SPAC文芸部 横山義志
14時からスタッフ作業。16時、アヴィニョン演劇祭ディレクターのオリヴィエ・ピィさんが法王庁中庭でフランス国営放送のインタビューを受ける。宮城さんも登場。
▲青いカバンを背負っているのがオリヴィエ・ピィさん
18時俳優集合。訓練のあと、20時から23時まで舞台稽古。はじめはまだ日が出ていて、暖かい。今日は31度~19度。夜もだいぶ寒さが和らいだ気がする。
23時から24時まで照明の調整。24時から午前3時半まで、再度舞台稽古。
法王庁中庭での舞台上演についての本を読みはじめる。
アヴィニョン市はフランス革命中にフランスに編入され、法王庁(教皇宮殿)はその後監獄になったり、兵舎になったりしていた。1922年には法王庁前広場で『ハムレット』が上演されたことがあったが、そのときにはカトリック系の新聞『ラ・クロワ』紙に「法王庁の中でなくてよかった」という趣旨の記事が出たりしている。
はじめてこの法王庁中庭で演劇が上演されたのは、第二次大戦後間もない1947年のことだった。二人の画商が「アヴィニョン芸術週間」というイベントを企画し、ピカソ、マティス、ジャコメッティ、シャガール・・・といった前衛芸術家の作品を展示。当時パリで評判になっていた35歳の演出家・俳優のジャン・ヴィラールに声をかけて、法王庁中庭での上演をもちかけた。
ヴィラールは法王庁中庭を見学して、「この法王庁中庭ほどにでこぼこで芝居に向かない場所は見たことがない。そのうえ歴史の重みがありすぎる」といった第一印象をもったが、「何か特別なことが起こるような気がする」とも思って引き受けたという。このときヴィラールは、パリで成功した作品ではなく、ほとんど上演されていなかったシェイクスピア作品『リチャード二世』と新作2本を上演した。これがフランスにおける演劇の地方分散化のさきがけとなっていく。これ以来アヴィニョンでは、パリなどで成功を収めた作品をやるのではなく、そこでしか見られない新作や忘れられた傑作を上演することが一つの原則となった。
アヴィニョンの住民たちが若い劇団員たちにホテルや自宅、食事を提供した。兵士たちが舞台を組んでくれて、1,500の椅子を中庭に置いて客席にした。照明は7台の灯体のみ。希硫酸を入れたバケツの中に亜鉛と銅の金属板を入れて電気を作った。光量が乏しいので、ゼラを使わず、白い光のみ。これ以来、ヴィラールは白い光のシンプルな照明や大きな舞台装置を使わない演出にこだわるようになる。ヴィラールの劇団にはジェラール・フィリップ、ジャンヌ・モロー、マリア・カザレス、ミシェル・ブーケなど、のちに映画スターとなる俳優たちも数多く参加。1950年代にはここに3,000席を超す客席が組まれるようになっていった・・・。
▲現在の法王庁中庭の客席は約2,000席
*アヴィニョン法王庁日記バックナンバー*
(1) 2017年6月27日 静岡からフランスへ
(2) 2017年6月28日 アヴィニョン到着
(3) 2017年6月29日 仕込み一日目
(4) 2017年6月30日 仕込み二日目
(5) 2017年7月1日 仕込み三日目
(6) 2017年7月2日 アヴィニョン法王庁の歴史
(7) 2017年7月3日 法王庁中庭での上演の歴史
(8) 2017年7月4日 フォトコール
(9) 2017年7月5日 最終公開稽古(ゲネプロ)
(10) 2017年7月6日 公演初日
(11) 2017年7月7日 公演二日目
(12) 2017年7月8日 公演三日目
(13) 2017年7月10日 公演四日目
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第71回アヴィニョン演劇祭オープニング招待作品
アンティゴネ
構成・演出:宮城聰 / 作:ソポクレス / 出演:SPAC
7月6日(木)・7日(金)・8日(土)・10日(月)・11日(火)・12日(水)各日22時開演
会場:アヴィニョン法王庁中庭
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