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2022年9月16日

『みつばち共和国』◎もっと楽しむためのヒントをご紹介!

2020年から再演を重ね、大人も子どもも一緒に楽しめるSPACの人気作、『みつばち共和国』
これから『みつばち共和国』をご覧になる皆様へ、また既にご覧になった皆様へ、知っておくと作品をもっと楽しめたり、さらに理解が深まったり。そういった「より舞台を面白くご覧いただくためのヒント」のようなものをご紹介します!

 
『みつばち共和国』は、『青い鳥』で知られる作家メーテルリンクが書いた『蜜蜂の生活』というエッセイをもとに、フランス人の演出家セリーヌ・シェフェールさんが演劇作品として創作しました。メーテルリンクは自然をこよなく愛する人物だったようで、彼自身、熱心な養蜂家でもあったそうです。ほかにも『蟻の生活』『白蟻の生活』というエッセイも書いています。

さて、皆さんは「ハチミツ」が、どのように作られているか、ご存知でしょうか?
『みつばち共和国』は、はちみつをつくるミツバチたちが主人公のお芝居です。
 
〜春〜
お話のはじまりは春。一つの巣箱には約3万匹のハチが住んでいると言われていますが、女王バチがその半分の働きバチを連れて、巣から引越しをする「巣分かれ」のシーンで幕をあけます。


▲「巣分かれ」のシーン。養蜂用語では「分蜂(ぶんぽう)」といいます

なぜ「巣分かれ」を行うのでしょうか? 
実は、1つの巣箱のなかに女王バチはたった1匹だけしか存在することができず、そのため女王バチは、春に新しい女王バチが誕生する直前に、半数の働きバチを引き連れ慣れ親しんだ巣を離れます。
これは生物として、数を増やすための本能にしたがった行動なのだそうです。

一方、残された巣の中では、新しい女王が誕生します。

 
〜夏〜
季節が初夏へと移り変わり、ある晴れた日、新しい女王バチは、生まれて初めて巣箱の外の世界に出ます。「結婚飛行」の始まりです。

女王バチの匂いを嗅ぎつけたオスバチたちは、結ばれるために必死でその後を追いかけます。
女王バチは、他の昆虫や鳥に邪魔されない高いところまで飛ぶのですが、その高さはなんと地上約30メートルにもなると言われています。追いつくことのできた強いオスバチは、やっとのことで女王バチと結ばれます。

そのあと、女王バチはたくさんの卵を産み、物語の季節は、秋・冬へと移っていきます。

 
〜秋〜
卵から生まれた大多数は働きバチとして成長し、数千から数万にもなるミツバチの大家族のなかで、様々な仕事をこなしていきます。

羽化した3日目には巣箱の掃除を任され、そのあとは幼虫や未来の女王を育てる育児役、巣箱の中を適温に保つ空調管理、ロウを分泌してあのお馴染みの六角形の小部屋をつくる巣作りなど大忙し。

そんな文字通り「働きもの」の働きバチ、性別は全てメスなんです。
巣箱を外的から守る門番の仕事や、花のあいだを飛び回って蜜や花粉を集める仕事も、成長した働きバチの仕事です。

オスバチの仕事は交尾、つまり春先の、女王との命懸けの「結婚飛行」だけ?!
しかしその季節が終わって生き残ったオスバチは、巣に戻ります。自分では食べ物を集められないので、働きバチから食物をもらって過ごしますが、やがては巣から追い出され、死ぬ運命が待っています。

 
〜冬〜
冬になって気温が下がると、蜜集めや育児などの仕事はできません。
そのあいだミツバチたちは、巣の中心に体を寄せ合って必死に温度を維持することで、冬を越します。

現在、養蜂、ミツバチを飼うときに使われているのは「セイヨウミツバチ(学名:アピス・メリフェラ)」という種類で、100年ほど前に外国から日本へやってきたミツバチです。

日本には元々、「ニホンミツバチ」という種類がいますが、神経質な性格なため飼育することが難しく、「セイヨウミツバチ」が飼われてきました。

人間は、ハチミツやローヤルゼリー、プロポリス、蜜蝋(みつろう)などを得るためにミツバチを飼っています。あの六角形の巣の材料になる蜜蝋は、化粧品やろうそく、クレヨンをつくる材料にもなります。

それから、蜜を集める時にミツバチが振りまく花粉も、私たちの生活に大きな役割を果たしてくれています。みかん、イチゴ、りんごやアーモンド、木綿など、花の受粉、つまり花と花の結婚のほとんどにミツバチが関わっていて、ミツバチが振りまく花粉なしには実をつけることはできないのです。

しかし、20年ほど前から、自然破壊や農薬の使用などによってたくさんのミツバチが死んでしまい、世界中で大問題となっています。


▲本編では、次々とスクリーンに農薬の名前が映し出されます
 
このお芝居を作ったセリーヌ・シェフェールさんは、メーテルリンクの『蜜蜂の生活』を読み、ミツバチの生活を通して、自然と人間の関わりについて考えてほしいという想いを込めて、本作を創りました。

“花から星まで、すべてはつながっている。”

皆さんがもし『みつばち共和国』を観たあとに、どこかでミツバチが飛んでいるのを見かけたら、彼らの生活と自然の関わり、そして私たち人間との関わりについて、ぜひ考えてみてください。
 

文:豊島勇士(制作部)
<参考文献:松本文男『養蜂大全』(2019)誠文堂新光社>

 

関連リンク集◎もっともっと『みつばち共和国』のことを知りたい!という方へ
劇場文化
【みつばち共和国】魂の関係、詩のリレー(能祖將夫)
ブログ(2021年・2020年)

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『みつばち共和国』
(メーテルリンク作『蜜蜂の生活』に基づく)
作・演出:セリーヌ・シェフェール
日本語台本:能祖將夫

出演:たきいみき、永井健二、仲村悠希 [50音順] 
声の出演:木内琴子

<沼津公演>【沼津市民文化センター開館40周年記念】
2022年9月4日(日)14:00開演
会場:沼津市民文化センター 小ホール

<静岡公演>
2022年9月17日(土)、18日(日)10:30開演、9月19日(月・祝)13:30開演 
会場:静岡県舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」

<浜松公演>【公文協アートキャラバン事業 劇場へ行こう2』参加作品】
2022年9月23日(金・祝)16:30開演
会場:浜松市勤労会館 Uホール (浜松市中区城北1-8-1)

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