永遠の切断面―『ミヤギ能 オセロー~夢幻の愛~』より
『オセロー』はいうまでもなくシェイクスピアを代表する悲劇である。だが、原作が将軍オセローの心の葛藤を主題としたのに対し、今回の舞台『ミヤギ能 オセロー~夢幻の愛~』では、潔白でありながらオセローに殺されたデズデモーナ(の霊)の孤独を主題に描き出した。
この舞台では能の形式を用い、デズデモーナの霊(シテ)がヴェネチアから来た巡礼(ワキ)に語りかけるという構造を取っている。霊が語りかけるという構図は、たとえば目取真俊の短篇小説『面影と連れて』にも見られるが、共通していえるのは、霊がこの世とあの世の間を孤独のうちに彷徨う姿だ。この霊は死んでなおかつて愛した人と再会することも叶わず、かといってどこかへ行くこともできず、生と死の狭間に留まり続ける。そこは「永遠」というにはあまりに曖昧とした空間だ。デズデモーナの霊からは「いつまでここにいなければならないのか」という悲痛な叫びが聞こえて来るようだ。 続きを読む »