■劇評塾卒業生 依頼劇評■
白い闇を見詰めて
クロード・レジ演出「室内」論
柳生正名
今年の梅雨は、首都圏では7月上旬に歴史的な早さで明け、例年なら梅雨雲にさえぎられる夏至直後の直射日光が地を灼くことになった。まばゆい昼間の出来事は陽炎のように揺らぐ夢であり、夜の闇こそ現―。そんな感覚を持つに至ったのは自分だけではなかろう。
もっとも、この倒錯した現実感の責任を異常気象ばかりに押し付けるのは、こと自分自身の場合、不適切だ。梅雨明けの少し前、クロード・レジ演出によるモーリス・メーテルリンク作「室内」の日本人キャストによる上演という歴史的事件に出会った。このことが多分に影響していたように思われてならない。 続きを読む »