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2021年6月12日

【ふじのくに⇄せかい演劇祭2021 レポート<前編>】

「ふじのくに⇄せかい演劇祭」は、コロナ禍において3作品すべてを「野外上演」とし、観客を入れた「リアル」開催で4月24日から5月5日までの会期を終了しました。今年は海外からのアーティストの来日が叶わず、何度もプログラムを再検討しながら、「野外上演」「リアル」という骨子でラインナップ3作品が出揃ったのは2月中旬でした。そんなわけで、オープニング作品『野外劇 三文オペラ』の初日はあっという間にやってきた!というのがまさに実感。
新様式の演劇祭、12日間を写真とともにレポートします。
 
 
4月24日(土)・25日(日) 『野外劇 三文オペラ』
開幕作品『野外劇 三文オペラ』は、静岡市の中心地、JR静岡駅から徒歩20分ほどにある市民の憩いの場、駿府城公園で2日間上演されました。
 

『三文オペラ』特設会場の前で開場を待つ観客
 

入り口で宮城聰が恒例のお出迎え
 
本作は、「東京芸術祭2018」のプログラムとして池袋西口公園で初演され、今回は静岡版として創作されました。ブレヒトの名作音楽劇『三文オペラ』をSPAC文芸部でもある大岡淳が現代語訳し、オペラの演出なども手掛けるイタリア人演出家ジョルジオ・バルベリオ・コルセッティが、野外空間を存分に活かしたダイナミックで爽快なドタバタ劇に仕上げています。
稽古はイタリア・ローマと静岡をオンライン(Zoom)でつないで行われました。リモートでの演出は様々な困難が伴います。中でも画面越しでは距離感が非常に掴みづらい!・・・のですが、出演者やテクニカルスタッフ、そして会場での稽古に立ち会った芸術総監督・宮城聰に意見を求めながらコルセッティが指示した舞台美術の配置は、「現場で見てもしっくり来ていて驚いた」というのは制作スタッフ談。障壁を超えた信頼関係が作品を仕上げていきました。
 

庭園の緑に囲まれた広場、明るさが残るなかで開演!
 
パワーショベル、自動車、自転車、車輪付きダブルベッド♡・・・ドカドカと砂埃をあげながら入ってくる乗り物が、そこを時にロンドンのとある倉庫に、時に絞首刑の冷たい広場に変え、作品を盛り立てます。
 

婚礼会場(人んちの倉庫)に乗り入れたウェディングカー
 

処刑のシーンにも使われたパワーショベル
 

全編を彩るのはクルト・ヴァイルの音楽。作曲家の原田敬子率いる音楽隊の生演奏に乗った軽快なメロディーと詞は、悲劇的な展開にも滑稽さをにじませます。そして澤田石和寛による衣裳が色彩豊かなエネルギーを放ち、ストーリーが進むにつれ夕闇に包まれていく空を背景にキャラクターの個性を際立たせました。今回、舞台上の感染対策で俳優たちは全員マスク着用。発声・歌唱は過酷なものになりましたが、衣裳スタッフがマスクの構造や素材を工夫し、それを支えました。

 

 

キャラクターを際立たせる衣裳の変化も楽しい
 

その場で生まれる観客とのコミュニケーションはやはり代え難いもの。二日目の上演では俳優のアドリブに客席も呼応し、無言の掛け合いが生まれていることがはっきりと感じられ、胸が熱くなりました。
コルセッティは本番もZoomのライヴ中継での観劇でしたが、俳優・スタッフ陣との信頼関係は岩をも穿つ!この時期ならではの「世界」と「静岡」をつなぐ舞台に、客席から大きな拍手が注がれました。
 

 

カーテンコールで画面越しに拍手に応えるコルセッティ
 
 
4月28日(水)〜30日(金) 『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』
続いて宮城聰の新作『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』が、SPACの活動拠点の一つ、舞台芸術公園の野外劇場「有度」で上演されました。
 

野外劇場「有度」の入口
 

「YOKOSO」マスクで“保健所員”が出迎える
 

唐十郎作、秘蔵の一幕劇で、状況劇場での初演はバラック船をイメージした仮設の「トタン劇場」で上演されたもの。当時は組んず解れつの密な舞台だったろうと記録写真からも伺い知れますが、今回の劇場は天井がなく、背景に森を臨む開放的な野外空間・・・。さらに舞台上でもコロナ対策でマスク着用!非接触!ディスタンス!・・・傘屋のおちょこが恋する妄想癖の女・カナや訳ありの男・檜垣と交わす丁々発止の掛け合いも、俳優同士は向かい合わず常に正面に向かって発する、という厳しいルールのもと創作されました。
 

傘屋のおちょこ(左)。舞台セットは一年越しのお披露目
 

カナと檜垣、丁々発止のセリフは向き合わずに交わされた
 
しかし、「触れられない」「直接向かい合えない」コロナ禍を象徴するような動きの制約があればこそ、「言葉」がイメージを掻き立て、開放的な空間に現実と妄想が入り混じる濃密な時間が立ち現われるのでした。奇想天外な唐戯曲の「言葉」の凄みを思い知る舞台となりました。
 

 

そして天候に左右されるのも野外ならでは。二日目はあいにくの雨模様でしたが、降り続ける雨のなか、レインコートを着込んだ観客が続々と集まってくる様子には心強さすら感じます。
 


 
冒頭、おちょこ役の泉陽二が、ずぶ濡れで“おちょこ”の(ひっくり返った)傘片手に、「雨が降ったって、槍が降ったって、いい舞台を作りたいんだーーー!!!」と叫ぶと、客席から大きな拍手。自然の演出も相まって、まさに「狂気の沙汰」というべき120分、濃い時間が流れました。
 

文:坂本彩子(制作部)
<後編につづく>

→ブログ:【大解剖!『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』の魅力】Vol.9 ~公演を終えて~もどうぞ