2015年3月3日

【SPAC県民劇団】劇団MUSES・近江木の実インタビュー

2013年度に結成した「劇団MUSES」。
大入り満員の中、旗上げ公演『赤鬼』を成功させました。
さあ、今年はどんな公演になるのでしょうか?
『Right Eye』本番を間近に控えた近江木の実さん(劇団MUSES代表)にインタビューしました。

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――「劇団MUSES」を率いて2年目を迎えられましたが、改めてSPAC県民劇団に応募されたきっかけ、動機を教えてください。
県内各地域のいろいろな人との出会いがあって、新しい創造ができる。一年目がとても楽しかったんですね。作品の中身に関しても、手応えがあった、成果が出たというか。もう一度挑戦してさらに刺激を得たい、自分の演劇活動のプラスにしたい、必ずプラスになると思ったものですからね。なので2年目続けてやらせていただきたいと思いました。

――昨年は『赤鬼』、今年は『Right Eye』ですが、野田秀樹さんの作品を選ぶ理由は何でしょうか?
単純に僕、好きなんですよね(笑)。今までいろいろなお芝居を観たのですが、やはり野田さんのお芝居は自分の性に合っているというのもあります。どうして好きかというと、一番演劇的だと思うんですよね、演劇ならではの特徴、特色というのが野田さんの舞台に一番詰め込まれている、という風に思います。なのでそれに挑戦して、演劇人としてその演劇的なものを身につけたい、体験したいというのはありますね。
1998年にNODA・MAP番外公演で上演された『Right Eye』は、少人数でいろいろな創意工夫をして想像力を刺激するような作り方をしていました。道具がごてごてしているとか、大きな舞台でというお芝居ではないんですが、そこにこそ演劇の面白さや手作りの面白さがあり、想像力をかきたてる。それは『赤鬼』もそうだし、『Right Eye』もそういう風に創られている。それが僕らアマチュアも、親しみやすくできるというか、まあお金の問題とかを含めて(笑)、やりやすいと思います。でもそれなりに難しいですけどね、やりだせば(笑)。

――野田秀樹さんの演出では3人で上演されたお芝居ですね。今回どんな演出を試みるつもりですか?
3人での上演は野田さんの挑戦だったと思うし、台本自体はやっぱり大人数でやるにふさわしい芝居ではあるんですね。役はたくさんあって、ほんとに細かい役を入れれば30くらいの役があるんですね。僕らは10数人でやるけれども、それでも足りない(笑)。一人何役かやることで、3人での上演と同じような体験はたぶんできる。しかも見栄え的にはやはり大人数いるので、その戯曲にあったような形の人数の使い方、例えば花火のシーンで人ごみとかになった場合に、僕らは人ごみとかを作れるわけですね。だからこそ、より戯曲に近い形の場面づくりが、書かれている通りのことがやれると思うんですよ。戯曲の持っているものをストレートに出すとこうなりますよ、という風にやりたいと思います。

――近江さんの企画に賛同して集まったメンバーで、「劇団MUSES」が結成されたわけですが、浜松で主宰されている劇団「M-planet」とはどんな違いがありますか?戸惑いや困った点、逆に魅力に感じる部分について教えてください。
戸惑った点、困った点というのはそんなにないです。むしろいい点の方が多いので!ただ、初めて会う人が多いので、どんな人でどんなタイプでというのを把握するのに少し時間がかかります。県民劇団は、劇団とはいえ一種のプロデュース的な公演なので、それぞれが自分の所属劇団があったりして公演をかかえながら参加しているということがあって、全員がMUSESの方にそろうということがなかなか難しい。だから協力していくんですけど、ひとつの芝居を創るのに期間が長くなりますね。劇団MUSESの活動は一年で一本ですけれど、これでちょうどいいくらいですね。半年で一本やるというのはとても同じメンバーではできないですよね。
だからこそ、準備期間がじっくりとれて、考える時間がたっぷりありますよね。いずれにしても時間には追われるんですけど(笑)、自分の中でいろいろ考えたり温めたりする時間はけっこうあります。だから逆に考え過ぎちゃうというか、どんどんやっていかないといけないのに、あーでもないこーでもないとか、途中で変えたくなってしまったり(笑)。考える間がある、そういう利点といっていいのかな、じっくり構えられるというのが魅力でもありますね。

――2年目の挑戦となりますが、去年と比べて何か変化はありましたか?
去年とメンバーが半分以上替わっているのですが、今回の方が年齢層が高いんですよ。昨年は、若い人から年配の方までわりと均等だったんですけど、今回は年配の方が多くて。みんな何も言わなくてもしっかりやってくれますが、ただ統一していくときにいろいろな意見が出てくるものだから、どう統一するか、どちらの意見をとるかという悩みはありますね。喧嘩にならないようにもっていくのが、ちょっと苦労しますね(笑)。
でもすごく個性的かつそれぞれのキャリアがあって経験を積んできた方が多いので、やはり助かりますよね、助かる部分が多い。僕が稽古場に来れないときでも、出演者の滝浪さんを中心に、ちゃんとスタッフワークなども進めてもらっています。

――最後に公演まで残りわずかになりましたが、意気込みを聞かせてください。
寝ずに頑張る!(笑)
最近はあまり寝ていないです…。私の場合家が浜松で遠いのでなかなか通うのが大変ですね。僕の方がもっとしっかりしてばんばんやっていければよいのですが、まあ自分の力量もあるもんだから、これですよってところで止まるんですけども。時間との戦いというか、これから本番まで個人練習などもどこまでやれるかっていう気がかりな点も、ちょっとだけありますよね。

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謙虚な語り口ながらも、作品について熱く語ってくださいました。
経験豊富な劇団員たちに対して「助かる」という言葉を何度も仰る近江さん。
2年目を迎え、劇団員との信頼関係も感じさせられます。
劇団MUSESが織りなすアンサンブル、ご期待ください!

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SPAC県民劇団 劇団MUSES
『Right Eye』
日時:2015年3月7日(土)13:30/19:00開演、8日(日)13:30/17:00開演
会場:舞台芸術公園 稽古場棟「BOXシアター」
http://spac.or.jp/kenmin_201503.html
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2015年3月2日

【県民劇団ブログ】次は劇団MUSES!!

2/28・3/1、「劇団壊れていくこの世界で」旗揚げ公演、『オレステス』が幕を閉じました。
ご来場ありがとうございました。

さて、終演後には劇団員総出で片付け。
数時間前まで、生け花や石が飾られ、和のテイスト溢れる舞台があったのですが・・・
すっかり空っぽに。

終わってしまったなあと思い、少し感傷的な気持ちになってしまいます。

しかし!
今週末には「劇団MUSES」の『Right Eye』が!!
入れ替わりで、早速仕込みや道具作りの仕上げが始まりました。

真剣な眼差しで、急ピッチで作業が進められています。

結成から2年目を迎え、さらにパワーアップした劇団MUSESに、どうぞご期待ください!

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SPAC県民劇団「劇団MUSES」
第2回公演『Right Eye』
日時:3月7日(土)13:30/19:00開演、3月8日(日)13:30/17:00開演
会場:舞台芸術公園 稽古場棟 BOXシアター
チケット:SPACチケットセンター Tel.054-202-3399(10:00~18:00)
http://spac.or.jp/kenmin_201503.html
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2015年2月27日

<萌目線。vol.115>ハムレットを楽しむためのひとつの…

Filed under: 萌目線。

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静岡のみなさまは、街中各所でこのポスターを見かけられるかと思います。

絶賛上演中のハムレット!!

平日のげきとも公演も土日の一般公演もまだまだ予約受付中です。

ハムレット(武石守正 好きな食べ物…おもち)の凄まじいエネルギーも、
オフィーリア(布施安寿香 貸してくれるマンガ…一条ゆかり『プライド』)の可憐な狂気も、
客席までビシビシと伝わってくるかと思いますが

舞台上で繰り広げられる物語にパワーを注ぎ続けている彼らのことを無視することはできません。

旅役者のみなさま!!
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オープニングからダイナミックな演奏はもちろん、
王宮で上演されるこだわりの詰まった劇中劇はお楽しみポイント!
キャラ立ちしたチームワークで作品を怒涛のエンディングへと運んでいきます。

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細かい芸までどうぞお見逃しなきように!

例えば…吉見さんのお髭のカーブの角度とかも。

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げきとも公演も一般公演も、終演後は出演者がご挨拶に出てまいりますので、
感想や質問などぜひ直接お声かけください!
 
 
★『ハムレット』公演の詳細はこちら

<萌目線。>とは・・・ SPAC俳優石井萠水の目線で稽古場や舞台裏の様子をお届けしています。
GREEでもブログ更新中。


【映像】『ハムレット』アーティストトーク

『ハムレット』公演では、
お客さまにより劇場体験をお楽しみいただくために
終演後に「アーティストトーク」を開催しており、
そのトーク映像をウェブサイトで公開しております。

2015年2月21日(土)
メゾソプラノ歌手の波多野睦美さんをゲストにお招きし、
演出の宮城聰(SPAC芸術総監督)、司会:大岡淳(SPAC文芸部)の3名でトークを行いました。
 ※最後約5分が映っておらず申し訳ございません。

 
*波多野睦美さんは、2015年6月、宮城聰演出のオペラ≪ポポイ≫(主催:静岡音楽館AOI、協力:SPAC‐静岡県舞台芸術センター)に出演されます。こちらもどうぞお楽しみに!公演詳細


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SPACレパートリー
『ハムレット』
2015年2月16日~3月12日
公演の詳細はこちら
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2015年2月25日

<萌目線。vol.114>パクウェなび その1

Filed under: 萌目線。

先日、今年のふじのくにせかい演劇祭のラインナップが公開されました!
関連企画やnedocoプロジェクトなど…
今年もお楽しみいただけそうなポイントが盛り沢山です。

さてそこで今年は…

心にいつでもやらまいか!祭りが命の浜松市出身、わたくし石井萠水と、
あなたのカテキンマネージャー☆静岡市出身の山本実幸が、

観劇の合間の休憩やお食事をお楽しみいただける、
劇場近くのお店をこちらでご紹介していきたいと思います!

1件目は…芸術劇場から舞台芸術公園へ向かう「日本平パークウェイ」沿いに新しくオープンしました、
アポアローズ!

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一口食べたらHAPPYな気持ちになっちゃう~ケーキ屋さん だそうです。

お店に入ってすぐに、宝石箱みたいなケーキのショーケースが。
どれも美味しそうで迷いますが、
なんとパスタやホットサンドといったお食事メニューもあって
ますます注文に迷ってしまいます。

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この日は、実幸っちと二人でエビアボカドのホットサンドとイチゴのタルト、ミルクレープをドリンクセットで注文。

紅茶は数種類の中から茶葉を選べるのが嬉しい楽しいところ!

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デートでも女子会でもご家族連れでものんびりできる広々フロアは、
ゆっくりお茶の時間が楽しめそうです。
まるでテーマパークのような色合いのインテリア!

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注文したメニューの数々…

ケーキはお皿にフルーツソースでデコレーションしてくださるので、
目にも美味しい一皿になって登場。
ホットサンドもポテトも嬉しいボリューム感。

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ティーポットやカップからカトラリーまで、女子はキュンとしてしまう可愛いデザイン!

実幸っち「苺がぎっしり詰まっていて、すごくジューシー!
正直甘いものはあまり得意ではないのだけれど、自然な甘さでペロリでした」

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自家用車でいらした方はもちろん、
静鉄バス日本平線のバス停「畑守稲荷」がすぐ近くなので、
寄っていただきやすいかと思います。

みなさまぜひ観劇と合わせて、HAPPYな気持ちになりにアポアローズさんへ!!


アポアローズ
静岡県静岡市駿河区池田1156-1
TEL.054-208-1080

<萌目線。>とは・・・ SPAC俳優石井萠水の目線で稽古場や舞台裏の様子をお届けしています。
GREEでもブログ更新中。


【県民劇団ブログ】劇団壊れていくこの世界で、小屋入りしました!!

九州では早くも春一番が吹いた先週日曜日。
静岡市内はしとしと雨が降るあいにくの天気の中、
県民劇団「劇団壊れていくこの世界で」が、
2月28日(土)、3月1日(日)に上演する『オレステス』の公演に向けて、小屋入りしました!

朝から軽トラが舞台芸術公園内を何度も行きかい、
会場となる舞台芸術公園 稽古場棟「BOXシアター」に運び込んでいたのは、玉砂利に木の枝など…。
これらを何に使うの?と思っていたところ…

舞台上にダイナミックな生け花が!!

メンバーのひとりが「生け花を始めたので」ということで、舞台美術にチャレンジしたそうです。
ご本人はビギナーズ・ラック、とのことでしたが…、とてもそうは思えません。

稽古場にお邪魔した時は、ちょうど照明作業の真っ最中!

そして舞台の一角では、メンバーが動きの確認をしていました。

木田さんがインタビューで語った、今回の舞台でもこだわる「和のコンセプト」。
※インタビュー内容の詳細は前回の県民劇団ブログをごらんください。

今日の仕込みで少しずつ明らかになりましたが、
生け花の他、衣裳や小道具など、様々な“和の要素”が組み合わされ、
そして“和”とはかけ離れた「ギリシャ悲劇」と出会った時、
どんな舞台がここBOXシアターに出現するのでしょうか?

新たなギリシャ悲劇『オレステス』の誕生を、どうぞお見逃しなく!!

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県民劇団「劇団壊れていくこの世界で」
旗揚げ公演『オレステス』
日時:2月28日(土)13:30/19:00開演、3月1日(日)13:30開演
会場:舞台芸術公園 稽古場棟 BOXシアター
チケット:SPACチケットセンター Tel.054-202-3399(10:00~18:00)
http://spac.or.jp/kenmin_201502.html
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2015年2月24日

『ハムレット』 観劇レポート(清野至)

 2月20日金曜日、『ハムレット』を観た。上演時間は約100分。短い。昨今の映画が、軒並み2時間半とか3時間とか、果ては二部作三部作と化していることを思うと、シェイクスピアの古典劇が2時間弱で観られるというのは何だかお得な気分。
 今回、フライヤーを見て観劇を楽しみにしていた。主演俳優を前面に出したヴィジュアルはもちろんだが、僕は煽り文句に魅力を感じた。

――悩め!悩め!悩め!!
 「生きるべきか、死ぬべきか」。有名なセリフの通り、ハムレットといえば優柔不断な青年の身に起こる悲劇というイメージが強かった。そうか、悩んじゃうのかハムレット。なんて思いながら楽しみにしていたが、観劇後思ったことは、「それほど悩んでない」。元の戯曲はシェイクスピア劇の中で最も長く、登場人物も多い。それらを切り詰めたため(亡霊役がいないなんて!!)、そう感じたのかもしれない。SPACのハムレットは力強かった。時に荒々しく、時にユーモラスで、時に聡明。とても魅力的な人物だった。優柔不断な人間よりも単純に見ていて楽しい。しかし、ハムレットがそれほど悩まないとなると困ったことがあることに気づいた。
 『ハムレット』はなぜ悲劇的結末になったのか?僕は今まで、ハムレットが優柔不断だからだと思っていた。その方が解りやすくて助かる。ところがそうではない。となるとハムレットの悲劇的結末の原因はなんだったのか。例えば、『リア王』では年老いたリア王が聡明な末娘を勘当してしまう場面から悲劇は始まる。『マクベス』では、マクベスは魔女と夫人の甘言に唆され君主を暗殺してしまう。もちろんこれらだけが原因ではないだろう。しかし、極めてわかりやすい悲劇の引き金であると思う。一方、ハムレットは何をしたのだろう。ある意味では何もしていない。この悲劇には、盛者必衰坂を転がり落ちるようなマクベスの悲劇も、荒野を彷徨うリア王の巨大な絶望もない。ハムレットにあるのは復讐を果たすまでの逡巡と狂気だ。思えば『ハムレット』は物語の始まった時点で悲劇的状況だ。先王は亡くなってしまい、ハムレットは悲しみの底にいる。

 ――『ハムレット』は、解答ではなく、疑問を表現する芝居
 宮城さんの言葉を聞いて、少し腑に落ちる。悩め!というのは、観客に言われていたのかもしれない。『ハムレット』には劇中劇をはじめとして、芝居自体について言及したセリフも多い。最後、ハムレットが死ぬ場面を観ている時に、強くそう感じた。
 力強く魅力的なハムレットの身におこる悲劇は、悲しかった。彼が魅力的であればあるほど、孤独と悲しさが際立ち、悲しかった。そしてなぜ悲劇的結末になってしまうのか、僕は悩まずにはいられなかった。端的に言えば、ハムレットはそんなに悪くない。彼にこんな目に合うほどの落ち度があるとはどうしても思えなかったのだ。
 幕切れは唐突だった。今までのハムレットの苦悩を塗りつぶすように、大量の“敵国”が流れ込んできて驚いた。舞台上に溢れかえる大量のそれを見ながら、ハムレットのことを考えていた。ハムレットは復讐を果たすが、これは彼の望んでいた結末だったのだろうか。いや、この結末は多分違うのだが、ではどのような結末だったら良かったのだろうか。なぜこうなってしまったのか。

 悩み事にはなかなか答えが出ない。ないのかもしれない。しかし、だからこそ楽しい。世界中で愛される芝居の奥深さに、少し触れられた気がした。
 最後に、「生きるべきか、死ぬべきか」というセリフは劇中では「このままでいいのか、いけないのか」と訳されている。僕の手元にある文庫と訳が違うため、本屋に走った。日本でも愛されている戯曲だからこそ、翻訳もいろいろある。小田島雄志さんの翻訳で、これから戯曲を読み直すのが楽しみだ。
 わずか100分の芝居だったが、思いのほか時間を取られそうだ。

2015.2.21 

IMAG0013_2清野至(きよの・いたる)
1988.2.9生
静岡大学演劇部OB
2013年より、劇団静火に所属し第六回公演「三人姉妹」より同劇団で役者として活動中。



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SPACレパートリー
『ハムレット』
2015年2月16日~3月12日
公演の詳細はこちら
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『ハムレット』 観劇レポート(樫田那美紀)

「どの私が本当の私なのか?」
SPAC版「ハムレット」を観劇し、劇場を後にした私の頭にはそんな問いがぐるぐると渦巻いていました。

若き王子ハムレットは、亡くなった父の霊から、父を殺したうえ母と結婚し王座を乗っ取った叔父クローディアスへの復讐を命じられます。
復讐を誓ったハムレットは自ら狂った振る舞いの真似事をし、周囲を翻弄していきます。
私は、ハムレットがオフィーリアの愛を切り捨て、母を追い詰め、叔父を罵倒する姿を最初は同情の眼で見ていました。
―なぜこんなにも自らを孤独に追い込むのだろうか。
―ハムレットが救われることはないのだろうか。
―彼はこのまま人殺しへ突き進んでしまうのだろうか。
父を亡くしたハムレットの深い怒りと悲しみ、自らを孤独へ追い込んでゆく営みに宿る先の見えない不安を、観客である私は憐れみ見つめることしかできません。

しかし、物語が進むにつれ、わからなくなっていったのです。
果たして憐れむべき存在は自ら狂人を演じるハムレットなのか?
むしろ憐れむべきはオフィーリアに母に叔父、そんな真人間として生きている「つもり」の彼らなのではないか?
狂人を演じるハムレットはひたすら、亡き父の命令に忠実であろうとしました。
つまり狂人を演じることはあくまで彼なりの「真実の生き方」だったのではないか。
むしろ、ハムレットや周りの人間に嘘をつき、自分の心をもごまかし、自らを「真人間」と信じて知らん顔で生きるほうが、憐れな生き方なのではないか・・・。
物語の終盤、そう感じた私の目の前で、彼らの劇的な崩壊が始まります。
彼らは自らを真人間だと信じ疑うことないまま、本物の狂人へと突き進んでいきます。
それと同時にハムレットは、狂人を演じながら、純粋でまっすぐな心で、より深い「孤独」へと自ら一直線に溺れていったのです。
誰かにとっての狂気は誰かにとっての正気であり、誰かにとっての正気は誰かにとっての狂気なのかもしれません。
残酷です。
しかし、そんなドミノ倒しのような残酷な崩壊に、私はどこか美しささえ感じていました。
そんな自分を見つけた時、確かであると信じていた自分の良心さえ虚構の作り物のように感じられ、私は、自分が大きくぐらつくようなショックを受けました。

幕切れの後、私はじっと自分を見つめ、問いかけます。
この私はどこまでが演技で、どこまでが本当の自分なのだろうか?
目の前の舞台の中の舞台で演じる道化役者ハムレットに、私の心の中にひっそりと住まう「役者」の存在をさらりと暴かれてしまったようです。

SPAC版「ハムレット」。
一枚の銀色の布上で描かれる人間模様は、自分も知らなかった自分の素顔を照らしてくれました。その体験は、少しだけ苦くて、少しだけ、私を生きやすくしてくれています。

IMG_2218樫田那美紀(かしだ・なみき)
1993.7.21生
静岡大学人文社会科学部社会学科人間学コース所属。
出身地は石川県。晴れの国静岡での温暖な生活を絶賛満喫中。



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SPACレパートリー
『ハムレット』
2015年2月16日~3月12日
公演の詳細はこちら
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【ハムレットを愉しむための10の事柄 その8】 観劇感想&写真館「ゲネプロ編」


ハムレットの咆哮が胸を打つ、オフィーリアの死。「今回もまた、泣いちゃいました」(SPAC俳優・木内琴子)

 
 
一般公演、初日の幕があきました!
観劇後に寄せられた感想の数々と、舞台写真をお楽しみください!

「たのしく、どきどきしました。家族でまた来たいと思います。」(50代女性)

「オフィーリア役の役者さんは、どことなく不思議な雰囲気を醸し出せる方で、”ふつうでない”部分を演じるのがとても上手いと思いました。」(10代男性)
「オフィーリアの1人で語る場面がすごく印象的で好きでした。ハムレットのオフィーリアを見つけて泣くところも良かった。また見たい!!」(20代女性)

「実は私は、ハムレットの原作を読んだことがなく、今回、少し不安でした。が、それでもちゃんと観ることができ、良かったです。次回作も楽しみです。」(10代女性)

「これからも強いメッセージを持った作品を、どんどん作ってください。」(40代男性)

「初めて中に入りましたが、とても落ち着いていて、居心地のいい劇場で、良かったです。まさか、上からあんなものが落ちてくるとは思わず、おどろきです。」(30代女性)
「最後をもう一度考えたいと思いました」(50代男性)
「終わり方が衝撃でした。ポスターデザインにもひかれました。」(40代男性)
※このシーンは観てのお楽しみということで。

「緊張しながら、面白さを味わった。あの時代のこと―過去の思い出―宿命―復讐の連鎖―、様々な表情の場面を追い続けているうちに、夢から醒めるような感覚に、ちょっと驚かされました。」(50代女性)

「出演者の芝居が上手く、演出も斬新で古い原作を現代風にセリフを散りばめたり、何よりも音楽が非常に良かった」(50代女性)

「「狂気」こそが「生きてる」証なのかもしれませんね」(20代男性)

「初めて劇場で演劇をみました。自分もその場にとけこむような気持ちでみれて、面白かったです」(10代女性)

そのほか、
「ハムレットが元の人間に戻れるかどうか、すごい緊張してドキドキしながら観れました。」
「主人公の心の苦しみとか葛藤とか、そういうのが映画とかじゃ感じられないくらい、いきいきと伝わってきて、とても感動しました。」
「初めてこういうの観たんですけど、役者さん達の演技がものすごく真に迫ってて、人間っぽい悲しんだり喜んだりが、激しく伝わってきて感動しました。ぜひ次の作品も観てみたいと思います。」

などなど。
ちょっとでも気になった方は、劇場へ!
一般公演は2月28日(土)、3月1日(日)、7日(土)の残り3回です!。
(平日公演の詳細はこちらで確認できます)

※【ハムレットを愉しむための10の事柄】バックナンバーはこちらです。

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SPACレパートリー
『ハムレット』
2015年2月16日~3月12日
公演の詳細はこちら
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2015年2月21日

【SPAC県民劇団】劇団壊れていくこの世界で・木田博貴インタビュー

暦の上では、季節はもう春…、ですが、日々寒さ厳しい舞台芸術公園。
ここでは、公演まで残りわずかとなったSPAC県民劇団、
劇団MUSESと劇団壊れていくこの世界での熱い稽古が、日々行われています。
※稽古の様子は、「制作部よもやまブログ」を是非ご覧ください。

先に本番を迎えるのは、
今年度新たに発足した県民劇団「劇団壊れていくこの世界で」。
旗揚げ公演は、古今東西の名だたる演出家が挑んできた
ギリシャ悲劇の傑作『オレステス』です。

劇団代表の木田博貴さんは、
今静岡県内で最も勢いがある、と言っても過言ではない若手演出家。
そんな木田さんに稽古の合間のお時間をいただき、
この傑作をどう読み解き、どんなコンセプトで演出を試みるのか、など
じっくりお話を伺いました!!

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――木田さんは、「Z・A」という劇団を主宰し、藤枝を拠点に活動していらっしゃいますが、県民劇団に応募されたきっかけ、動機を教えてください。

ずっと自分の劇団で演劇をやってきたんですが、やりたいことが、増えちゃったんです。初めは「これだけやりたい!」って感じでZ・Aを始めたけれど、Z・Aではやってはいけないこと、できないこともいっぱいある気がしていました。あれもやりたい、これもやりたい、となった時に、自分の演出でどういうことができるのか、色々なところで挑戦したくなって。今回この(SPAC県民劇団の)話があった時に、知り合いの演出家さんたち、(がくらく座の)佐藤さん、(劇団静火の)渡辺さん、(劇団MUSESの)近江さんなどがチャレンジしているのを見たり、聞いたりして、俺もやってみたいなって思ったのがきっかけです。

――なぜ旗揚げ公演で『オレステス』を選ばれたのですか?

色々と悩んだんですよ。やりたいものがいっぱいあって。でも最初からプランは「和のコンセプト」でいきたいっていうのがありました。
「和のコンセプト」を押し出して何ができるかって考えた時に、俺も近江さんみたいに野田秀樹さんの戯曲がやりたかったんですよ。すっごい野田さんが好きなので。あとは劇団新感線が好きなので、新感線みたいなエンターテイメントをやったら、今までの県民劇団とはちょっと違うんじゃないかっていうのもありました。でも、「新感線って元々“和”じゃん!俺がやる意味ないなー」って思った時に、「じゃあ最も和に合わないもの、イメージが無いものって何だろう」って考えて、ギリシャ悲劇や海外の戯曲が思い浮かびました。
海外の戯曲って詳しくなかったんですが、DVDなどで蜷川幸雄さんの演出を見る機会が多くて、その中で何個か、『オレステス』とか『カリギュラ』とかやってみたい作品がありました。あと、シェイクスピアも候補にいくつか挙げたんですけれど、考えていった時に、今の自分で一番チャレンジしたかったのが『オレステス』だったんです。生きることに対して、すごくこう“乾いている”感じがオレステスにはして。今の世の中って、別に生きようと思わなくても生きられるし、死のうと思わなければ生きられますよね、基本的には。でも、実は生きることってすごくパワーがいるんだよ、とかこんなにも素晴らしいことなんだよっていうのを感じて欲しいですね、特に若い子たちには。

――木田さんのお話の中でも既に出てきましたが、『オレステス』といえば、蜷川幸雄さんはじめ、国内外問わず多くの演出家が様々な演出を試みてきた作品ですよね。今回木田さんは、どんな演出を試みるつもりですか?

俺はすごく蜷川さんの影響を受けているんですよ。むしろやれるならアレをやりたいんですけれど。でもそれはやっても無駄、というか蜷川さんがいるし、二番煎じをやりたいわけではないので。
自分の演出の特徴は、大きく分けて二つ置いています。一つは、先程言った「和のコンセプト」です。和柄が好きだったり、和の空間に落ち着きを感じるようになって。日本人は“和”に対する安心感があるなって思った時に、観ている人って日本人が多いわけですから、(和のコンセプトを入れれば)どの作品でもしっくりきちゃうんじゃないのかなって。外国の人に観せるために和を使うのではなくて、日本の人たちに、難しい話を少しでも身近に感じられるように、安心して観られるように、和を入れたいっていうのがあります。
話が前後してしまうんですが、以前後輩の演出家、俺より多分勉強している子なんですが、と藤枝などでコラボしたことがあって、その時「脚本から演出を考えることは多いけれど、演出から脚本はあんまり考えないよね」って話をして。じゃあ「この演出をするために、この脚本を選びます」っていうスタイルがもっと多くてもいいんじゃないかって思ったんです。自分が今色々な作品に対してチャレンジするのは、やはり「和の雰囲気」なので、たとえ蜷川さんが演出した(『オレステス』以外の)作品を演出することになっても、絶対そこは入れていくと思うんです。オリジナルで書いた台本なら違うと思うんですが、既成の戯曲をやる場合は、このコンセプトは絶対外さないっていうのがありますね。

――木田さんの企画に賛同して集まったメンバーで、県民劇団「劇団壊れていくこの世界で」が結成されたわけですが、結成して約10か月が経ち、ご自身がずっと主宰してきた劇団Z・Aとどんな違いがありますか?戸惑いや困った点、逆に魅力に感じる部分について教えてください。

いや、めっちゃあるんですけれど…(笑)。
まずは、今まで一緒にやったことがない人が多く、彼らがどういう芝居創りをしてきたのか確認できない状態からのスタートだったのが、すごくプレッシャーでしたね、毎日。「こんなことしかできねーのかよ」と思われていたらどうしよう…、といつも緊張していて。これは自分の劇団とは違いましたね。自分の劇団は、言わなくても全部わかってくれるので。でも今回は、参加した役者やスタッフがみんな、自分のやり方が本当にここでは正しいのだろうかって俺と同じように思っていたと思うんです。だからみんな何か一歩踏み込めずに、ずっと牽制し合っていて。俺も「どこまで伝わるかなぁ」って常に思いながら、一生懸命言葉を選んで色々なことを伝えようとして。それが新しい試みでもあったし、自分の中ではすごい新鮮だったんです。嫌ではなくて、本来こういうことをしなければならないんだろうなって。自分の劇団では甘えていた部分がすごく分かりました。
また、自分の劇団だと、自分が脚本書いて演出してって感じなので、「これはこうやって」とかどんどん言っちゃうんですよ、向こうが出してこない限りは。でも県民劇団では、各々が自分なりのやり方や良いものを持っていて、でも何を持っているのか全然分からないっていう状態からのスタートなので、みんなが全力を出さない限りはこちらも全力で応えられない。稽古が佳境になってきた時に、ようやく「あ、こういう良いところがあるんだな」とか「こういう役者さんなんだ」っていうのがわかってきて。そこをどうやって活かしつつ、自分の演出を活かしていけば良いんだろう、という点が面白いし、良い意味で苦痛ですね。「これ、良いな」って思うけれど、俺の演出と合わないな、でもそれを組み合わせるのが俺の仕事だ、とか考えると、キツイけどすごく楽しいですね。

――ちなみに、ずっと気になっているのですが…、劇団名の「壊れていくこの世界で」は、どんな想い、理由で付けられたのですか?

名前の由来は特に無いんです(笑)。意味もなくて、ダサい名前を付けたいなって思っただけなんです。
本当は、名前を付けるのが一番嫌いなんですよ、何にしても。脚本のタイトルや役名を考えるのも嫌ですし。付けようとすると、意味を持たせたくなっちゃうんです、特に役名とか。何かに関係した名前とか、そこだけは統一したくなってしまって。でもそれも疲れてきてしまって、もう適当で良いかなーって。でも、適当だけど「ん?」って思わせたいってあるじゃないですか。そう思った時に、これまでの県民劇団の名前を調べたんですよ。がくらく座、静火、静岡県史、MUSES、みんな由来があって、カッコいいなって思ったんです。そこで、じゃあ由来も何もなくて、「何カッコつけてるの?」っていう名前にしようって(笑)。SPAC県民劇団ってカッチリしているイメージなんですよ、たぶん、特に若い子からすると。そんな中に、こんな中二病みたいな名前がくるってことは、「SPAC何か変わったのか?」って思われるんじゃないかって。
県民劇団に応募した最初の話じゃないんですけれど、実は「俺なんて受からないだろうな」っていうところからスタートしているんです。今まですごい勉強をしてきたわけじゃないし、自分が本当にカッコいいなって思うものを独学でやってきただけなので。でも、自分が藤枝や静岡中部でそれなりに若い子たちから支持をもらってここまで来られたのは、そういう層に対して、今まで働きかける演出家や演劇がなかったからだと思っているんです。正統派の演劇を創っている方からすれば、木田博貴って「ああ、あの中二病ね」みたいな感じのイメージがたぶんあると思うんです。でもそんな自分がもし選ばれたら、面白いんじゃないかって。俺より若い子たちが、「木田さんみたいな中二病でもいいんだ、じゃあ自分もやれるかな」って思って、新しい何かが広がっていけば良いなって。今まで県民劇団をやってきた方って、まあ言っちゃえば有名人なんですよね、静岡で。渡辺さんは県外でも賞とか取っているし、佐藤さんは東京でもやったことがあるし、松尾さんも元SPACで、県西部で名前も売れているし、近江さんも長くやっていて、知識も豊富。その中で、次が俺っていうのが、結構大事だって思っているんです。ちょこちょこ名前は聞くけど、SPACっぽくないよね、みたいな。だから劇団名についても、「ふざけた名前にしやがって」って思って観に来ないなら来ないで全然構わないんです。だって元々俺の演出がちょっと外したいってところにあるんで。

――最後に、公演が近づいてまいりましたが、意気込みを聞かせてください。

俺はいつもそうなんですけど、やるからには最高の舞台を創りたいんですね。何をもって最高なのかは、人それぞれですし、俺にもはっきりとした基準はないんですけど。それに今までどれだけやっても最高の舞台は創れていないんですね。だって、必ずどこか足りない部分はあって、例えば稽古スケジュールの組み方一つにしても色々な可能性があったわけで、もっと出来たことは必ずある、だから俺にとって作品は毎回失敗作とも言えるのかも。それでも目指している場所が、絶対に他の演出家さんに負けない自信はあるので、今回の『オレステス』が俺の、そして「壊れていくこの世界で」の全てではなく、その片鱗を感じてもらえたらな、と思っています。こいつら、これからもっともっとすごいことやるんじゃないか、って感じてもらえたらいいなぁって。
今後も注目してもらえるような作品創りを限界まで挑戦していきます。
『オレステス』の主人公オレステス同様、「壊れていくこの世界で」の現在と未来を楽しんでいただければ幸いですね。是非、観に来てください。

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私たち日本人にとって安心感のある「和のビジュアル」と、
極度の緊張感が漂うギリシャ悲劇『オレステス』が融合した時、
何が生まれるのか…?
とてもワクワクしてきました!
劇団名の謎も解けましたね(笑)

県民劇団・劇団壊れていくこの世界で
旗揚げ公演『オレステス』、
2月28日(土)13:30/19:00開演、3月1日(日)13:30開演、
会場は舞台芸術公園 稽古場棟 BOXシアターです。
是非、ご覧下さい!!
☆詳細はこちらhttp://spac.or.jp/kenmin_201502.html