「戦略的ハッピーエンドの演出的アンハッピーエンド」
4月末の18時は夜というにはまだ明るい。中途半端な狭間の時間、ただっぴろい灰色の広場の中央奥に、黄色のショベルカーが異様に鎮座している。これから2時間のあいだ束の間の舞台となるはずの広場を現実世界の歩道から隔てるのは、杭とロープだけだ。ぼろきれのような長いコートをまとった人々が、生気なく、ひとりまたひとりと、ロープの向こうからやってきては、寒そうに地べたに横たわっていく。虚構が現実に侵入してきたのか、それとも、別の現実がいまここにある現実に闖入してきたのかと、観客は自問せざるをえない。ジョルジオ・バルベリオ・コルセッティ演出『野外劇 三文オペラ』は、本来ならソロで歌われる「刃(ヤッパ)のマッキーのモリタート」を合唱させることによって、わたしたちの現実感覚を切り崩す群集劇として始まっていく。 続きを読む »