中高生鑑賞事業公演は、一般の方もご観劇いただけます。
3月10日(月)は平日の夜公演(18:00開演)です。

まだ観ていないという方、もう一度観たいという方、
どうか、お見逃しなく!

★公演詳細、中高生鑑賞事業公演の日程は、こちらからご確認ください。