ふじのくに⇔せかい演劇祭2018劇評コンクールには計18作品の応募がありました。18作品の内訳は、『寿歌』4、『民衆の敵』4、『夢と錯乱』4、『マハーバーラタ』2、『シミュレイクラム/私の幻影』2、『大女優になるのに必要なのは偉大な台本と成功する意志だけ』2でした。
今回、最優秀賞に選ばれたのは朴建雄さんの【夢幻の彼方に喘ぐ、無限の彼方に呻く ―クロード・レジ演出『夢と錯乱』における〈夜〉の生】です。
朴建雄さんは劇場空間で起きたこととご自身の感性的経験、そしてテクストの内容とを、いずれも濃密に描写したうえで、説得力をもって観劇体験全体の意味を提示できている点で、最も高い評価を得ました。中でも、「聴くとはこれほどまでに触覚的で官能的な体験なのだ」という言葉を納得させるだけの聴覚に関する描写と、戦争のなかの「夜に包まれる錯乱の体験」という解釈とが緊密に結びついている点がすばらしいと思いました。
優秀賞としては、西史夏さんの『寿歌』と高須賀真之さんの【『民衆の敵』―孤立性に耐えるということ―】が選ばれました。
『寿歌』については、戯曲とこれまでの上演史を踏まえたうえで、「命がけ」の意味を見つめる西史夏さんの劇評が最も説得力を持っていました。『民衆の敵』については、高須賀真之さんの劇評が、オスターマイアー演出が投げかけた問いを最も正面から受けとめ、観客としての応答を試みているように思われました。
入選となった山本英司さんの【観客参加型演劇の可能性―『民衆の敵』を観て―】、高須賀真之さんの【『夢と錯乱』―存在を解体する―】はいずれも優れた劇評なのですが、扱っている要素が多いために焦点が絞りにくい分、読後の衝撃感が小さくなってしまい、最優秀賞・優秀賞に挙げた劇評には及ばないという判断となりました。
選考の結果は以上の通りとなりましたが、他にも、心打たれる劇評はいくつもありました。応募いただいたみなさんに、改めて御礼申し上げます。またみなさんの劇評を拝読できるのを楽しみにしております!