2016年11月19日

『高き彼物』出演俳優トーク

◆中高生鑑賞事業「SPACeSHIPげきとも!」 パンフレット連動企画◆

中高生鑑賞事業公演では、中高生向けの公演パンフレットをみなさんにお渡ししています。
パンフレット裏表紙の俳優トークのロングバージョンを連動企画として、ブログに掲載します。

<リアルな芝居を目指して>

左・野村市恵役 本多麻紀(ほんだ・まき)
2007年よりSPAC参加

右・猪原正義役 渡辺敬彦(わたなべ・たかひこ)
2010年よりSPAC参加

―『高き彼物』は、8月下旬に第1期の稽古がありましたが、そこではどのようなことをしたんでしょうか。
本多(以下H) 演出の古舘さんからは、『高き彼物』ではリアルということを大事にしますというお話があり、古舘さんがアメリカの演劇学校で学ばれた「メソッド演技」という方法をみんなで共有するところから始まりました。講義があり、実際に身体を動かして試すエクササイズにも、かなりの時間があてられました。

―それは、今まで SPACでされていたこととは違いますか?
 古舘さんのお話を聞いて自分の中で解釈すると、これまで芸術総監督の宮城さんや、海外からいらした演出家の作品の稽古で言われていたことと、表面的には違うように見えても、最終的にはつながる部分があるなと思いました。
渡辺(以下W) 古舘さんは、リアリズムの芝居について、「日常の現実の常態を舞台に立ち上げることができれば、それだけですごいこと。それはすごく面白くて、ずっと観ていられる」とおっしゃっていて、1期の稽古では、そういうリアルをどうやって舞台上で作り出すのかを、ひたすら試行錯誤しました。とはいえ、舞台はお客さんに見せる作業だから、隠しカメラでどこかのお茶の間を撮って、そのまま見せるというようなわけにはいかない。もっと凝縮して作品にしなきゃいけない。そこがまた難しいところでもあるんだけれど。
 リアルを求める古舘さんの言っていることは特別なことでないし、他のいろんな演出家が言っていることも、特別ではなくて、それはどこかでつながっていると思う。僕がいつも思うのは、ボリュームをどうするかなんですよ。
 どんな芝居もやっていることは基本的には同じで、どんなにリアルな芝居も演技の様式的なものを全否定するないわけではないし、様式性で作られた舞台もリアルなものを全否定しているわけではない。だから、俳優はいろいろな演技の引き出しをもっているけれども、そのいろいろなツマミのボリュームを調整して、どこでバランスをとるかという問題だと思うんです。一流の俳優は、みんな「自分はこのボリュームが好き」という好みはあっても、それとは別にその都度作品や演出家が求めるところに、自分の演技のボリュームを合わせる能力を持っているんじゃないのかな。
 具体的にはどんなボリューム?
 リアルなボリューム。ひたすらリアル、でも作らない。といっても、作る。
 そう、だからそのさじ加減がむずかしいなって(笑)

―具体的には、古舘さんからはどのような指示が出されたんですか。
 よく言われたのは、「普段の自分がどうしているか」や「もっと普通に」ということでした。例えば「この場所のこういうところに、こういうモノがあって、それがこうなって…」という話を、セリフとして言おうとすると、言葉ばかりが立っちゃって、描写されている情景があまり見えてこないことがあるんです。そういう時、古舘さんは「ちょっと雑談しましょう」と。そして、「今日あなたがお家を出てからここに来るまで、どういう道を通ってきましたか?」と質問する。すると俳優は「玄関を出て、右に曲がってエレベーターを降りて、駐車場に行くのにちょっとぐるっと回るんだけど…」みたいな自分の普段の話をする。すると、そこで描写されている情景は、不思議と聞いている人の頭に浮かんでくるんです。一旦、そういう話をさせた後に、古舘さんは「じゃあ、今の感じでセリフをしゃべってください」と稽古に戻る。こういう手段を経ると、普段の自分が自然に無意識にしていたことに、意識を向けさせられます。これまでとは違う筋肉を鍛えられている感じがして、面白かったですね。

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―今回この作品のためのオーディションで選ばれた、とみやまあゆみさんと石倉来輝さんは、初めてSPACの作品に出演しますね。
 敬彦さんは、お二人のこと、すごい褒めてましたね。
 SPACでずっとやっている俳優とは鍛えている筋肉が違うから、すごく新鮮な出会いになったと思います。違いますか?
 そうですね。もう、本当にうまいなあと思って。今回稽古をしている中で、自分もいろいろな障害にぶつかって、うまくいかないところがあるんですけど、お二人はさすがにオーディションで選ばれただけあって、障害の越え方が非常に軽やかだなあと思います。見ていてすごく勉強になりますね。

 僕も、これまでいろんな舞台に出て来たけれども、ここまでリアルな演技を求められるのは初めて。
 敬彦さんは、役を丁寧に作っていて、演じているというより、この人は素もこうなんじゃないかと思うくらいのフィット感がありますけど。
 うーん。そうかなあ?でも、台本を読んでいると、正義の体験したことと自分自身の体験で、バチンバチンと重なるところもあって、彼の発言や考え方全てに共感しているわけではないんだけれども、分かる気はする。それは、お互いの年齢が近いし、自分も歳をとったということかもしれない。でも、物語は1978年、55歳の正義は戦争を経験している。そこをどう捉えたらいいのかには、頭を抱えています。俺は戦争を経験せずに生きてきたから… たとえば、正義は何を思って英語教師になったのかを、戦争とか時代背景もからめて考えると、なかなか難しい。
 戦争中、英語は敵国の言葉でしたしね。

―本多さんは、ご自身が演じる野村市恵に共感する部分はありますか。
 話を聞いていてとるリアクションとかは割と近いところがありますね。たとえば、誰かが話すのを周りがじっと聞いているようなシーンで、「ああ、やっぱりここは母親ならではの視線でそこに意識がいくよね」とか。でも、全てが自分に近いわけではないんです。市恵は恋愛に関しては本当にストレートで迷いがない。正義のことがずっと好きで、15年も彼のことを想っているわけですけれども、その想いをああやってバシって言えちゃうのはすごいなと。

 お互い最終的にどれだけの説得力を持つことができるか、これからの稽古で挑戦していきたいね。

2016年9月20日 静岡芸術劇場にて

公演情報詳細はこちら。
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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯2
『高き彼物』
一般公演:11月3日(木・祝)、5日(土)、13日(日)、19日(土)
演出:古舘寛治 作:マキノノゾミ 舞台美術デザイン:宮沢章夫
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
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2016年11月8日

【『高き彼物(かのもの)』への道 11歩目】 開幕!

SPAC秋→春のシーズン2016-2017#2『高き彼物』、遂に幕を開けました!
ネットにはすでに大変多くの感想があげられており、好評いただいております。
http://togetter.com/li/1044917
ありがとうございます!

今日は、多くの方々の共感と感動を呼んだ「猪原家をとりまく人々」をご紹介いたします。



猪原家の主、様々な葛藤を抱えながら生きる元高校教師・猪原正義



猪原家を支える元気印、一人娘の猪原智子


いつでもマイペースなおじいちゃん・猪原平八



真面目でまっすぐ、でもちょっと不器用な先生・野村市恵
正義を教師として尊敬し、たびたび猪原家を訪れている。



悩み多き十八歳、東京から来た少年・藤井秀一
正義を「先生」と慕い、猪原家でしばらく過ごすことに。


ご近所のおまわりさん、不器用な感じが憎めない正義の元教え子・徳永光太郎


真面目で爽やかな好青年?片山仁志

お客さまからいただいたアンケートの一部もご紹介させていただきます。

・シリアスなところに被さるようにしてコミカルなシーンがあってずっと
みいってしまいました。最後、「高き彼物」というタイトルが心にしみました。(20代・女性)

・展開が激しくて、泣きながら笑いました。舞台と自分が一対一になれる、
そんな舞台でした。(30代・男性)

・シンプルな舞台セットでしたが、色々想像できてよかったです。
木の香りがする舞台も新鮮でした。(50代・男性)

・先生は、大人は、人間は、正しくなくてはいけないのか?間違いを認め向き合っていくことの大切さ、
またしっかり向き合っていこうと思える素晴らしい芝居でした。(40代・男性)

・まさに「人生を目撃」しました。こんなに心が震えたのは久しぶりです。(50代・女性)

まだ携帯電話も無かった時代、田舎の雑貨屋・猪原商店の茶の間で、繰り広げられる人間模様。
彼らの一挙手一投足の、何処かに共感できる何かを見つけられるはず。

さあ、舞台はまだ始まったばかりです。
静岡芸術劇場へ、彼らに会いに来てください!

【一般公演】
 11月13日(日)16:00開演
  ※話題の映画『淵に立つ』監督・深田晃司さんとのアーティストトークあり!
 11月19日(土)14:00開演
  ※気になる舞台裏をスタッフが解説、バックステージツアーあり!

【平日の中高生鑑賞事業「SPACeSHIPげきとも!」】
 http://spac.or.jp/news/?p=12594
 ※一部チラシとは開演時間が異なっていますので、こちらでお確かめください。

公演情報詳細はこちら。
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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯2
『高き彼物』
一般公演:11月3日(木・祝)、5日(土)、13日(日)、19日(土)
演出:古舘寛治 作:マキノノゾミ 舞台美術デザイン:宮沢章夫
静岡芸術劇場
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2016年11月1日

『高き彼物(かのもの)』への道 10歩目】出演者インタビュー第7弾・吉植荘一郎

『高き彼物』出演者インタビュー、最後の7人目は、猪原平八役の吉植荘一郎さんです。
多くは語らないけれど存在感のあるお爺さんを演じるのは、おしゃべり好きな吉植さん。インタビューでも様々な小話が飛び出しました。
(収録は第一期稽古期間〔8月〕に行いました。)

–猪原平八という人物について教えてください。

普通のお爺さんです。お店に誰もいなければ「まいどー」とかやるかもしれませんが、農作業をやって、煙草を吸って、ビールを飲んでるようなお爺さんです。
背景はいくらでも考えられますね。この人は明治28年の生まれで、(息子の)正義が生まれたのは大正12年です。この年は関東大震災の年でしたし、正義は戦争の時代に育ったことになります。震災によって起こった様々な出来事を見て、「せいぎ」とも読める正義という名前を付けたのかなぁなんて思いました。それに、ああいう田舎町で自分は農業をしていて、息子を大学にやるっていうのはいろんな考えがあったんじゃないかと思います。

–いろいろなことを考えながら役作りをされているのですね。

まだまだこれからです。(今の話は)背景であって表には出て来ませんし。平八は周りから見てるとなんだかわからないけど、偏ったところのない人間だと思います。

–猪原家を見守ってきた立場からして、正義は息子として何点でしょうか?

そうですねぇ……63点ですかね。教師という職に就いて、妻子をもち、けっこう出来た息子だとは思うんですけど、退職後はやっぱりどうもいまひとつ頼りないんですよね。
現役時代には、教師を天職だと思って生徒と向き合っていたようで、まぁみんなから慕われているのを見るといい先生だったのだろうなと思います。しかしある事件をきっかけに教師を辞めることになったのですが、その過去をずっと引きずって、家で「はぁ~」とかなんとか言ってるのを15年間見ているので、どこか少し弱いところがあるんだなと。基本的には「お前しっかりしろよ」って思ってるだろうし。
平八は、孫の智子が抱える恋愛問題にも、正義よりも先に気付いて、気にかけています。嫁として家を出ていってしまったら、家に残るのは平八と正義の年寄り二人だけですから。そんなこともあり、63点くらいでしょうか。

–これまで色々な演出家の作品に出演されてきましたが、古舘さんの演劇の作り方はいかがですか?

そんなに多くの演出家のことは知らないんですけど、古舘さんもまた独特な考えですね。役者がハプニングなど実際に起こることに反応する姿がいいっていう。私はこれまで強靭な様式性を持った演劇しか知らず、ここ5年くらいでリアリズムとは何か、あるいは力まない演劇とは何かを考えている演出家の作品に出演する機会がありまして、今回は必然的な出会いだった気がします。

–稽古はいかがでしょうか?

(クロード・)レジさん演出の『室内』(2013年初演)と通じていると思うことがあります。古舘さんから「吉植さん、あなた音を聞いてないでしょ、聞いてほしいんです」と言われたときに、レジさんから「荘一郎、君は素晴らしい共演者がいっぱいここにいるのに、それを見ずに自分のイメージだけで喋っている」ってよく言われたことを思い出しました。
この作品は日常の生活を描いているので、「演技をしてません、っていう演技」ではなく「この人なんもしないね」って見えるようになればと思います。ただ、私は88歳という今の自分とかけ離れた年齢の役をやるので、がけっぷちですね。それに古舘さんから「老人ぽく痩せてくださいね」って言われてますから、期待に応えてなんとか痩せたいとは思っています。

–遠州弁はなんとかなりそうですか?

川根に行って地元のおっちゃんたちの言葉を聞いたときに、まさにこれだよこれって感じました。私は構えてしまって固い言い方をしているなと思いますので、もうこれからやり込むしかありません。

–ありがとうございました。

公演情報はこちら。
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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯2
『高き彼物』
一般公演:11月3日(木・祝)、5日(土)、13日(日)、19日(土)
演出:古舘寛治 作:マキノノゾミ 舞台美術デザイン:宮沢章夫
静岡芸術劇場
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2016年10月30日

『高き彼物(かのもの)』への道 9歩目】出演者インタビュー第6弾・本多麻紀

『高き彼物』出演者インタビューの6人目は、野村市恵役の本多麻紀さんです。
とても真面目で熱い気持ちも持っている野村市恵を演じる本多さん。今回の演技について伺っていると、本多さんからも役に通じる真剣な様子が見えました。
(収録は第一期稽古期間〔8月〕に行いました。)

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–本多さんが演じられる野村市恵についてお聞かせください。

本多:袋井の中学校で国語の教師をしていて、10歳の息子がいるシングルマザーです。以前に猪原(正義)先生と同じ高校で教えていた縁で、猪原先生とそのご家族とお付き合いしています。

–本多さんから見た野村市恵の印象はいかがでしょうか。

本多:冗談の通じない真面目な人という描写があるなど、いかにも中学校の国語教師といった雰囲気ですが、時々イメージを裏切るような行動をとることもあって。読み返すたびに発見がある、けっこう振れ幅の大きい役だなと思いました。
戦後に少女時代をすごし、結婚して割とすぐに離婚して息子を育て、苦労してきただろうなぁと思います。市恵は猪原先生のどういうところに惹かれたのかという事を考えているのですが、(猪原先生の)何かのモノサシで人を見るのではなく、その人自身をちゃんと見よう、その上でちゃんと向かい合おうとする情熱的なところかなと。それって言葉では簡単ですけど、実際にそういう人はなかなかいなくて、市恵もそうなりたいけど難しいと悩んでいます。市恵は、猪原先生はそれを実現している人だと思っています。そんな人はたしかに素敵ですよね。

–本多さんは猪原家をどんな風に見ますか。

本多:正義も平八(正義の父親)も智子(正義の娘)も直接口にしないこともありますが、ふとした瞬間のさりげない思いやりをみせるのでグッときます。例えば電話が鳴っているのに近くにいる平八が電話に出ず、智子に出させるシーンがあります。「それくらいしてあげればいいのに融通が効かない頑固なじいさんだなぁ」なんて思いましたが、平八はその電話には智子が出た方がいいだろうと思っていたから出なかったんですよね。「なんだ、平八は実はいいやつじゃん」って。そういう家族ならではのやさしさは美しいですよね。

–そういった人物を作っていく稽古、古舘さんの稽古はどのように進んでいますか。

本多:この『高き彼物』は、(SPACで上演する)宮城の演出作品ではあまり扱わない現代戯曲です。古舘さんご自身も現代口語演劇の方というイメージが強く、それらをあまりやったことがない私に出来るのだろうかという苦手意識がありました。
でも、稽古で何度かワークショップをしたりお話を伺ったりしているうちに、普段自分が戯曲や役に向かい合っていることと根っこは同じなんだなと感じました。それからは少し肩の荷がおりました。
ただ、突き詰めるポイントの違いはあって、そこはすごく面白いです。日常で無意識にしている動きや話し方に意識的になりました。例えば、驚く時にどういう意識の流れで、どの瞬間にどういう動きをして、どのポイントで驚くのかということを考えます。声や動きなどのリアクションが入る細かいポイントを発見していくのが新鮮でおもしろいです。これはこの先、芝居を続けていく上で大切なことだと思います。
いざそれをやろうとすると、難しくてなかなかできないんですけどね。

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–お話を伝える上で、そうした演技のディティールなどが大切になりそうですね。それでは、『高き彼物』というお話に抱いた印象や伝えたいことがありましたらお聞かせください。

本多:どの登場人物も時として愚かで誤った選択をしてしまい、誰かを傷つけることがありますが、そこで苦しみ懸命にもがく姿こそそれぞれの人物の「高き彼物」の切望であり、人間ってしょうがないな、尊いなといったところにつながっている気がします。台本の最初に書いてある人間賛歌はこういうことなのかなと。それは時代が変わってもあることですし、伝わるといいですね。

–「演技」をせずに自分でいてください、と稽古で古舘さんはおっしゃっていますが、自分ではしないことも芝居では行いますよね。そういう時は、役者としてはどのような状態なのでしょうか。

本多:例えば今やっているリーディング(第一期稽古で行いました)は、先のことを考えずに1つ1つの台詞をその時の相手の反応を見ながら進めるというものです。台本の流れをよく知らないまま進んでいくので、途中でその人物が自分の思いもよらない選択をすることがあります。そういう内心「それはない!」と思うこともたまにありますが、今はその気持ちに嘘はつかずに「ないわ~」っていう身体性に乗せて、その選択をするということをしています。
これは相手役から発せられた台詞によって初めて生まれる感情もあるので、1人で台詞を考えているだけでは思いつかないことです。だから稽古は面白いですね。
古舘さんの理想とする”真のリアリズム”、舞台上の人物みんなが、客観的リアルではなく主観的リアルでいる状態というのはとっても難しいし、私も観たことがないけれど、その壮大なチャレンジをさせていただけることはやりがいもあり、とっても嬉しいと思っています。

–ありがとうございました。

公演情報はこちら。
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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯2
『高き彼物』
一般公演:11月3日(木・祝)、5日(土)、13日(日)、19日(土)
演出:古舘寛治 作:マキノノゾミ 舞台美術デザイン:宮沢章夫
静岡芸術劇場
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2016年10月19日

『高き彼物(かのもの)』への道 8歩目】出演者インタビュー第5弾・若菜大輔

『高き彼物』出演者インタビューの5人目は、片山仁志役の若菜大輔さんです。
片山仁志はこの物語のキーパーソンになる人物です。インタビューでは、そんな役に真摯に向き合う俳優の姿が見えてきました。(収録は第一期稽古最終日2016年8月31日に行いました。)

–若菜さんが演じる片山仁志というのはどういう人物でしょうか?

戦後に生まれ、パチンコ屋を営む両親のもとで育った33才の男性です。
本人がどう感じるか分りませんが、名前のとおり志の高い人間だと僕は思います。
そして、ちゃんと地に足をつけて、もしくはつけようとして、生きていこうとする強さをもった人だと感じます。

–第一期稽古が終わったばかりですが、片山をどのように演じたいというような思いはありますか?

“地に足つけて生きることへの強さ”と言いましたが、言うだけならば簡単で、血管に血が流れる生々しさのところで実践するとなると、きれいなことだけではないし、想像もつかないほど生半可なことではないと思います。それを片山が持っているのであれば、何とかして向き合わなければいけないと思っています。

–古舘さんの稽古はいかがですか?

第一線で活躍されている表現者の考えに触れさせてもらうことは、自分の至らなさを感じるばかりです。表現に対する捉え方に曖昧なところがなく具体的です。これまで自分が演技と向き合ってきた中で何となく感じていたことを名付けてもらっている感覚が何度もありました。揺るがない表現に対する思いや考えを中心に据えた稽古場です。

–『高き彼物』という戯曲からはどういう印象を受けましたか?

きれいな面だけではない、だからこそ、“高き彼物”へと向えるのだと思うのですが、必死でもがくある種の美しさを持つ人間が集まっている、とてつもなく大変な作品だと感じます。

–ありがとうございました。

公演情報はこちら。
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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯2
『高き彼物』
一般公演:11月3日(木・祝)、5日(土)、13日(日)、19日(土)
演出:古舘寛治 作:マキノノゾミ 舞台美術デザイン:宮沢章夫
静岡芸術劇場
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2016年10月4日

【『高き彼物(かのもの)』への道6歩目】 演出家・古舘寛治インタビュー

8月の第一期稽古からはや一カ月。


【8月の稽古最終日に撮った集合写真】

先日、出演者スタッフが再び静岡に集結し、第二期稽古が始まりました!

さて、今回のブログでは、グランシップ情報誌「グランシップマガジン」に掲載された、
演出家・古舘寛治さんのインタビュー記事をご紹介します。

「フィクションの中に本当に生きている人間がいる」
SPAC新作『高き彼物』で、真の“リアリズム”を追求する

――今年度の「SPAC秋→春のシーズン」で『高き彼物』を演出されますが、
  この規模の舞台の演出は初めてだそうですね。どのような経緯で決まったのですか?

昨年SPACの『舞台は夢』公演の際、終演後のアーティストトークのゲストとしてお招きいただいたのですが、トークの前に芸術総監督の宮城聰さんから「演出をやってみませんか」といきなり言われまして。それがまさに演出をやりたくてたまらなくなっていた時期だったんです。
僕は20代の時アメリカで演技を学んだことから、俳優の演技というものに対して、ある種の目標、理想とする形を持っています。一俳優としてそれを追いかけてきたつもりですが、一俳優にできることは限られている。舞台に出ている俳優の演技全体を自分が理想としているものにしたいっていう欲求が年々膨らんでいました。だから宮城さんのお誘いは、ちょうど良いタイミングでした。

――『高き彼物』という作品を選んだ理由を教えてください。

宮城さんからいくつかの候補作品をいただいて、その中で最後に読んだのが『高き彼物』でした。
恥ずかしながら、この戯曲の存在自体知らなかったんですよ。『サラリーマンの死』にしようかなと考えていたんです。が、これを読んだ瞬間、僕の考える「リアリズム」を追求するのにピッタリの作品だと直感しまして、これに決めました。

――舞台美術を静岡県出身の宮沢章夫さん(劇作家、演出家、作家。遊園地再生事業団主宰)が担当されますね。

宮沢さんは、ご自身の舞台でもそうですが、抽象的なデザインの舞台美術を用いる方なので…覚悟しています(笑)。
「抽象」と「リアリズム」―― 一見相反するようですが、具象的な日常風景の前より抽象的な背景の前で “リアルな演劇”をやる方が、作品としてはより面白くなると思います。宮沢さんとは既に一度打合せをしましたが、これからどんなプランがあがってきて、どう形になっていくのか、ワクワクしますね。

――SPACの俳優陣に加え、今回2名の俳優をオーディションで選ばれたと伺いました。

本作に出演するSPACの俳優を集めて、一度ワークショップを行ったのですが、非常に鍛錬されていて技能が高いですね。
また、主人公の元高校教師の娘役を演じるとみやまあゆみさんも、以前別の仕事でご一緒したことがあり、演技の幅がある方なのでとても楽しみです。
そして石倉来輝くん。彼は実年齢と同じ18歳の高校生の役を演じます。結構大人な内容の戯曲なので、リアルな18歳が演じて大丈夫かなって心配したんですが…杞憂でしたね。オーディションでも堂々としていて、彼しかいないという感じでしたよ。成長に期待しています。

――「リアリズム」という言葉がたびたび登場していますが、古舘さんが考える「リアリズム」とは?

「舞台上のフィクションの世界の中に、本当に生きている人がいる」と見えるようにしたいんです。それが僕にとっての「リアル」であり、「Truth(真実)」です。
アメリカの俳優の中には、「真実」を「リアル」に対する言葉として使う人がいます。「リアル」は客観です。一方の「真実」は、俳優自身が本当にそこに生きていると信じている状態、極めて主観的なものです。俳優がそういう状態になれば、自ずと客観的な存在である観客からは「リアル」に観える。それが僕の信じているリアリズムへの道(メソッド)なのです。その時、見た目の問題を越えて、間違いなく面白いものが立ち上がってくると確信しています。

――最後に、静岡ではテレビCMで目にしない日はない古舘さんですが(笑)、静岡のお客様に向けて一言お願いします。

実は静岡では、道ですれ違っても、お店にいても、声を掛けられたことがないんですよ。一度我慢できなくなってお店の女性に聞いちゃったんです。「僕のこと知ってます?」って。そしたら「ハイ、知ってます」って(笑)。
知っていても知らぬふりをするって、古き良き日本の奥ゆかしさがあって、静岡が大好きになっちゃいました。
そんな大好きな静岡での初演出となる『高き彼物』、ぜひ観に来てください!

【グランシップマガジンvol.7(2016年9月15日発行)に掲載】

真の”リアリズム”演劇を目指して、稽古も順調に進んでいます。
その様子は今後のブログでレポートしていきます!

よい席はお早めにどうぞ!

公演情報はこちら。
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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯2
『高き彼物』
一般公演:11月3日(木・祝)、5日(土)、13日(日)、19日(土)
演出:古舘寛治 作:マキノノゾミ 舞台美術デザイン:宮沢章夫
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2016年9月25日

【『高き彼物(かのもの)』への道 5歩目】出演者インタビュー第3弾・渡辺敬彦

『高き彼物』出演者インタビューの3人目は、猪原正義役の渡辺敬彦さんです。
猪原正義はこの物語の中心となる人物です。そんな役にどのように向き合っているのか伺いました。

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–渡辺さんが演じる「猪原正義」は、どのような人間なのでしょうか?

55歳の男性で15年前まで教師をしていました。しかし、今は教師を辞めてしまい、家に商店を構えて、父親(平八)と娘(智子)と3人で暮らしています。教師という職業にやりがいを感じていたし、周囲も彼にとって教師は天職だったのにと思っているようです。
何かがあった時に、具体的な解決方法は示せないけれど、自分のことと重ね合わせて、親身になって接するというか、一緒に考えようとする男です。

–戯曲『高き彼物』は、マキノノゾミさんが歌人・吉野秀雄の「屑(くず)たばこ集め喫(す)へれど志す高き彼物忘らふべしや」という詩を参考にされたとのことです。この詩についてはどのような印象を受けましたか?

まじめだなぁ、まっすぐだなぁという印象。「高き彼物」が何を指しているかは、具体的に「これだ」というものではなく、それぞれがずっと考え続ける大事なこと、信じていくと決める何かかなぁと思います。

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–話は変わりますが、渡辺さんは作品の設定である1978年のことをよく調べていると伺いました。

私よりみんな調べているし、知識もありますよ(笑)
今回はいつになく少しまじめに役柄の人生と歴史を重ねてみて、「正義」にとって大事な出来事は何か、そして大事な時期はどこかということを考えています。

–古舘さんの稽古はいかがでしょうか。

初めての感じです。すぐに「これだ!」という演技は見つからないし……。古舘さんが稽古場で言うことがわかったつもりでも、できないやっぱりわからないということもありました。それでも稽古が進んでいくと、演出の古舘さんが目指しているところはなんとなくつかめてきたような気がします。
私はいつも舞台上でお客さんにどう見られるかというのを考えていますが、今回は見られ方を考えずに、お客さんがそれぞれどう感じるか、もっとお客さんに任せてしまおうと思っています。

–ありがとうございました。

公演情報はこちら。
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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯2
『高き彼物』
一般公演:11月3日(木・祝)、5日(土)、13日(日)、19日(土)
演出:古舘寛治 作:マキノノゾミ 舞台美術デザイン:宮沢章夫
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2016年9月22日

【『高き彼物(かのもの)』への道 4歩目】出演者インタビュー第2弾・武石守正

『高き彼物』出演者インタビューの2人目は、徳永光太郎役の武石守正さんです。
久しぶりに現代戯曲に向き合っているという武石さん。稽古の様子も詳しく語られています。

-今回の作品『高き彼物』という戯曲を読んで、どういう印象を抱いたかお聞かせください。

原作が100年以内に書かれた戯曲を読むのが久しぶりということもあって、最初に抱いた印象は「読みやすい」でした。いつもは戯曲を一読しただけでは理解できなくて、何度も繰り返し読むからかなりエネルギーを使いますが、この戯曲は関係や言葉がシンプルになっているから、物語には入っていきやすいです。ですが、演じるとなるとシンプルさやわかりやすさゆえの難しさがあるかなと思います。

-その難しさとは異なるかと思いますが、この戯曲の特徴として遠州弁が使われています。それについてはいかがでしょうか。

静岡に住んで16年になりますが、わかっているようでわかっていなかったことがわかりました。イントネーションや意味はわからなくてはいけないと思いますが、遠州弁にあまり慣れすぎないほうがいい部分もあると思います。今は苦労しているところもありますけど、いい距離感を見つけられたらと考えています。

-16年住まれていても、難しい部分があるのですね。

SPACは色々なところから人が集まっていて、そこで使うのは標準語に近い言葉になっているからでしょうか。イントネーションは出ても地元の方言とかは(仕事をしているときは)使わないですよね?

-そうですね、出てこないですね。
もう1つ内容について、武石さんが演じる「徳永光太郎」はどんな人物なのでしょうか。

42歳、男性。仕事は警察官。川根で生まれ育ち、警察官になりました。37歳の時に妻が子供を連れて家を出たようですが、細かい経緯は分かりません。彼の言い分では「川根の女は気が強いから」だと言っています。高校時代は猪原正義(元高校教師)に英語を習っていたそうですが、出来は良くなかったみたいです。現在は正義の娘の智子を好きなようです。

-地元にずっといる人ですね。
そういった人物を作るための稽古、古舘さんの稽古はどのような感じなのでしょうか。

演技とは本来そういうものなのですが、その瞬間を生きるということ、その瞬間の質を落とさずに何度でも繰り返せるよう自覚的になることを大事にされているように感じました。
古舘さんのワークショップの中で、自分がとっさに出てきたリアクションを3度繰り返すものがあります。シアターゲーム(稽古で行ったワークショップ)で失敗した時に頭を抱えたり、思わず声が出てしまったりしたら、すぐに3度繰り返します。自分から出てきたリアクションなのに、これがなかなか難しい。そのリアクションに至るまでの思考・判断の流れや、そういうリアクションをとってしまった感覚・身体などを正確にたどらないと、とっさに出てきた1回目とは違った動きが出てきてしまいます。
あまり意識していない細かい部分まで意識しないと、その時生まれたリアクションが大雑把なものや繰り返しやすいものに変わる瞬間に出会って考えさせられました。

-反射的な動作や思考を、身体と頭で筋道を立てて再現するというのは難しそうですね。

これは例えになるかわからないですが、ひとの話って100%は覚えてないですよね。自分が聞きたい情報だけを聞いているとか、同じように自分の記憶も常に選んでしまっている。
そういうふうに、ポイントは覚えているけど自分が大事じゃないと思ったことを落としている。そうすると組み立てた時にピースが足りなくなってしまう。その落としてしまったピースを見つけられると、新鮮に再現できるのかなと思います。

-そういったことから練り上げられたリアクションに注目して劇を見ると、この作品の演技の面白さが見えてきそうですね。
本日はありがとうございました。

公演情報はこちら。
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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯2
『高き彼物』
一般公演:11月3日(木・祝)、5日(土)、13日(日)、19日(土)
演出:古舘寛治 作:マキノノゾミ 舞台美術デザイン:宮沢章夫
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2016年9月18日

【『高き彼物(かのもの)』への道 3歩目】出演者インタビュー第1弾・とみやまあゆみ

こんにちは!

8月の第一期稽古の間に、
『高き彼物』出演者7名にインタビューを行いました!

それぞれの視点から、作品の魅力や創作に対する思いを
たっぷりと語っていただきましたので、順にお届けしていきます。

第一弾は、「猪原智子」を演じる とみやまあゆみさん です。
それでは、どうぞ!

-とみやまさんが演じる「猪原智子」はどのような人物でしょうか?

実家で父(正義)と祖父(平八)と一緒に暮らす31歳の女性です。
第一印象としては明るい女性でした。実家で営む雑貨屋を切り盛りしたり、地元の製薬会社で営業を担当していたようなので、田舎の人当たりがいい人という雰囲気を感じました。ただ台本の読み合わせが進んでいくと、実は明るく振る舞っているのかなと感じられる一面もあります。明るい気遣いというか、優しさとも言えるかもしれません。どう演じるかはまだまだ模索中ですね。

-今年の4月に出演者オーディションが行われ、本作への出演が決まりました。この作品に挑戦したいと思ったきっかけはありますか?

オーディションには、「その時に来たチャンスは、逃すともう一生捉まえられない!」という思いでのぞみました。実は、2年前に劇団サンプルの『女王の器』という作品で古舘さんと共演させていただいたことがありました。このオーディションの情報を知った時には、「あの古舘さんが演出をするだって!? しかもマキノノゾミさんの戯曲を・・・、一体どんな作品になるんだろう!?」というワクワク感がありました。

-素晴らしいハングリー精神、好奇心ですね。

ありがとうございます。あと、『高き彼物』というタイトル自体にも魅力を感じました。人って心のどこかで「よくなりたい」と思いながら生きているんじゃないかと私は思っていて、「高き彼物」という言葉からも、「手の届かない場所やよりよいものを目指していく」といったイメージを受けとりました。タイトルと同じように素敵なお芝居になる気がしたので、この作品に参加したいと思いました。

-普段は東京で舞台を中心にお仕事をされているとみやまさんですが、
静岡(舞台芸術公園)に滞在しながらのクリエーションはいかがでしょうか?

稽古の後に、ぼんやりと作品について考える時間を取れるのがいいですね。夕方を過ぎれば聞こえてくるのは、鳥の鳴き声や虫の音、風の吹く音くらいで、考えることに集中できる環境です。稽古場で起こったことを思い出しながら台本を読み直したりして、演劇だけに向き合うことができる場所にいるという意味で、自分が鍋の中でじっくりコトコト煮込まれている感覚ですね。

-最後に意気込みをお願いします!

この作品では、静岡県川根町で暮らす猪原家と周囲の人間たちの人生の一部分が切り取られ、描かれています。「智子」だけでなく、みなが互いに思い悩んで、相手のことを慮(おもんばか)って、上手くいったりいかなかったりということがありながらも、係わり合って生きているということが貴(とうと)い奇跡のように感じました。そうであるならば、私たちも奇跡のような舞台を目指して10月からの第二期稽古も頑張りたいと思います!

【プロフィール】
桜美林大学総合文化学群演劇専修卒業。俳優。ワークショップファシリテーター。
大学を卒業後、舞台を中心とした俳優活動と並行して小中学校や劇場などで子供から大人まで様々な人達を対象とした演劇ワークショップの進行も行う。
近年の出演作に、KAKUTA 『Sound Play Series アンコールの夜』、□字ック『荒川、神キラーチューン』など。

公演情報はこちら。
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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯2
『高き彼物』
一般公演:11月3日(木・祝)、5日(土)、13日(日)、19日(土)
演出:古舘寛治 作:マキノノゾミ 舞台美術デザイン:宮沢章夫
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
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□■□■□ 最 新 情 報 □■□■□
11月5日(土)のアーーティストトークのゲストが、
小栗旬さんに決定しました!
*詳細はコチラ


2016年9月2日

【『高き彼物(かのもの)』への道 2歩目】川根町にロケハンへ

8/18(木)にスタートした第1期の稽古もいよいよ終盤戦。
そんな中、俳優やスタッフから「1978年の川根町の様子がわかるものはないか」「実際に地元の人たちの方言を聞いてみたい!」など、資料にとどまらないリアルなものへの興味が湧き上がっていました。
写真1

そこで8/28(日)に稽古がお休みの日を利用して、俳優・スタッフ一同は作品の舞台である島田市川根町へロケハンに行ってきました。

“SLの汽笛が聞こえる静岡県川根町”、『高き彼物』の冒頭にはこう書かれている川根町は、お茶の産地として、また近年は観光地としても紹介されています。

最初に訪れたのは「古民家ひらら」さん。
ここは明治5(1872)年に建てられた古民家で営まれているお蕎麦屋さんです。お店の方がとってもチャーミングで、川根町の歴史や小話を話してくださいました。映画『男はつらいよ 噂の寅次郎』(山田洋次監督 1978年公開)の撮影がまさに当時の川根町で行われたそう。

次に小玉充造さんの農園へ。
浜松出身の劇作家マキノノゾミさんが書いたこの戯曲には、「だら」や「だで」といった特徴的な語尾のつく台詞が数多く登場します。このような静岡の方言を再現すべく稽古を進めていく中で、俳優たちから「戯曲にある方言などの言い回しが難しい」という話題が口々にあがっていました。
そこで、今回のロケハンの前に「NPOまちづくり川根の会」に相談しました。そこで「この人しかいない」と紹介していただいた方が小玉さんです。こちらのお願いをお伝えすると、小玉さんはすぐに仲間に呼びかけてくださり、なんと近所に住む方々まで集まっていただけることになりました!そのような人と人がつながっていく地元の絆に温かさを強く感じました。

写真左:小玉充造さん

集まってくださったみなさんはとても気さくで、俳優たちからも川根町での暮らしや方言について次々に質問が上がります。地元の方々同士の会話が始まると、俳優たちはその言葉に集中して耳を傾けていました。川根町の人や方言のノリを間近でみることができ、作品創作の貴重な体験となりました。
和気あいあいとした時間を過ごし、最後はみんなで記念撮影。

その後は「大井川鐡道」の名物でもあり、作中でも印象的にえがかれているSLを見るため、家山駅へ。
到着時刻が近づくと、遠くから汽笛の音が聞こえ、走行音がだんだんと大きくなってきます。SLが駅舎につくとみんな「乗ってみたい!」と大盛り上がり。残念ながら乗車は出来ませんでしたが、乗客に手を振りながら発車を見送りました。

SLを見送った後は家山駅周辺の散策。
この町に古くからある「茶舗 朝日園」さんと「マルイエしょうゆ川根本家」さんにおじゃましました。昔の写真や創業時代から使われている道具など、貴重なものに一同、興味津々。当時の趣を残した町並みは、作品に思いを巡らせるのにぴったりでした。

川根町の景色や人々のつながりと温かさに触れることのできたこの日のロケハン。ご案内いただいた「NPOまちづくり川根の会」の森下文子さんにはこの場をお借りしてお礼申し上げます。
作品の舞台となった川根町を肌で感じた役者やスタッフたちは、これからどのようにこの物語に向き合い、作品を形作っていくのでしょうか!?どうぞご期待ください!
 
 
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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯2
『高き彼物』
一般公演:11月3日(木・祝)、5日(土)、13日(日)、19日(土)
演出:古舘寛治 作:マキノノゾミ 舞台美術デザイン:宮沢章夫
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
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