2016年1月12日

<潜入!『黒蜥蜴』の世界(11)>「おためし劇場」レポート

こんにちは。

1月10日(日)に開催いたしました『黒蜥蜴』「おためし劇場」の様子をレポートします!
写真は、SPACシアタークルーの猪熊康夫さん、平尾正志さんに撮っていただきました。

富士山がきれいに見えるカフェシンデレラからスタート。
4回目を迎えた「おためし劇場」は、
最も多い80名のお客様にご来場いただきました。
なかには、毎回足を運んでくださる方もいらっしゃり、感謝感謝です。

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劇場に入ると、舞台上には圧巻の舞台装置が!

演出の宮城聰のあいさつ後、
稽古を『黒蜥蜴』冒頭から約30分見学しました。

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本番さながらの稽古に、
「黒蜥蜴の世界にぐっと引きこまれました」
「役者さんの緊張感、エネルギーを感じました」
「30分があっという間」

などの声が続出!

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↑黒蜥蜴(緑川夫人)役のたきいみき
 
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↑岩瀬早苗役の布施安寿香
 
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↑岩瀬庄兵衛役の阿部一徳
 
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↑明智小五郎役の大高浩一(右)
 
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↑雨宮潤一役の若菜大輔
 
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舞台の左右には演奏エリアが。

 

稽古見学の後は、宮城聰によるトーク。

お客様から寄せられた、
「どうして『黒蜥蜴』を上演しようと思ったんですか?」
という質問に対しては・・・

三島由紀夫の作品をはじめて観てもらうには、『黒蜥蜴』がいいのではないか。
この作品は、三島さんの文体の見事さ・美学が非常によくでていて、
一方では探偵小説のプロットを使っているので、
どなたにも興味を持ってもらえると思いました。
(宮城)

また、
『黒蜥蜴』における俳優の演技については・・・

自分にとっての美は自分が作り出すもの、
それはもともとあるナチュラルなものではなく、
もっとも人工的なものが自分にとって真実の美ということになる。
ナチュラルなモノの方がかえって嘘くさい、というか。
三島さんはそういうところがあったと思うんですね。

なので、演技もより人工的に、と思っています。
俳優の身体がナチュラルだと三島さんの文体に負けてしまう。
自分の身体をもう一人の自分が彫刻をつくるようにして舞台に置く感じ。
(宮城)

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舞台美術については、デザイナーの高田一郎さんからお話しいただきました。

黒蜥蜴のなかに出てくる東京タワー。
この東京タワーが出来上がった時代は、
日本が敗戦を経て、ひと踏ん張りして頑張り始めた時代なんですね。
東京の街を歩いていると、ビルがどんどんできていく。
それがこの時代の活力でもあった。
そのエネルギーをデザインにとりいれたいと思って、
建築に使われていた「鉄骨」で舞台をつくりあげたいと思ったんです。
(高田)

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そのほか多くのご質問をいただき、
ものすごく集中してトークを聴いてくださっている様子がひしひしと伝わってきました。

トークが大いに盛り上がってきたところで時間がやってきてしまい「おためし劇場」は終了。

お客様からいただいたアンケートでは、
「続きが早く見たい!」
とのお声をたくさんいただきました。

『黒蜥蜴』は、
中高生鑑賞事業1月14日(木)より、
一般公演1月16日(土)よりスタートいたします。

宮城聰演出・SPACの新作をどうぞお見逃しなく!

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​1~2月 SPAC新作
『黒蜥蜴』
演出:宮城聰/原作:江戸川乱歩/作:三島由紀夫
音楽:棚川寛子/舞台美術:高田一郎/照明デザイン:沢田祐二
出演:SPAC
静岡芸術劇場
◆公演の詳細、アーティストトークなど関連企画の詳細はこちら
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2016年1月8日

<潜入!『黒蜥蜴』の世界(10)>圧巻の舞台装置!!!

Filed under: 『黒蜥蜴』2015

年も明け、『黒蜥蜴』初日が近づいてまいりました!
現在は、実際の舞台上で、日々稽古を行っています。

舞台装置が組みあがるまでの過程を追ってみましょう。

1
『薔薇の花束の秘密』の舞台セットの片付けが終わった静岡芸術劇場。

2
舞台上に大きな台が出現!いつもの劇場とはこの時点で景色が一気に変わってしまいました。

3

4

6(トリミング)
そして両端に鉄骨が組み立てられ、さらにさらに高さが加わります。

3人(
左から、照明デザイン・沢田祐二さん、演出・宮城聰、舞台美術・高田一郎さん。

9(トリミング)
高田一郎さんのプランが最初に提示されたのが、10月頭。遂に、装置が組みあがりました!
出演者が、舞台監督・山田貴大に装置の説明を受けながら、舞台上を確認中。
全体像は、まだまだこれからのお楽しみ!

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まずは、1月10日(日)の「SPACおためし劇場」で一足早くお披露目します!
おかげさまで定員に達したため、予約を締め切らせていただきましたが、
当日の様子は本ブログでもご紹介しますので、どうぞお楽しみに。

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​1~2月 SPAC新作
『黒蜥蜴』
演出:宮城聰/原作:江戸川乱歩/作:三島由紀夫
音楽:棚川寛子/舞台美術:高田一郎/照明デザイン:沢田祐二
出演:SPAC
静岡芸術劇場
◆公演の詳細、アーティストトークなど関連企画の詳細はこちら
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2016年1月6日

<萌目線。vol.127>今年もどうぞよろしくお願いします!!

2016年がはじまりましたね!!

今年もこちらで稽古場の様子やオススメ情報、メンバーの意外な一面などなど…お伝えしていきたいと思っておりますので
みなさまチェックよろしくお願いします!!

この時期の舞台芸術公園は、晴れていれば富士山がとってもキレイに見えますよ。
記念写真の撮影におすすめです!

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『青森県のせむし男』にご来場のみなさま、ぜひ観劇の前後に静岡ならではの富士山が望める景色もお楽しみくださいね。
上演の無い日も、ぜひお散歩にいらしてください!

私たち『黒蜥蜴』チームの仕事始めはトレーニングからはじまり、一日転換稽古でした。

新春新作公演『黒蜥蜴』は、大がかりな場面転換が見どころのひとつと言えるかもしれません。
左右の袖から、上から下から…色んな物が出たり入ったりしますよ。

スタッフと出演者の手によって舞台美術がどんな形に変わっていくかもどうぞご注目ください!!

ご予約はまだまだ受付中です!

今年もみなさまと劇場でお会いできますことを楽しみにしております。

<萌目線。>とは・・・ SPAC俳優石井萠水の目線で稽古場や舞台裏の様子をお届けしています。
GREEでもブログ更新中。

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​1~2月 SPAC新作
『黒蜥蜴』
演出:宮城聰/原作:江戸川乱歩/作:三島由紀夫
音楽:棚川寛子/舞台美術:高田一郎/照明デザイン:沢田祐二
出演:SPAC
静岡芸術劇場
◆公演の詳細、アーティストトークなど関連企画の詳細はこちら
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2015年12月30日

【映像】 『室内』アーティスト・トーク

Filed under: 『室内』2015

2015年10月に『室内』神奈川・静岡両公演で行われた、
クロード・レジ氏と宮城聰のアーティストトークの様子を
ウェブ公開いたします。

『室内』神奈川公演 10月3日 アーティストトーク

『室内』静岡公演 10月10日 アーティストトーク
前半

後半

あわせて、日本公演のレビュー、レジさんへの動画インタビューも
ご紹介いいたします。

演劇情報サイト・ステージウェブ
演出家クロード・レジが語るSPAC『室内』
http://www.stageweb.com/interview/201512520/

演劇最強論-ing
【連載】マンスリー・プレイバック(2015/10)
徳永京子と藤原ちからが、前月に観た舞台から特に印象的だったものをピックアップ。ふたりの語り合いから生まれる“振り返り”に注目。
http://www.engekisaikyoron.net/playback201510/

観客発信メディア WL
【劇評】緩やかさと静けさのなかでの神秘的体験
 クロード・レジ演出×SPAC『室内』

 片山 幹生
http://theatrum-wl.tumblr.com/post/134115015206/%E5%8A%87%E8%A9%95%E7%B7%A9%E3%82%84%E3%81%8B%E3%81%95%E3%81%A8%E9%9D%99%E3%81%91%E3%81%95%E3%81%AE%E3%81%AA%E3%81%8B%E3%81%A7%E3%81%AE%E7%A5%9E%E7%A7%98%E7%9A%84%E4%BD%93%E9%A8%93


<潜入!『黒蜥蜴』の世界(9)>2015年ラストスパート!

Filed under: 『黒蜥蜴』2015

2015年ももうすぐ終わり・・・
しかし『黒蜥蜴』チーム、ぎりぎりまで走ります!!
そんな稽古場の様子を、シアタークルー・猪熊康夫さんに撮影していただきました。

演出家席
この日は、舞台美術・高田一郎さん(写真中央)も稽古を見学なさいました。

徐々に、本番で着用する衣裳も登場し始めています!

たきい・鈴木・永井
黒蜥蜴(たきいみき)と侍女(左から、鈴木真理子、永井彩子)。
黒で統一された衣裳から、華やかで妖しげなオーラが漂います。

大高・加藤・春日井・泉
対する明智小五郎(大高浩一)は、は眼鏡にスーツ。その部下たち(左から、加藤幸夫、春日井一平、泉陽二)も理知的でシャープな印象。

吉植・牧山・小長谷
こちらは、用心棒チーム(左から順に、吉植荘一郎、牧山祐大、小長谷勝彦)。
黒蜥蜴に狙われた岩瀬早苗の警護のため、岩瀬家に雇われた彼ら。この日は稽古着でしたが、お揃いの素敵なユニフォームが用意されています!

横山・若宮
岩瀬家に出入りする、洗濯屋(左・横山央)と御用聞き・五郎(右・若宮羊市)。
第三者の二人は、黒蜥蜴の脅迫におびえ、不穏な空気が漂う岩瀬家を、どう思っているのでしょうか・・・?

石井・赤松・榊原・佐藤
岩瀬家で働く老家政婦・ひな(榊原有美)と、女中たち(左から、佐藤ゆず、石井萠水、赤松直美)。
こちらもお揃いのユニフォームです。かわいい!

阿部・たきい
前回のブログでも紹介した東京タワーでの取引のシーン。
岩瀬庄兵衛(阿部一徳)が覗いている望遠鏡は、仮の小道具からパワーアップ。
この場面の黒蜥蜴は、東京タワーの赤の補色である緑色のコートを着ています。
第一幕の彼女の偽名は「緑川夫人」。なんだか象徴的ですね。『黒蜥蜴』のチラシも緑色!

そして、演奏!! 指揮を務める桜内結うを中心に、舞台の左右に演奏スペースが置かれています。

1227黒蜥蜴_015

楽器1

布施

楽器2

若菜

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劇場内には、そびえたつ圧巻の舞台装置!
度肝を抜かれること間違いなしです。舞台袖からちょこっとだけご紹介。

DSC_0101

劇場での稽古の様子は、また年明けに!

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​1~2月 SPAC新作
『黒蜥蜴』
演出:宮城聰/原作:江戸川乱歩/作:三島由紀夫
音楽:棚川寛子/舞台美術:高田一郎/照明デザイン:沢田祐二
出演:SPAC
静岡芸術劇場
◆公演の詳細、アーティストトークなど関連企画の詳細はこちら
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2015年12月27日

『薔薇の花束の秘密』音響・加藤久直ロングインタビュー

◆中高生鑑賞事業「SPACeSHIPげきとも!」 パンフレット連動企画◆
中高生鑑賞事業公演では、中高生向けの公演パンフレットをみなさんにお渡ししています。パンフレット裏表紙のインタビューのロングバージョンを連動企画として、ブログに掲載します。


音響:加藤久直(かとう・ひさなお)
愛知県出身。2013年よりSPAC創作・技術部に在籍、音響班チーフ。

<音響の仕事との出会い>
————どのようにして、舞台の音響の仕事と出会ったのでしょうか?
 もともと音楽が好きで、将来は音楽の作り手になりたいと考え、芸術大学を志望していました。が、高校生の頃、様々なデジタル・テクノロジーが急速に変革していく中、それらを生かせたら作り手として面白いのではないか?という考えが芽生え、結果的に大学は電子工学科に進みました。
 しかし、卒業後、やはり作り手としての基礎も学びたいと思い、資金を貯めるアルバイトを探している際、たまたま音響スタッフを募集している舞台会社に出会い、そこに応募したのが舞台音響に関わるきっかけです。
 そこで、初めて様々な舞台作品に触れたのですが、ロックやクラブ系の音楽一辺倒だった自分にとってはカルチャーショックで、どんどん舞台の世界に引き込まれていきました。
 また、音響の仕事を始めた頃に、有名なプランナーさんが講師を務める演劇に特化した音響の講習があり、それに参加したことも大きかったと思います。その講習では、「舞台のある場所から音が聞きこえるようにしたければ、そこにスピーカーを置けばいい」と言われました。よくよく考えれば、非常に当たり前のことだったのですが、当時はその発想にかなりショックを受けました。それから、左右2つのスピーカーから、いかに心地よい音を出すのかだけではなく、奥行きがある世界を音で作っていく立体音響にどんどんはまっていきました。
 そして、最初に入った会社に10年勤務した後、より広い経験を積みたいと思い、別の会社に移りました。そこでは、万博や甲子園、神戸ルミナリエのような主に大規模商業イベントのシステムプランや設備音響の施工・調整、またレコーディング等の仕事をしました。その後、諸事情により、再び別会社に移るのですが、そちらでは舞台音響に加えて、イベントやコンサート音響の仕事をさせていただきました。
 そして、最終的にSPACにたどりついたのは、様々な経験を積ませていただいた結果、自分が一番好きなものは、やはり舞台(演劇)だったからだと思います。SPACには、2013年の4月から所属しています。

<空間に音で絵を描く仕事>
————舞台の音響とは、どのような仕事ですか?
 舞台(演劇)の音響と聞くと、お芝居の中で求められる効果音や音楽を選んで、それを舞台の進行に合わせてあてはめていくのを、多くの方はイメージするかもしれません。しかし、それは音響家が仕事をする際の1つの手段でしかありません。また、音響というと、最先端の複雑な機械を前にして、それを操作している姿が思い浮かぶかもしれません。けれども、機材を使って音を電気的に操作することも、音響の仕事にとって絶対必要というわけではありません。
 それでは、舞台音響の仕事は何かというと、それは役者さんの台詞や演奏家さんの演奏、再生される効果音や音楽など、劇場の中にある全ての音を、どのようにお客さんに聞かせるかを設計し決めていく仕事です。演劇は、戯曲があり、俳優、装置、照明等の様々な要素が集まって一つの作品になる総合芸術です。作品を構成するひとつの要素でしかない個々の音に、演目の充分な解釈と演出家の表現意図を理解した上で、いかに意味を与え、命を吹き込んでいくのかが問われます。
 言い換えれば、額縁の形と画布の大きさが予め定められているキャンバス(空間)に、あるテーマに沿って、音という絵具を使ってどんな絵を描くか?という感覚に近いのかもしれません。
 先ほど、音響の仕事では必ずしも電気は必要ないと言いましたが、たとえば、生楽器の演奏で楽音のバランスが空間上あまり好ましくなくなってしまった場合、それを解決するために、楽器の配置変更を提案することもあります。場合によっては、舞台装置家さんに、演奏家さんの近くの舞台装置の形状や材質のご相談をすることもあります。
舞台は多くの要素から成り立っていますから、今そこでは何が優先事項なのかを考え、その場その場でとりうる解決方法の中から、最善なものを選択します。

<目に見えないからこそ、イメージを湧き上がらせる音の力>
————舞台音響の仕事の魅力は何でしょうか?
 まず、目に見えないものを扱っているということです。舞台の他の裏方さんたちは、装置や衣裳、照明など何かしら目に見えるモノをあつかっている中で、音響は目に見えないモノを扱っています。そして目に見えないモノを扱うことで、目の前に見えているものとは別の情景をお客さんにイメージさせることができるのが、音響の魅力だと思います。
 もうひとつは、舞台音響は裏方でありながら、上演中は演者さんたちと同じように演じながら上演時間を過ごすことのできるセクションだと思っています。どういうことかというと、効果音や曲は素材としては毎回同じものを使っていても、それをどういうタイミングで、どういう音量でどのように再生するのかといった操作の仕方ひとつで、そのシーン全体がお客さんに与える印象はとても変わってきます。毎回上演中に、役者さんの演技や、お客さんの反応を見ながら、そういう微妙なコントロールをリアルタイムで出来るのも、舞台音響の面白さであります。

<常に3つの耳を持つ?>
————音響の仕事をする上で、心がけていることはありますか?
 オペレーション(音響操作)をしている時には、常に3つの耳を持てるように心がけています。3つというのは、お客さんの耳、舞台上で演じている人の耳、そして音響家としての耳です。音響の仕事をするには、この3つを持って、そのバランスを常にとれることも大切だと考えています。どれかひとつに偏ってしまうと、うまくいかないと思っています。
 もう少し具体的にご説明すると、本番でオペレーションをするスタッフは、それまでに何回も稽古をしていますから、台詞も音を出すきっかけも、ほぼ頭の中に入っています。けれども、お客さんの大部分は、その舞台をその日初めて観ます。そういうお客さんが、今どういう心境でこの場面をみているのだろうかと考えられるのが、お客さんの耳です。
 2つ目の演じている人の耳は、今鳴っている音が演者さんたちには、どのように聞こえているのだろうか、演者さん達が、今どういうテンションでこのシーンをやっていて、これからどうもっていきたいと思っているのだろうか、ということを考えられる耳です。長期公演時には、時として、どうしても演者さんたちのテンションが下がってしまう時もあります。そういう時には、どのように音が入れば、テンションをあげて良い状態に持っていってあげることが出来るのか、ということを意識しながら音を出すこともあります。
 そして、最後には音響家として音質などの細かい部分を考えている耳があります。
 舞台(演劇)音響のプロとして大事なことは、この3つの耳をバランスよく保ちつつ、音も舞台を構成する要素の一つであることを常に意識出来ているかどうかだと思います。音を出すということは、音を出す瞬間にどうやってこの音が消えるのかまで先読みし、常にその時間の中にあるその音に必然性を持たせてあげる。そうやって音に命を吹き込んであげるということが必要だと考えています。

————『薔薇の花束の秘密』はどんな作品ですか?
 この作品は、いろいろな裏切りや失望を経験して、人を信じられなくなっても、それでも何かを信じたい、失望に対するおびえと裏腹でも希望を持ちたい、と願う人間の姿が描かれていると思っています。二人の関係は緊迫した場面もありますが、どこかユーモラスな部分もあります。音響としては、観終わった後、お客さんの中に何かあたたかいものを持ち帰って頂けるような、そんな手助けが出来たらと考えています。

2015年11月4日静岡芸術劇場にて

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​12月 SPAC新作
『薔薇の花束の秘密』
演出:森新太郎 作:マヌエル・プイグ 翻訳:古屋雄一郎
出演:角替和枝、美加理
静岡芸術劇場
◆公演の詳細、アーティストトークなど関連企画の詳細はこちら
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2015年12月22日

『薔薇の花束の秘密』 観劇レポート(泰井良)

二人芝居を観るのは、東京パルコ劇場での「オレアナ」(出演:田中哲司、志田未来)以来である。実は、私は、芝居の中では、二人芝居が最も好きだ。なぜなら、他のどの芝居よりも、舞台が緊張感と緊迫感に満ち溢れているから。「演出ノート」にもあるが、一人芝居は、一人のペースで芝居が進められるから、役者の個性を出しやすい。一方、三人だと、二人が演技している間、一人は静観できるので、芝居としては安定する。しかし、二人芝居は、二人の呼吸と波長が乱れた途端、芝居は破綻してしまう。崩れやすく脆いからこそ、生まれ出る緊迫感が、何よりも素晴らしい。そんなわけで、この芝居も、きっと、とてもよい緊張感に満ちているに違いないという期待感を持ちながら、劇場に足を運んだ。
この芝居は、角替和枝さんと美加理さんによる二人芝居である。幕が上がると、二人の力強いエネルギーが観客を舞台に引き込む。二人は、それぞれ病院に入院する患者とその付添婦である。この全く接点のない二人だが、しばらくすると、大切な人を亡くした過去があることに、お互い気づく。それぞれが、本人の役に加えて、それぞれの家族の役を演じる。その役の人物描写、感情表現の変容が、この芝居の最大の見どころ。全く違う人格を演じ分ける二人の女優の演技力は魅力的である。
そして、もう一つの見どころは、第一幕終盤の付添婦が患者に嘘をついていたことが発覚するシーン。嘘を知った後も、患者は平静を装いつつ、付添婦とのシリアスな会話を続ける。この場面も、ときおり感情が激昂し、観客をハラハラ、ドキドキさせる。
人は、強いショックを受けると記憶を一時的に無くしたり、あるいはフラッシュバックのように過去の記憶が走馬灯のように蘇ることがあるそうだ。この作品の中で、患者と付添婦は、何度かフラッシュバックに襲われる。そして、いつしかフラッシュバックが、幻なのか現実かなのかが分からなくなっていく。
この作品は、我々に、生きることは、過去の記憶や思い出を心に秘めながら、未来という死に向かっていくことなのだと教えてくれているようである。

執筆クルー 泰井良プロフィール写真泰井良(たいい・りょう)
1972.9.5、神戸市生まれ
関西大学美学美術史専攻を経て、静岡県立美術館学芸員。
現在、静岡県立美術館上席学芸員、俳優。
(一財)地域創造公立美術館活性化事業企画検討委員、全国美術館会議地域美術研究部会幹事など。展覧会企画のほか、市内劇団でも活動中。

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​12月 SPAC新作
『薔薇の花束の秘密』
演出:森新太郎 作:マヌエル・プイグ 翻訳:古屋雄一郎
出演:角替和枝、美加理
静岡芸術劇場
◆公演の詳細、アーティストトークなど関連企画の詳細はこちら
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2015年12月21日

<潜入!『黒蜥蜴』の世界(8)>稽古写真大公開!~その2~

Filed under: 『黒蜥蜴』2015

『黒蜥蜴』稽古写真公開、第2弾!
撮影は、シアタークルー・平尾正志さんです。

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高田一郎氏デザインの舞台美術には、階段が登場します。
打ち合わせで聞こえてくるワードは、「鉄骨」「工事現場」などなど・・・
さて、どんな装置が完成するのでしょうか?
創作・技術部のスタッフは、日々試行錯誤中。

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黒蜥蜴(たきいみき)が狙うダイヤ「エジプトの星」の取引場所は、東京タワー。
東京タワーは、この戯曲が書かれた当時完成したばかり。言わば、高度経済成長期のシンボルとも言えます。
カメラの三脚は望遠鏡の仮小道具。展望台で嬉しそうに景色を眺める人々にまぎれて、スリリングな駆け引きが行われます。

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雑巾がけ・・・??黒蜥蜴の侍女ふたり(鈴木真理子、永井彩子)はいつでも息がぴったりです。

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緊迫の第3幕より。登場人物たちの運命はいかに!!

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明智小五郎とその部下たち。黒蜥蜴一派とは醸し出す雰囲気がまったく異なります。

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台
稽古場で不思議な形の台を発見。第3幕に登場する重要な道具です。
創作・技術部スタッフの努力と技術の結晶にも、どうぞご注目ください。

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​1~2月 SPAC新作
『黒蜥蜴』
演出:宮城聰/原作:江戸川乱歩/作:三島由紀夫
音楽:棚川寛子/舞台美術:高田一郎/照明デザイン:沢田祐二
出演:SPAC
静岡芸術劇場
◆公演の詳細、アーティストトークなど関連企画の詳細はこちら
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2015年12月20日

<潜入!『黒蜥蜴』の世界(7)>稽古写真大公開!~その1~

Filed under: 『黒蜥蜴』2015

さあ、『黒蜥蜴』の本番まで一ヶ月をきりました。
日々猛然と稽古が進んでいます。
稽古風景を一挙大公開!!撮影は、シアタークルーの平尾正志さんです。

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衣裳の相談中。デザインは、SPAC創作・技術部の畑ジェニファー友紀です。

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衣裳
稽古場の廊下にずらりと並べられた衣裳。出演者は20名ですので、こんな量に!

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​1~2月 SPAC新作
『黒蜥蜴』
演出:宮城聰/原作:江戸川乱歩/作:三島由紀夫
音楽:棚川寛子/舞台美術:高田一郎/照明デザイン:沢田祐二
出演:SPAC
静岡芸術劇場
◆公演の詳細、アーティストトークなど関連企画の詳細はこちら
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2015年12月19日

<潜入!『黒蜥蜴』の世界(番外編)>宮城聰インタビュー【後編】

インタビュー 宮城聰
新演出作『黒蜥蜴』の世界

三島由紀夫の精神を受け継ぐ――。
ヒット作に秘められた作家の挑戦とは?
SPAC芸術総監督・宮城聰が、次回作を語る。

【前編はこちら】

■高度経済成長期・日本の風景
 江戸川乱歩による小説『黒蜥蜴』は1934年発表ですが、三島由紀夫の戯曲『黒蜥蜴』の時代背景は、戦後の高度経済成長期に置き換えられています。原作に出てくる大阪の通天閣が、東京タワーに変わっているんです。確かに昭和初期にもモダニズムの流れがありました。これは世界的なことでしょうけど、テクノロジーの発達によって人間の内面すら進歩していくのではないかと思われるような時代があったのかもしれません。そこから時代は進んで、三島は、戦後の日本は空虚なものだと考えているわけです。
 その見方で言えば、東京タワーだってひどく空虚なもののはずです。ぼくの小さい頃に、遠い親戚で、よく海外に行っているおばさんがいました。1960年代前半でしたが、しょっちゅう海外に行っているものだから、日本を馬鹿にしていて、「エッフェル塔と比べると東京タワーはしょぼい」と言っていた、「風が吹くと揺れる」って(笑)。三島も東京タワーについて聞かれれば、「ただの真似で恥ずかしい。二度と建てないでほしい」と言ったのではないでしょうか。でも、戯曲を読むと、東京タワーについて、そんなにシニカルな目線があるだろうか。意外にそうでもないんじゃないかと思うんですね。
 高度経済成長期の初期の段階では、まだ、三島も未来を信じられたのかもしれない。いくら「東京大空襲の火で全て失われて、空虚だ」と口では言っていても、右肩上がりの時代精神に染まっていたかもしれない、という気もしないではない。今回は、そういうところも、三島という人を読み解く上で、おもしろいかもしれないと思っています。

■情緒に没しない知性の怪物
 ぼくは演劇の様式性を20数年追求してきましたので、その成果を黒蜥蜴の人物造形に活かしたい。一方、明智小五郎は、「論理」が着物を着ている、知性の怪物として演出します。日本語をしゃべりながら情で成立していない身体をつくるのは容易ではありませんが、三島ががんばっているところです。
 川端康成、谷崎潤一郎、三島由紀夫…翻訳されても論理性が残ることにトライした作家たちがいます。中には安部公房のように日本語としては痩せたもの、カラカラに乾いたもの、頭の中で最初から英語で考えられているような独特のアプローチもあったと思いますが、三島は、いっけん日本語でしかできないだろうと感じられるレトリックをおもいきり使います。日本語のわかる人は、「この文学は日本語がわかる人でないとおもしろくない」とちょっと思うわけですが、天ぷらの衣をはぎ取った時に出てくるエビは、ヨーロッパでも通用するようにつくってあります。
 明智も黒蜥蜴も怪物です。2人の怪物……『サド侯爵夫人』で、ルネは「私は貞淑の怪物になる」と言うんですね。貞淑を論理的に突きつめて行けば、普通の人が考える「貞淑な女房」では全然なくなります。三島の場合、自分の中にある相容れない2人、3人を想定し、対話させることで、論理性をつくっていきました。三島の体の中にあった相容れない2つを、それぞれ歪なままに形象化できれば、戯曲の身体化が可能になるのではないかと思います。
 三島が考えた西洋対東洋、欧米対日本、その演劇上の闘いを、きちんとやりたい。歌舞伎の演出のおもしろがらせ方もうまく取り入れています。戯曲のシアトリカルな楽しみはなるべく残し、演劇を初めて観る人にも、演劇ならではの楽しさを感じてもらえると思います。

■「演劇の教科書」を目指して
 SPACのレギュラーシーズンのプログラムでは、もし演劇の教科書がつくられるならば、必ず掲載されるだろう作品群を選んでいます。何年か観劇すると、演劇史の基本知識が身につくプログラムです。
 音楽や美術に比べ、演劇は、学校教育で習いませんよね。音楽と美術は、学校の教科に入っていますから教科書があります。演劇は教科書がないので、シェイクスピア(※)とチェーホフのどっちが昔の人かと言われても、ほとんどの日本人はわからないのではないでしょうか。何でもそうですが、基礎知識を持っているほうがいっそう楽しめますし、外国の人と話すと、教養として演劇の知識を求められる場合が多いです。
 また、商業的な観点から今の日本で受ける演目を選ぶと、偏った紹介になってしまいます。SPACは公立劇場ですから、世界のあらゆる地域や時代の古典と呼ばれる演目を、少しずつでも観てもらいたい。
 そう考えた時に、日本の劇作家で誰を選ぶべきか。世阿弥、近松門左衛門、鶴屋南北、三島由紀夫、それから泉鏡花…そういう感じではないでしょうか。世界的な知名度で言えば、世阿弥、近松、三島でしょう。中学や高校の国語の授業で夏目漱石を1回は読んでおくべきだというのと同じ意味で、SPACのプログラムに三島が入っているべきだと考えました。
 三島はたくさんの作品を書きましたが、歌舞伎の戯曲もあれば、いわば背徳的な、あえてスキャンダラスでセンセーショナルな作品も書いている。三島という人は、色々な方向に欲を持った人で、芸術の世界、文壇や演劇界だけにとどまっているのはおもしろくないと考えていました。違う言い方をすれば、新聞の文化欄ではなく社会面で取りあげられるような作品をつくろうとしていた。三島の作品は、光の当て方によっては世俗的です。
 鑑賞事業の公演では中高生に観てもらいますので、教育の一環。SPACのプログラムとして選ぶ時には、普遍性の観点から戯曲を見直していく必要があります。その上、一般的な意味でワクワクする魅力を持った作品でないと、初めて演劇を観る中高生には難しいでしょう。
 『黒蜥蜴』は、作家自身が抱えていた問題がはっきりと表れていると同時に、観客を楽しませる要素も盛り込まれていて、その基準にぴったりだと考えました。演劇の魅力を探しに劇場に足を運んでいただければと思います。

2015年6月25日 静岡音楽館AOIにて
聞き手・構成:西川泰功

※註
・シェイクスピア:イギリスの劇作家・詩人。1564年生まれ、1616年没。四大悲劇『ハムレット』『オセロー』『リア王』『マクベス』等、37編の戯曲を残した。世界で最も有名な劇作家と言っても過言でない。

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​1~2月 SPAC新作
『黒蜥蜴』
演出:宮城聰/原作:江戸川乱歩/作:三島由紀夫
音楽:棚川寛子/舞台美術:高田一郎/照明デザイン:沢田祐二
出演:SPAC
静岡芸術劇場
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