■準入選■
マインドコントロールへの抵抗
柴田隆子
『Hate Radio』は、ルワンダ虐殺を助長したとされるミルコリンズ自由放送(RTLM)の生放送場面を「再現」したドキュメンタリー演劇である。ドキュメンタリー演劇では、現地調査やインタヴューなどで具体的な記録や証言を集めて、現実に起こった社会的出来事を演劇的に再構成するが、それは必ずしも本当の出来事そのものの再現ではない。あくまで実際に起きた出来事の一側面、それも演出ミロ・ラウのパースペクティヴを通した、彼が「芸術的真実」と呼ぶ美的再構成に過ぎない。とはいえ『Hate Radio』は、ルワンダの虐殺でメディアが果たした役割を可視化し、虐殺がなぜ起きえたのか、ヘイトスピーチを流したラジオ放送がどうしてそのような大きな影響力をリスナーに持ち得たのかを明らかにしている。これは決して過去の出来事として安穏として見る舞台ではない。今、ここで起きているかもしれない出来事の再現なのである。 続きを読む »